トルネックスは、室内空気環境の改善を使命とする室内空気環境ソリューションカンパニーだ。創業当初は室内の空気環境の外気による汚染を防ぐエアーカーテン提供ベンダーとして、その後は室内空気環境汚染の要因とされてきた煙害を防止する喫煙所システムの提供ベンダーとして、一貫して室内空気の清浄化に取り組んできた。その守備範囲はエアターミナル、官公庁・地方自治体、商業施設、企業オフィスなど幅広く、現在では日本のみならず、アジア・欧州諸国に進出。文字通り国内シェアナンバーワンの地位を築くに至っている。
分煙業界で確固たる地位を確保している同社ではあるが、環境保全は注目の事業分野であるため参入をもくろむ事業者は数多く、その企業間競争は厳しさを増している。これまで通り着実な成長を続けていくには、顧客と接するあらゆる機会を見逃すことなく、それをきっちりと商談へつなげ、最終的に受注まで導くことが肝心だ。
そこで同社がスポットライトを当てたのが、問い合わせ対応だった。健康増進法施行の後押しもあり、業種・業態を問わず禁煙者、喫煙者が共存可能な分煙環境構築ニーズは衰えることなく、同社にはかなりの頻度で問い合わせが寄せられる。電話での見込み客および販売代理店・特約店からの問い合わせ、同社のWebサイトからの問い合わせと、同社には大きく2つの問い合わせが寄せられるチャネルがあり、これまではそれらに対して営業が個々に対応していた。しかし、その内容や対応状況は組織的に把握されているわけではなかった。
問い合わせというのは、見込み客がその企業や製品に対して示す興味の第一歩である。問い合わせの動機はさまざまながら、その後の対応によっては受注につながっていくであろうことは想像に難くない。しかし、同社では月に50〜70件もの問い合わせがあったにもかかわらず、それが売り上げ成績に必ずしも比例していなかったのである。同社マーケティング室 グループリーダーの島田秀治氏はその点を憂慮していた。
「営業はどうしても目の前にある商談を優先してしまうので、具体的でない問い合わせへの対応は手薄になってしまいます。しかし、実はそこが顧客発掘のための大鉱脈のような気がしていました。また、問い合わせをきちんと管理することで、顧客がどこから当社の情報を得ているのかを把握できます。そうすればマーケティング部門として効果を見込める媒体へ資源を集中投下できるので、ぜひとも実現させたいと考えました」
折しも、同社はホテルやレストランなどの外食産業を対象とした展示会に出展し、見込み客情報を大量に取得したところであった。同社にとって今後注力していきたい分野の1つであったため、これを契機にシステム構築のために行動を起こすことにした。2008年4月のことである。

島田氏はシステム選定に当たって、3つの要件を挙げた。
まず1つは、営業にとって使いやすいシステムであること。これまで同社には日報作成などの習慣がなく、システムで情報を管理することにあまり慣れていなかった。「使いにくい」「面倒くさい」といった感想を抱かせるようなシステムでは、利用が浸透しない危険性があった。
2つ目は、見込み客に対してメールマガジンのようなマーケティングメールが送信できるシステムであること。興味を持ってくれた見込み客へ対し、新製品情報やキャンペーン情報などを盛り込んだ電子メールを送ることは、有効なフォロー手段と考えたのである。
3つ目は、導入および運用コストが安価であること。今回のシステム構築は同社にとってある意味「実験」だった。投資対効果算定の難しさから、いきなり高額の予算を掛けて大々的に始めるというわけにはいかなかった。小さく生んで大きく育てる戦略を取ったのである。
こうした観点から候補に上ったのは、3社3製品。比較検討の結果、最終的に採用したのが、シナジーマーケティングのSaaS(Software as a Service)型CRM「Synergy!」だった。SaaS型を選んだのは、自社構築型だとコストが高額になってしまうことに加え、マーケティング部門でシステム運用を行うことになり、運用負担を極力減らしたかったからだ。島田氏は選定理由を次のように語る。
