アパレルメーカー「麗」は、販売管理ソフトで日常業務の効率化を実現すると新たな目標が出てきた。それは満足度向上のために効果的なアプローチを顧客に展開すること。顧客管理ソフトを導入し、優良顧客の見極めを目指した。
東京都中央区日本橋。馬喰町・横山町と呼ばれる付近には日本有数の繊維問屋街がある。その一角に拠点を構えるアパレルメーカーが「麗」だ。終戦後間もなく輸入レースで作ったブラウスを販売し、やがて国産オリジナルレースを使ったアパレルメーカーへと発展、今日に至る。取引先は日本全国に広がっており、百貨店からブティックまで延べ1000社に上る。
ビジネス的には相当な規模を誇りながら、長い間、同社は日常業務をすべて手作業で行ってきた。導入されているのはキャッシュレジスターだけで、そのためすべての作業に時間がかかる。その日1日に販売した商品をノートに分類登録するのに優に2時間は要したという。取引先から商品に関する問い合わせがあっても、過去の販売履歴は伝票をさかのぼりながらでないと分からないため、なかなか特定できない。結果的にアパレルメーカーの本来業務とはいい難い、事務作業に多くの時間を費やしてしまっていた。
同社はまったくシステム化を考えなかったわけではない。効率の悪さを訴える同社店長、徳原麻衣子氏の声を受けて、同社の営業担当である平原雄太氏は、何度かシステムインテグレーターに販売管理システムの見積もりを依頼した。しかし、提示されるのは500万〜1000万円と予算をはるかに超える金額。アパレル業界向けに開発された専用パッケージ製品も当たってみたのだが、たとえリースで利用したとしても算出したランニングコストは相当なものだった。
そのような状況で、システム化を考えながらもそのタイミングを計れないでいたところ、ある日頼みの綱のキャッシュレジスターが壊れてしまった。これでは明日の営業にも差し支える、何とかしなければと、平原氏は日ごろから問屋街で懇意にしてもらっている繊維卸の経営幹部に対応策を相談しにいった。
経営幹部は平原氏の話を聞いて「それなら弥生販売だ。あれは使いやすくできているよ」と販売管理ソフト「弥生販売」を推薦した。
同じアパレル業界にいる先輩が言うのだから間違いないと、平原氏は直ちに家電量販店に走った。近所に同じソフトウェアを使っている人がいるので、分からないことがあれば聞けばいい。何より魅力的だったのが、システム開発やアパレル業界専用パッケージに比べて圧倒的に高いコストパフォーマンスだった。
弥生販売を利用するためにPCも新たに購入。同社のシステム化はそこからスタートした。商品登録を行い、売り上げを計上するとともに、納品書や請求書の発行なども弥生販売から行えるようにした。これにより、業務効率は劇的に向上したという。閉店後、販売商品の分類登録につぶしていた時間は、先のシーズンの商品戦略や企画というマーケティングに使えるようになった。顧客番号を入力すれば過去の販売履歴が一覧で出てくるため、取引先からの問い合わせにも、すぐに商品を特定できるようになった。
こうして一連の販売管理が実現すると、平原氏らは取引先に対してより効果的なアプローチを行いたくなってきた。具体的には「優良顧客を見極めることによる特別対応の実施」である。例えば、年間売上高の高い取引先に対して仕切り値(※1)を下げる、キャッシュバックするといった施策がある。それよりもっと実践したかったのは「優良顧客が持つ商圏内に新たな顧客を作らない」ということである。同社の商品は国産オリジナルの少量生産であることをセールスポイントとしており、事実それらが大半を占める。それ故、一定の商圏内に同社商品を販売するブティックが2店も3店もあってはまずいのだ。優良顧客に対しては、特にその自主規制を徹底したかった。これを実現するには「誰が優良顧客なのか」を正確に把握する必要がある。
(※1)販売先、料金の請求先が販売店などの業者の場合に請求する金額
平原氏は弥生シリーズを調査する中で、顧客管理ソフトウェアである「弥生顧客」があることを知った。平原氏は選択の理由を振り返ってこう語る。
「どのお客さんが高い頻度で取引してくれていて、どのお客さんが一番たくさん買ってくれているのかといったことが、3つの軸から顧客を分けられる『RFM分析(※2)機能』や『ランキング機能』と、顧客との対応履歴を記録でき、後から自在に検索できるという機能がいいなと思いました。弥生販売のデータが利用できるという点も魅力で、弥生顧客を選んだのは自然の成り行きでしたね」
(※2)Recency:最新購買日、Frequency:累計購買回数、Monetary:累計購買金額、それぞれの頭文字を取ってRFM分析。「誰が一番最近買い物に来た顧客か」「頻繁に来店する顧客は誰か」「一番お金を使ってくれている顧客は誰か」という3つの側面から顧客を分析する手法。詳しくは@IT情報マネジメント用語辞典へ
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