SAPで実現するIFRS対応【第2回】
SAPのIFRS対応クイック・ソリューションを見る
SAPの経営管理システム製品と連結会計システム製品の活用方法について説明する。これらは日本企業がグローバル化を果たすための、IFRS対応型クイック・ソリューションといえる。
今回は、SAPの経営管理システム製品と連結会計システム製品の活用方法について説明したい。ERPがIFRSをベースにしたグループ企業を統一する単体会計レベルのオペレーションモデル実現ツールであることに対し、紹介する2製品は連結レベルのグループ経営管理実現ツールとしてとらえることができる。 “IFRSを機にグループ経営の中身を考えること”“グローバル本社とグローバル拠点がコラボレーションし経営管理サイクルを回す仕組みを考えること”から、この領域への取り組みは始まる。
これからの説明のベースには、アクセンチュアが長年グローバル・ハイパフォーマンス企業とともに培ってきたグローバル経営管理ナレッジの集積であるAEPM(Accenture/Advanced Enterprise Performance Management)という経営管理フレームワークがある。このフレームワークに基づき、SAP製品で実現するグローバル(グループ)連結経営管理について考えていきたい。
グローバル経営を考える
IFRSは連結会計に関するルールであり、これは日本企業にとって、従来の本社中心、グループ個社ごと、現地法人ごとの個別経営から、グループ全体としての全体最適を目指した連結経営へとシフトして行かねばならないことを示唆している。
まず、グループ戦略を見据えたバランスシート上での将来価値の向上要因、目標利益・目標キャッシュの創出要因を認識し、それを基に事業計画として策定する。次に達成目標ごとにそのドライバーとなるKPIにブレークダウンし、事業ユニットや製品ブランド、顧客・チャネルなど、実行責任に直結するレベルまで管理軸単位に展開、ボトムアップによるコミットメントも踏まえ予算編成を実施するという手順だ。
事業の運営段階では、タイムリーに実績情報を収集し、対策を促すとともに、月次・四半期ごとの業績着地点を把握。そして、経営資源の再配分など大きなかじ取りや組織としての意思決定を実施する。グローバル全体として、このような経営管理サイクルを、定常的にかつ短サイクルで回していくことが重要であり、グローバル本社からの見える化を実現することは、土地勘のない新興国のみならず、途上国を含め多極化するグローバル市場で戦っていくために必要不可欠な要素となる。
これらはもしかすると「これまでもやっていることだ」とおしかりをいただくかもしれない。しかし、これまでは業務ごとや拠点ごとにルールやシステムが異なるために情報が分断されたり、本社や各事業・各拠点経営者のマネジメント能力、経営管理スタッフの情報収集力、加工力に依存したりと、部分的な情報連携や情報の組み替え、人のスキルによって成り立っていたのではないだろうか。経営管理の比重やスコープが、個社からグループ全体となったとき、それは仕組みとして耐え得るものであろうか、市場の動きや業績変動のスピードに追従できるものであろうか。
このように考えると、サプライチェーン系の業務などと同様に、“経営管理をグループ全体の共通業務プロセス”としてとらえることが必要である。必要不可欠なのは、経営管理の範囲をグループ全体として再度そのプロセスを考え直すこと、具体的な実装アプローチとしてグローバル共通インフラとも言えるIFRSを活用すること、組織ガバナンスに関する方針や業務ルールや勘定科目をはじめとするデータ構造の標準化や共通化などを実施すること、拠点間のコラボレーションを成立させ確実に経営管理プロセスを回す仕組みとして、これらのルールやデータやプロセスをITシステムとして実装することだ。
以下、「SAP BusinessObjects Financial Consolidation」(BOFC)を使った、日本企業のスムーズなIFRSの連結会計システム導入を支援する連結会計ソリューションと、「SAP BusinessObjects Business Planning and Consolidation」(BOPC)を利用し、本社とグローバル拠点の一貫したPDCAサイクルの実行を可能とするビジネス・プランニング・ソリューションとを、具体的なITシステムの実装形態として紹介する。欧州をはじめとする導入実績の上に培われたこれらの製品は、日本企業のグローバル化を果たすための、IFRS対応型クイック・ソリューションといえる。
