人命や安全に関わる緊急のシステム要請に対し、専用開発は費用と時間がかかり過ぎる。人材が不足する中、要件を満たしつつ「検討当日」に情報公開システムを立ち上げた方法とは。裾野市の事例を紹介する。
「一刻も早く、確実な情報共有の仕組みを作ってほしい」という要望を受けたとき、人手不足のIT部門はどうすればよいだろうか。
人命や地域の安全に関わる緊急事態が発生した際、対処後回しにすることは許されない。静岡県裾野市は、相次ぐクマの出没情報を迅速に発信するという緊急性の高い課題に直面していた。当初は情報が入り次第、市の職員が手作業でWebページを更新していたが、この運用では即応性に限界があった。
現場からはより迅速な情報共有の仕組みが求められたものの、専用システムを一から独自開発するには多大な期間と費用がかかる。庁内に専門のエンジニア職員が不在であるという致命的な制約もあった。
「人手不足につき短期間でのシステム化は困難」と判断されがちな状況だが、裾野市は実装手法の検討を開始した2026年5月22日の「当日中」に初期バージョンを公開し、直後に発生した出没事案にも素早く対処する体制を確立した。厳格なセキュリティ体制下において、現場の職員がスマートフォンから安全かつ簡単にデータを登録できる仕組みを、エンジニア不在の中でいかにして即日構築したのか。
静岡県裾野市は、クマの出没情報を迅速に可視化して住民の安全を確保することを目的に、トヨクモの「kintone」連携ツール「FormBridge」と「kViewer」を採用した。2026年6月9日、同社が発表した。庁内に専門のエンジニアは不在だが、両ツールと生成AIを活用し、検討を開始した当日に情報公開システムを構築、公開した。現場の業務負担を軽減しつつ情報発信の即応性を高めており、今後は提供データのオープンデータ化による二次利用も視野に入れる。
近年、全国各地でクマの出没が相次いでいる中、裾野市でも複数の出没情報が寄せられるようになった。当初は情報が入り次第、市の職員が手作業でWebページを更新して発信していたという。より即応性の高い仕組みづくりが課題だったが、緊急性が高い一方で、専用のシステムを一から独自開発するには多大な期間と費用がかかるため、コストを抑えつつ、確実な情報共有の仕組みを短期間で構築する方法を検討していた。
裾野市は最終的に、専門のエンジニアがいなくても運用可能な手法として、FormBridge、kViewerと生成AIを組み合わせるアプローチを選択。検討開始当日に初期バージョンを公開し、直後に発生した出没事案にも素早く対処する体制を確立したという。
新システムでは、現場の職員がスマートフォン上の地図をタップするだけで緯度と経度を自動取得できるプログラムを生成AIで作成し、入力フォームであるFormBridgeに組み込んだ。これによって職員の入力作業を省力化し、情報をより迅速に発信できるようにした。入力されたデータは、kintoneのデータベースに即時登録される。裾野市はセキュリティの観点から外部からkintoneへの直接のアクセスを制限しているが、FormBridgeをフロントエンドとして挟むことで安全なデータ登録を実現したという。蓄積したデータはkViewerのAPIを介し、市が内製したWebサイトの「クマ出没情報地図クマップ」に自動で連携し、公開される仕組みだ。
今後は、行政運営の透明性向上とさらなる市民の安全確保を目指し、このAPIをオープンデータとして提供することを検討している。全国規模の野生動物情報サービスや民間事業者のアプリ開発者がデータを二次利用できる仕組みを整え、情報の到達範囲を広げて市民の防災意識向上につなげる考えだ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「裾野市、クマ出没情報の可視化システムを即日構築 kintone連携ツールと生成AI活用」(2026年6月11日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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