Appleはコンシューマーの要望を優先
Apple「iOS 6」のiCloud強化に頭を抱える企業ユーザー
世界中のコンシューマーが待ち焦がれるiOS 6のリリース。だが、IT管理者にとっては頭痛の種が増えることになるかもしれない。iCloudとiOSと各種アプリケーション間の統合は何をもたらすのか?
米Appleが2012年秋にリリース予定の最新モバイルOS「iOS 6」には約200種類の新機能が搭載されるが、その大半はコンシューマー向けのものだ。特にそのうちの1つは、既にBYOD(私物端末の業務利用)の問題に頭を悩ませているIT管理者にさらに大きな頭痛の種を与えることになりそうだ。
先日のAppleの開発者向けカンファレンス「WWDC 2012」で発表された「Software Developers Kit(SDK)for iCloud」は、iCloudとiOSと各種アプリケーション間のより緊密な統合を可能にするものとなるはずだ。
それは、エンドユーザーにとっては素晴らしいことだ。だが、メールやストレージ、データ同期といったiCloudの各種機能が大部分のiOSアプリと連携することは、企業のIT部門にとってはBYODをめぐる状況の変化を意味する。「なぜなら、常に機能性がプライバシー保護を上回ることになるからだ」と、Apple認定ソリューションプロバイダーである米Tech Superpowersの創業者マイケル・オー氏は指摘する。
現在、モバイル端末管理ソフトウェアを使えば、従業員がiPadやiPhoneからiCloudにアクセスできないようにするのは簡単だ。「だが、Pagesや他のプロダクティビティアプリとiCloudが緊密に統合されれば、どちらか一方を使い、もう一方は使わない、というのは不可能になる」とオー氏。
「ソーシャルネットワークも含め、全てのアプリがiCloudと連携し、データが複雑に混ざり合い、会社のネットワークを離れていくという状況を想像してみてほしい」とさらに同氏。
Appleは概して、企業のニーズや要望よりもコンシューマーの要望を優先する企業だ(関連記事:Appleの企業向けサポートに不満を募らせるIT担当者)。アプリのサンドボックス化や「Configurator」ツールなどでiOSのセキュリティと管理機能が強化されているとはいえ、iCloudの進化はAppleのコンシューマー向けと企業向けのビジネスの隔たりの大きさを示すもう1つの例といえるだろう。
「iCloudは企業ユーザーではなくコンシューマーに向けたサービスであるという点で、Appleの方針は非常に明確だ。だがIT部門は今後、BYOD戦略にさらに細心の注意を払う必要があるだろう」とApple認定ソリューションプロバイダーである米TekserveのCEO、ケビン・ハート氏は指摘する。
iCloudがBYODに及ぼす影響
iOSユーザーには、データをローカルに保存するか、あるいはDropboxやiCloudなど既存のクラウドストレージサービスを利用するかの選択肢がある。データをどこに保存するかという選択は今後も常に存在するだろう。だがオー氏は、Appleが徐々にユーザーを教育し、デフォルトでデータをiCloudに保存させるようにしていくのではないかと考えている。あるいはiOSが進化し、いずれユーザーにとっては「iCloudにデータを同期するのが最も簡単な選択肢」となる可能性もある。
iCloudは企業に数多くの問題をもたらしそうだが、従業員はiCloudによって生産性を大いに向上できる可能性が高い。そのため、いったんiOS 6の提供が始まれば、このストレージサービスはさらに頻繁に使われるようになるだろう、と業界の専門家は予想している。
例として、機密文書を扱い、データのダブルチェックにSafariを使っているCEOを考えてみよう。「Safariに新たに追加されるタブ同期機能とiCloudを使えば、このCEOはオフィスを出て電車に乗ってからでも、iPadを開けばすぐに文書の作業を再開できる」とハート氏。
「中断した作業をすぐに再開できる点をエンドユーザーは気に入るだろう」とさらに同氏。ただし、そうした文書は会社のネットワークを超え、IT部門のコントロールが及ばないところでも簡単に手に入れられることになってしまう。
またオー氏によれば、企業のBYODプログラムを利用しているiOSユーザーの多さを考えると、iCloud SDKは「企業にとって実に興味深い意味を持つ」という。
「企業向けのビジネスに着目し、何かしらiCloudを活用したサービスを提供するプロバイダーもすぐに現れるだろう。Appleはそうした動きに加わらないだろうが、恐らく、参入価値のある市場になるはずだ」とオー氏は指摘している。
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