RFM分析で優良顧客を見極めたアパレルメーカーのCRM活用CRM導入事例:弥生顧客

アパレルメーカー「麗」は、販売管理ソフトで日常業務の効率化を実現すると新たな目標が出てきた。それは満足度向上のために効果的なアプローチを顧客に展開すること。顧客管理ソフトを導入し、優良顧客の見極めを目指した。

2008年02月20日 10時00分 公開
[吉田育代]

高級レースを使ったレディースファッションを企画・販売するアパレルメーカー

 東京都中央区日本橋。馬喰町・横山町と呼ばれる付近には日本有数の繊維問屋街がある。その一角に拠点を構えるアパレルメーカーが「麗」だ。終戦後間もなく輸入レースで作ったブラウスを販売し、やがて国産オリジナルレースを使ったアパレルメーカーへと発展、今日に至る。取引先は日本全国に広がっており、百貨店からブティックまで延べ1000社に上る。

左から麗 店長の徳原麻衣子氏、営業の平原雄太氏

販売管理の効率向上のためにシステム化を検討するが……

 ビジネス的には相当な規模を誇りながら、長い間、同社は日常業務をすべて手作業で行ってきた。導入されているのはキャッシュレジスターだけで、そのためすべての作業に時間がかかる。その日1日に販売した商品をノートに分類登録するのに優に2時間は要したという。取引先から商品に関する問い合わせがあっても、過去の販売履歴は伝票をさかのぼりながらでないと分からないため、なかなか特定できない。結果的にアパレルメーカーの本来業務とはいい難い、事務作業に多くの時間を費やしてしまっていた。

 同社はまったくシステム化を考えなかったわけではない。効率の悪さを訴える同社店長、徳原麻衣子氏の声を受けて、同社の営業担当である平原雄太氏は、何度かシステムインテグレーターに販売管理システムの見積もりを依頼した。しかし、提示されるのは500万~1000万円と予算をはるかに超える金額。アパレル業界向けに開発された専用パッケージ製品も当たってみたのだが、たとえリースで利用したとしても算出したランニングコストは相当なものだった。

 そのような状況で、システム化を考えながらもそのタイミングを計れないでいたところ、ある日頼みの綱のキャッシュレジスターが壊れてしまった。これでは明日の営業にも差し支える、何とかしなければと、平原氏は日ごろから問屋街で懇意にしてもらっている繊維卸の経営幹部に対応策を相談しにいった。

販売実績に応じた顧客対応を目指して「弥生顧客」を導入

 経営幹部は平原氏の話を聞いて「それなら弥生販売だ。あれは使いやすくできているよ」と販売管理ソフト「弥生販売」を推薦した。

 同じアパレル業界にいる先輩が言うのだから間違いないと、平原氏は直ちに家電量販店に走った。近所に同じソフトウェアを使っている人がいるので、分からないことがあれば聞けばいい。何より魅力的だったのが、システム開発やアパレル業界専用パッケージに比べて圧倒的に高いコストパフォーマンスだった。

前職でエンジニアの経験を持つ平原氏。麗の顧客対応システム化は同氏による功績が大きい

 弥生販売を利用するためにPCも新たに購入。同社のシステム化はそこからスタートした。商品登録を行い、売り上げを計上するとともに、納品書や請求書の発行なども弥生販売から行えるようにした。これにより、業務効率は劇的に向上したという。閉店後、販売商品の分類登録につぶしていた時間は、先のシーズンの商品戦略や企画というマーケティングに使えるようになった。顧客番号を入力すれば過去の販売履歴が一覧で出てくるため、取引先からの問い合わせにも、すぐに商品を特定できるようになった。

 こうして一連の販売管理が実現すると、平原氏らは取引先に対してより効果的なアプローチを行いたくなってきた。具体的には「優良顧客を見極めることによる特別対応の実施」である。例えば、年間売上高の高い取引先に対して仕切り値(※1)を下げる、キャッシュバックするといった施策がある。それよりもっと実践したかったのは「優良顧客が持つ商圏内に新たな顧客を作らない」ということである。同社の商品は国産オリジナルの少量生産であることをセールスポイントとしており、事実それらが大半を占める。それ故、一定の商圏内に同社商品を販売するブティックが2店も3店もあってはまずいのだ。優良顧客に対しては、特にその自主規制を徹底したかった。これを実現するには「誰が優良顧客なのか」を正確に把握する必要がある。

(※1)販売先、料金の請求先が販売店などの業者の場合に請求する金額

 平原氏は弥生シリーズを調査する中で、顧客管理ソフトウェアである「弥生顧客」があることを知った。平原氏は選択の理由を振り返ってこう語る。

 「どのお客さんが高い頻度で取引してくれていて、どのお客さんが一番たくさん買ってくれているのかといったことが、3つの軸から顧客を分けられる『RFM分析(※2)機能』や『ランキング機能』と、顧客との対応履歴を記録でき、後から自在に検索できるという機能がいいなと思いました。弥生販売のデータが利用できるという点も魅力で、弥生顧客を選んだのは自然の成り行きでしたね」

(※2)Recency:最新購買日、Frequency:累計購買回数、Monetary:累計購買金額、それぞれの頭文字を取ってRFM分析。「誰が一番最近買い物に来た顧客か」「頻繁に来店する顧客は誰か」「一番お金を使ってくれている顧客は誰か」という3つの側面から顧客を分析する手法。詳しくは@IT情報マネジメント用語辞典

RFM分析機能などで優良顧客を見極め、厳密な商圏管理を実践

会員登録(無料)が必要です

関連ホワイトペーパー

CRM | 帳票 | マーケティング | 業務効率


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品レビュー 株式会社セールスフォース・ジャパン

表計算ソフトからの脱却で“調達DX”を推進、成功のカギとなる「SRM」とは?

製造業の調達業務は、価格妥当性評価、脱炭素、安定供給などの対応で社内外の複雑なやりとりが高負荷となっている。この解決には表計算ソフトやメールの情報連携からSRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)への変更が有効だ。

製品資料 株式会社マヒト

ビジネスの必須アイテム、「名刺」の発注業務を効率化するための方法とは?

ビジネスをする上で欠かせない「名刺」。名刺交換の機会を逃さないためにも、名刺を常に手元に準備しておく必要がある。しかし、名刺の発注業務は意外と手間がかかる。そこで本資料では、名刺の発注業務を効率化する方法を紹介する。

事例 ストライプジャパン株式会社

日本経済新聞社など11の事例に学ぶ、ビジネス成長につながる決済体験の構築術

ECの台頭でオンラインでの取引が当たり前となった今。顧客の“決済体験”を向上させることで、ビジネスの成長につなげていくことの必要性が高まっている。決済プロセスの改善を実現した日本経済新聞社など11社の事例を紹介する。

製品資料 株式会社マヒト

企業の顔にもなる「名刺」、品質と発注効率を両立するための方法は?

営業活動に欠かせない「名刺」は、企業の顔としての役割を担う側面を持つ。受け手の印象をより良いものにするため、高品質な名刺を用意したいと考える企業が多い。そこで注目したいのが、名刺の品質を追求した法人向け名刺印刷サービスだ。

事例 株式会社ジャストシステム

既存SFAリプレースと脱Excelを同時に実現、ホテルモントレに学ぶその実践方法

顧客管理と売り上げ管理の効率化が課題となっていたホテルモントレ。その解消に向け既存SFAのリプレースと脱Excelを進め、さまざまな成果を出しているという。同社はどのように取り組みを進めていったのだろうか。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...