IFRS向けスターターキットを用意
まずは連結会計ソリューションについて紹介したい。アクセンチュアでは、IFRS対応するためのオペレーションモデルを「松竹梅」という3つのモデルに分けてご説明している。そして、松モデル(ERPなどの単体会計システムをグループ企業共通でIFRS対応させ、会計基準間の組替えなしにダイレクトに連結/経営管理するモデル)の優位性を説き、グローバル・ハイパフォーマンス企業を目指す日本企業にとっては、必須の取り組み課題であることと強調して説明している。
一方で、IFRS早期適用を目指す企業や、数多くの連結対象会社を持つ総合商社など、投資目的のみの企業、IFRS組替えが負荷とならない小規模事業をグループ内に持つ企業にとっては、一時的や部分的であってもIFRSベースの総勘定元帳/財務諸表一式のほかに、IFRS組替え機能を持つ連結会計ソリューションが必要になる。 開発期間を要する松モデルが完成するまでの間は、暫定的に梅モデル(主に連結会計システム側でIFRSに対応するモデル)で対応することが望ましい。
SAPが提供するIFRS向けスターターキット(IFRSベースの総勘定元帳/連結相殺処理やチェックロジック、財務諸表一式を保有)と、AEPMの設計思想から導かれる個社単体システムからの連結情報抽出機能、BOFCの日本基準からIFRSへの組み替え支援機能、個社注記情報収集機能とを組み合わせることで、IFRSベースの連結決算プロセスを効率的、かつ短期間に構築することが可能となる。スターターキットは、既にIFRSの基本形を実装済みであることから、日本企業にとっては、プロトタイプを通してより具体的な自社のIFRS対応方法の検討が可能であり、推奨できる製品の1つである。
ビジネス・プラニング・ソリューション
ビジネス・プランニング・ソリューションは、グローバルに広がる事業拠点を網羅し、グループ予算の編成および統制を実現するソリューションである。本ソリューションは、消費財、ハイテク、エネルギーなど業界ごとにグローバル企業として保持すべき業績管理軸(事業、組織、ブランド、商品、顧客や販売チャネルなど)の実装が可能であり、これらのグループ共通の管理軸に基づいた情報粒度から、グループ予算編成/予算・管理連結、業績着地点分析などの実施や、販売/マーケティング戦略立案に当たっての本社からのマイクロ・マネジメント(製品ポートフォリオ分析など)を、一貫した情報に基づいて実現できる。
これまで日本においても、BOPCを導入して予算編成プロセスなどのシステム化を実現した事例は見受けられる。しかし、BOPCは「経営情報の粒度」「経営管理プロセスの一貫性」「導入範囲」(個社のみならず、グループ全体としての導入)といった側面から、強力なグローバル経営管理の仕組みを実現するための拡張性を保有する製品である。
ちなみに、SAPから出荷されたカスタマイズ未設定状態のBOPCは、ユーザー・フロント・エンドが「Microsoft Excel」であり、これに柔軟な情報軸やプロセスやワークフローを設定することが可能なデータベースを加えた汎用的な製品である。この製品は設計思想によって、いかような業務範囲でも活用できるため、導入に当たっては初めに十分な注意が必要である。
以上、今回はSAPで実現するグローバル連結経営として、連結会計ソリューションとビジネス・プランニング・ソリューションを説明した。これらは、IFRS対応における松竹梅モデル共通のグループ経営管理領域の担い手であり、多極化時代における経営管理の高度化、競合他社との大きな差別化の要素と考える。次回は、個社経営(単体会計)システムについて考えていきたい。
筆者プロフィール
鈴木大仁
IFRSチーム
システムインテグレーション&テクノロジー本部
パートナー
1989年、 アクセンチュア入社。大手消費財メーカー複数社のIFRS導入やERP再構築プロジェクトを手掛ける。そのほか、大手化学メーカー、大手食品・飲料メーカー、大手自動車会社などでERP導入プロジェクトを担当。IFRSフォーラムで「IFRS対応ITシステムの本質」を執筆
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