「候補に挙げた製品のうち、A社は充実した機能を持っていましたが、月額使用料がユーザー数に依存するため、固定経費が高止まりするきらいがありました。当社の営業は約20人ですが、それでも1人当たりの単価が高ければ結構な金額になります。また、B社の製品も機能的には十分でしたが、電子メール送信機能がオプションであり、送信できる数にも制限がありました。その点、Synergy!は顧客データ量に応じた従量課金で、5000件までならユーザー数にかかわらず月額1万5000円で利用でき、電子メール送信機能が充実していました。また、問い合わせ管理という私たちが欲しい機能をピンポイントで搭載し、営業にも情報入力負荷があまり掛からなそうでした」
トルネックスでのSynergy!運用概要。Webサイトに設置した資料請求や問い合わせフォームは、Synergy!のフォーム作成機能を利用して顧客情報の自動新規登録や更新が可能。電話やメールなど、フォームを経由しない問い合わせは、登録用フォームから随時手動で登録している《クリックで拡大》2008年5月末に正式に導入を決定。管理項目を検討した後、シナジーマーケティングの支援を得ながらユーザーインタフェースを設計。また、それまでMicrosoft Office ExcelやMicrosoft Office Accessで管理していた問い合わせ案件もこの機会にデータベース化した。そして、Synergy!を利用したトルネックスの問い合わせ管理システムは、2008年6月末に稼働を開始したのである。
それから約4カ月。同社の営業活動にはどのような変化が起きたのだろうか。島田氏によると、問い合わせ案件の社内共有体制が確立できたという。これまでは気になる案件があったとしても、担当営業にいちいち尋ねなければそのステータスは分からなかったが、今ならシステムにアクセスするだけでいつでも把握できる。また、今現在どれだけの問い合わせが寄せられていて、それらがどういう状況にあるかマクロにつかめることも大きいという。同社マーケティング室 吉原果那氏は以下のように証言する。
「さまざまな切り口で問い合わせ案件を検索したり、ソートできる機能が便利ですね。特に、案件の対応/未対応を表示しているところは頻繁に見ます。いつまでも未対応のままの案件はどうも気持ちが落ち着かないので、つい担当セールスマンに『どうなってるんですか』と聞いてしまいますね」
吉原氏は、利用状況の変化に合わせて設定を変えやすいSynergy!の機能も評価している。例えば、営業は問い合わせ案件を販売代理店や特約店を切り口にソートしたり、検索することが多いことが本稼働後に分かった。これは営業がパートナーとコミュニケーションを取るときに状況を把握しておきたいと思うからであり、それを知るやSynergy!の画面のマイナー変更を行った。
気になるのは、問い合わせ管理を実施したことによる見込み増加動向だが、分煙業界の商談はクロージングまでの期間が長いこともあって、まだ明示的な形での成果は表れていないという。しかし、システムは営業に抵抗なく受け入れられ、問い合わせ案件は確実に蓄積されている。「この先、半年、1年といったスパンで見ていく先に果実はあるでしょう」と、島田氏は自信をのぞかせる。
システム導入が一段落した現在、次なるテーマは見込み客へのメールマガジンの発刊だ。またこのメールマガジンは、既存顧客に対して新たな商談を促すものとしても活用していく予定だという。マーケティング部主導で展開することで、同社セールスマンの活動を側面支援していく。
「商談にはタイミングというものがあるため、今年はたまたま駄目だったとしても、来年は予算化してもらえるかもしれない。問い合わせ管理の実施・強化で、そうした案件にメールマガジンを主体に粘り強くフォローすることで、ビジネスチャンスを最大化していきたいと考えています」(島田氏)
1970年創業の室内空気環境ソリューションカンパニー。創業当初はエアカーテン設備メーカーとして活躍。喫煙による煙害(受動喫煙)を防止する「喫煙所システム」をいち早く開発・販売し、現在では中国、韓国、英国に海外拠点を持つ。自社製品の販売だけでなく、広く室内空気環境保護活動に取リ組んでいる。