マルチプラットフォーム対応開発がポイント
iOS、Android、BlackBerry対応のモバイルクラウドアプリのススメ
2011年の投資ポイントは、iPhone/iPad、Androidといったスマートフォンやタブレットへの対応になる。これらの端末で動作するアプリを開発する際は、「作成は一度だけ」の原則で臨むべきだ。
企業でのモバイル端末およびモバイル向けクラウドアプリケーションの導入が拡大するにつれ、社内のITアーキテクトはモバイル端末管理(MDM)戦略をひっきりなしに変更せざるを得なくなっている。モバイル端末が会社所有のものであれ社員個人のものであれ、モバイルアプリケーションの開発は一度で終えて、配布はモバイルクラウドモデルで多数の端末を対象にすることが要件になる。
ほとんどのIT予算が現状維持か削減傾向にある中で、モビリティは好調だ。米Nemertes Researchの2010~11年度ベンチマーク調査に参加した企業の42%は、2011年度のモビリティ関連予算を引き上げている。さて、この予算はどう使われるのだろうか。企業におけるモバイル化の深化・拡大には一般的な傾向がある。
まず、スマートフォンを業務に使用する従業員の割合は増えており、2010年は50%未満だったが、2013年までには70%以上になると考えられている。また、サポートが必要な端末の種類も、爆発的に増えている。「iPad以前では、今の仕事は考えられないね」と大手出版社のCIOは漏らす。同氏の肩には、モバイルクラウドコンピューティングモデルで社員にサービスを提供するというプレッシャーが絶えずのし掛かる。このサービスはいつでもどこからでも利用でき、iPhone、Android、BlackBerryはもちろん、タブレットも含めた複数のモバイル端末に対応していなければならない。
新しいモバイルクラウドアプリを提供せよ
この新しいモバイルクラウドアプリケーションについては、「作ってしまえば何とかなる」的な意識が見え隠れする。多くの企業は、いずれは経費とサポートの負荷に見合うモバイルのキラーアプリケーションが現われると考えて導入を進めている。すぐに役立つモバイルクラウドアプリケーションの例を以下に紹介しよう。
タイムカード
最も評価の高いアプリケーションの1つが、タイムカードおよび経費アプリケーションだ。モバイル端末で就業時間を入力できるようになること、さらにはNFC(近距離無線通信)を利用して出退社時にモバイル端末を装置にかざすだけで打刻できるシステムを求める声は非常に強い。タイムカードに打刻すべきときに社外にいることは日常的にあるから、クラウドベースのモバイルアプリケーションはタイムカードにうってつけだ。
リアルタイムコミュニケーション
専門家を召集し、ビデオとWeb会議チャットを駆使して会議ができれば、サービス提供までの時間を短縮できる。フライトライン(現場)、アセンブリライン(事務方)、さらには管制室(経営陣)にも即座に専門知識を届けられる。
この2つは、増え続けるモバイル端末およびスマートフォンクラウドアプリケーションのほんの一例にすぎない。今後数年以内に、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を対象とする業務アプリケーションは数百種類になるとみられている。ならば、アプリケーションをiTunesで公開して、社員がダウンロードできるようにすればよいだけだと思われるかもしれないが、残念ながらそれほど簡単にはいかない。App Storeはエンタープライズ対応ではないし、社員が所有するモバイル端末をサポートする場合はさらに話は複雑になる。
社員所有のモバイル端末をサポートせよ
こんな経験はないだろうか。最高財務責任者(CFO)が携帯電話料金の請求書を持ってきて、こう尋ねる。「みんな喜んで自腹で料金を払って携帯電話を所有しているのに、会社持ちで携帯電話を支給しているのはなぜだろう」と。一方、社員たちは「持ち歩くスマートフォンは1つで十分だ」と声を上げる。さらに、一部のアナリストは、役員やモバイルワーカー以外の社員にもスマートフォンを導入するメリット(生産性、仕事に対する満足度、イメージアップなど)を並べ、全ての従業員にスマートフォンを導入し、モバイルクラウドモデルでアプリケーションを配布すべきだと力説する。
そんな圧力から、スマートフォンの社員所有の問題が取り沙汰されるようになった。Nemertesの調査によると、企業はいまだに会社所有派が大半だが、やがて社員の少なくとも数パーセントは個人所有のモバイル端末を利用するようになるだろう。この社員所有の端末の問題は、あらゆるモビリティ関連の意思決定に影響するため、成功するモビリティ計画を立てるには、この部分を解決しておかなければならない。
モバイルクラウドアプリケーション開発
では、最善のアプローチは何か。原則は、「作成は一度、配布はモバイルクラウドモデルで何度でも」である。どんなアプリケーションであれ、作成(または移植)は一度で終わらせ、いつでもどこからでも複数のプラットフォームで利用できるようにする。BlackBerry用のタイムカードアプリケーションを作成したら、今度はiOS用を用意し、次はAndroid用を開発するというのはばかげている。また、どこか決められた場所にいなければ利用できないアプリケーションを作成するのも無意味だ。
複数のモバイルプラットフォームをターゲットにする開発は、簡単な作業ではない。企業ではモバイルエンタープライズアプリケーションプラットフォーム(MEAP)をよりどころに、マルチプラットフォームのモバイル環境のサポートに取り組んでいる。MEAPは読んで字のごとしで、「一度の開発でマルチ対応」の概念をサポートする開発プラットフォームだ。Antenna、Good Technologies、Kony、Pyxis、SAPとその傘下のSybaseなどがMEAPソリューションを提供している。最近見られる興味深い傾向は、サードパーティー(例えばAT&T)が複数のMEAPベンダーとパートナーシップを結んで、包括的なモビリティサービスの一環としてMEAPを提供していることだ。
では、読者にとってMEAPは必要か? 3種類以上のプラットフォーム(BlackBerry、iOS、Androidなど)をサポートするのであれば必要だが、プラットフォームが1種類の場合は必要ない。プラットフォームが2種類となると判断が難しくなるが、この場合はそれぞれのプラットフォームに分けて標準化しているケースが多いようだ。MEAPを採用するかどうかは、戦略上の判断になる。高性能な最新モバイル端末を早期に導入できるようにしたいのか、今後3~5年間は2プラットフォーム体制で行くのか。どちらにしてもリスクはある。MEAPなしでは競争力が劣るし、MEAPを導入すればリソースの無駄が発生しないとも限らない。弊社では、モビリティを戦略上の資産と見なすのであれば、MEAPに投資することを薦めている。
本稿筆者のテッド・リッター氏は、リサーチサービス、コンサルティング、戦略セミナーを提供する米Nemertes Researchの上級リサーチアナリスト。認定情報システムセキュリティプロフェッショナル(CISSP)として、同社でコンプライアンスとデータ管理、データアクセス、データ保存、バックアップなど、情報管理スチュワードシップについてのリサーチを指揮している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] クラウドネイティブ戦略ガイド:8つの主要課題と解決策を解説 -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] プラットフォーム技術者のための「クラウドネイティブ」プレイブック -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] ハイブリッドクラウドでハードウェア価格高騰のリスクを回避する方法 -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI時代に必要なインフラモダナイゼーションの考え方とは? -
製品レビュー
[Dropbox Japan株式会社] ランサムウェア対策で見直したい「復旧できるファイル基盤」とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「野良Excelマクロ」に悩むSMBC日興証券が導き出した内製化の“現実解”
-
9
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
8
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー