初代iPadが見捨てられるXデー
古いiPadはもう使いものにならないのか?
新しいiPadがリリースされ、初代およびiPad 2ユーザーは自分のタブレットがAppleやアプリ開発者から見捨てられ、陳腐化することを恐れている。Appleのリリース計画に合わせてひたすら新型を買い続けるしかないのか?
2012年3月16日に正式にリリースされた第3世代のiPadは市場に快く迎え入れられ、発売から72時間で300万台が売れた。
新しいiPadのレビューも続々と公開されているが、大きく報道されたWi-Fiの接続問題や本体温度の問題の他に、初代iPadとiPad 2の所有者からはこんな疑念が聞かれる。
「米Appleの急進的なリリーススケジュールは、わずか1、2年前に少なくとも499ドルした前世代の端末を陳腐化する策略ではないか?」
新しいiPadのリリースは、すぐに陳腐化することが運命付けられている製品のユーザーに、最新で最高の製品を再び購入させるAppleの用意周到な計画なのだろうか? それとも、この陰謀論は、さらに洗練されたテクノロジーがすぐに登場することを見抜けなかった、既存のiPadユーザーの言いがかりにすぎないのだろうか。
実際のところ、256MバイトのRAMとシングルコアプロセッサの初代iPadでは、Photoshop TouchやiPhotoなど、実行できない注目のアプリがある。また、多くの初代iPadユーザーが、2012年初めにiOS 5のアップデートが提供されてから動作が遅くなったと不満の声を上げている。iPad 2ユーザーも、高解像度のRetinaディスプレーを念頭に開発されたアプリが登場したら、同じ運命をたどるのだろうか。
ビジネス戦略かイノベーションか
米MobileTraxの主席アナリストであるゲリー・パーディ博士は、この状況を如才ないビジネス戦略と前人未到のスピードで進むイノベーションが融合した結果だと見ている。
「Appleは24カ月たったら壊れる部品を製造していると言うことではない。長期使用に耐えられる製品を作っているが、技術の改良や進歩を取り入れて、よりよい製品を生み出しているということだ。もちろん、新技術を取り入れることで、旧バージョンの利用者の大半が、新しい改良された端末を欲しがるようにしむける、計画的陳腐化も織り込まれているだろう。私はこれを“購買意欲刺激要素”と呼んでいる。Appleは他社と同様に、2、3年単位で新しい改良モデルが出されたら、思わず買い替えたくなる素晴らしい製品を作ることで、再び収益が流れ込む仕組みを確立しようとしている。iPhoneも5、6、7……と続々と発表されるだろう。ユーザーはそんな新製品に購買意欲を刺激され、ついにはアップグレードする」(関連記事:これがAppleの「iPhone 5」だ!(臆測、うわさ、リークによると))
オーストラリアに本拠を置くiOSアプリ開発会社Tilt+Coの共同創設者、スチュー・キャメロン氏によると、「計画的陳腐化についての議論は、意味がない」という。キャメロン氏はパーディ博士の意見に同調し、Appleが一見、短期間で飛躍的な進化を遂げていることが、この議論の主な原因としている。
「Appleは、3年前にはこの新しいiPadを作ることができなかったというだけの話だ。大型のRetinaディスプレーを開発できるようになったので、新しいiPadが作られた。貪欲な市場は、Appleが2カ月に一度新しいタブレットをリリースできれば、難なくそれを受け入れるだろう。重要なのは、初代iPadまたはiPad 2を購入したユーザーは、今も自分たちのiPadに愛着を持っていることだ」
iPadの改良モデルが矢継ぎ早にリリースされるのは、Appleがテクノロジー好きの消費者から毎年数百ドルを巻き上げようとする周到な計画の表れではないかという疑問をぶつけたところ、キャメロン氏は次のように答えた。
「Appleの製品ライフサイクルの速さは、いつも話題になる。18カ月で新しいタブレットが3回もリリースされるのは速すぎる、と考える向きもあるだろう。ただし実際には、どの製品も前の製品より成功を収めているという点が重要で、それ以外は大した問題ではない」
ユーザーによるハードウェアのアップグレードができないiPad
一方で、計画的陳腐化論の支持者たちは、年季の入ったノートPCでさえ、RAMを増設し、SSDを使用することでアップグレードできることを指摘する。それに対してiPadは、その“閉じた”デザイン故に、このようなアップグレードができない。当然、これは、初代iPadユーザーの多くが非難する点である。
では、第1、2世代のiPadユーザーはどうすればよいのか? iPad 2ユーザーは新しいiPadを気にする必要はないというのが、次世代iPadのレビューの基本的な論調だ。第3世代のiPadでは、高解像度のRetinaディスプレーに対応するためにGPUが強化され、メモリ搭載量が増えているが、CPUは1GHzのデュアルコアのままだ。エド・ハーディ氏は米TabletPCReviewの新しいiPadのレビューで、次のように指摘している。
「このタブレット(新しいiPad)に搭載されているAppleのA5Xプロセッサは、iPad 2のプロセッサとほとんど同じだ。従って、iPad 2と新しいiPadのパフォーマンスもほぼ同じになる。ベンチマークや実際の経験もこれを裏付けている」
ソフトウェアアップデートのサポートは?
いずれ、第3世代のiPadの超高解像度ディスプレーを活用したアプリケーションの増加に伴い、旧モデルのユーザーは取り残される運命にある。iOSのアップデートも、打ち切られる日が来るだろう。初代iPadには、恐らくiOSのメジャーアップデートはこれ以上提供されないと思われる。iPad 2は、Appleの過去の実績を考えると、当面は安泰だと思われる。これは、以前iPhone 3Gユーザーが抱えていた不安と同じたぐいのものだ。iPhone 3Gについては、2011年の初め、iOS 4.3リリース時にソフトウェアアップデートが提供されないことが決まり、この不安は現実のものとなった。
米gammaPrimaのオーナーでiOSアプリ開発者のエリック・バレット氏は、上記の問題がすぐに現実のものとなることはないと話す。同氏は、「新しいiPadは多くの人が恐れている変化をもたらす製品ではないが、その方向に向かっていることはたしかだ。新しいiPadのグラフィックス性能をフル活用するアプリは多くはないため、初代iPadとiPad 2は、あと1年は陳腐化することはない」と話す。
また、バレット氏の話では、アプリケーション開発者が新型iPad 向けアプリケーションの開発に注力し、前世代のiPadユーザーのことを忘れ去るということはなさそうだ。同氏は「当社の場合は、最も性能の低い初代iPadでも機能するコードを書く必要がある。初代iPadの利用台数を考えると、数百万人のユーザーを切り捨てるのは不条理だ」と話す。
iPad 3はどこに?
結局、新しいiPadについては、Appleが毎年繰り出す策略に備えてどれだけ資金を用意できているかによって、楽しみを覚えることも、困難を覚えることもできる。予算が少ない場合は、提供されている詳細情報に細心の注意を払うことをお勧めする。
最後に、一言。名称が気になる。AppleがこのiPadを“新しいiPad”と呼んでいるのは、正真正銘のiPad 3が間もなく発表されるということだろうか? その答えは、いずれ明らかになるだろう。
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