Googleの牙城を崩せるのか?
Facebook独自の検索エンジンの秘密に迫る
米Facebookが2013年1月に発表した独自の検索プラットフォーム。友人や写真、場所、興味の対象などユーザーの活動を元にした検索結果を提示する。SEO最適化とは異なる、ユーザー中心検索を可能にしたカラクリとは?
米Facebookが発表した新しい「Graph Search」インタフェースがWebアプリケーションの転換点を意味するのかどうかは分からない。しかし、2013年7月に予定されているGraph Searchの正式リリースは、データのグラフ化というアイデアの披露パーティーになりそうだ(訳注:本記事は2013年7月に掲載された)。
現時点ではまだ開発分野のメインストリームから離れた位置にあるものの、グラフデータモデルおよび同方式を採用したデータベースは、「NoSQL」データアーキテクチャの新たな形態として一部で注目を集めており、Facebookのアプリケーションがグラフデータベース技術の認知度をさらに高める可能性がある。
米ソフトウェア開発サービス会社であるThumbtack Technologyのベン・エングバーCEOは「グラフデータベース技術は以前から存在するが、ビッグデータの出現、ソーシャルリレーションシップの把握、つながりの探索(コネクションマイニング)というトレンドに後押しされる形で同技術が一気にメインストリームに近づいた」と解説する。
Facebookがグラフ方式を選択した最大の理由は、ソーシャルリレーションシップをマッピングすることにある。同社の狙いが奏功すれば、グラフデータベース製品のベンダー各社への注目がさらに高まりそうだ。この分野には、米Neo Technology、米Objectivity、英Orient Technologies、米YarcDataなどのベンダーが存在する。
グラフデータベースは、グラフデータモデルを使ってノードとリレーションシップの集合を整理する。グラフデータモデルでは、広く知られている「Create(作成)、Read(読み出し)、Update(更新)、Delete(削除)」(CRUD)手法を使用する。データモデリングに用いられるグラフ指向の手法は、従来型のリレーショナルモデリングとは大きく異なるが、SQLリレーショナルデータベースで実行できるタイプのジョブにやや類似したオンライントランザクション処理をサポートする。グラフデータベースはオブジェクト指向型データベースとも多少の類似性があり、一部のオブジェクト指向型データベースはグラフプロセッサのストアとして利用されている。
Graph Searchアプリケーションは、Facebookが自社開発した「Unicorn」と呼ばれるインメモリデータベースの上で動作する。このデータベースは、検索語をドキュメントの集合にマッピングする検索アプリケーションにデータを供給する。これらのドキュメントは、Facebookソーシャルグラフのコネクションのように処理される。「その結果、Graph Searchは、友人が気に入っているレストランや、友人の友人が好きな場所などを極めて素早く検索して表示できる」とFacebookは説明する。
グラフデータベース市場の転換点
グラフデータベース市場は生まれて間もないが、Neo Technologyのイーミル・イーフレムCEOは、Graph Searchのリリースが商用グラフデータベース分野の転換点になるとみている。2013年にマサチューセッツ州ケンブリッジで開かれた「GraphConnect」イベントで米TechTargetの取材に応じたイーフレム氏は「Neo Technologyは遠回りをしてグラフデータベース市場に参入した」と述べた。同氏によると、Neo Technologyの「Neo4j」技術は、スウェーデンのマルチテナント型アプリケーションサービスプロバイダーのコンテンツ管理システムをベースとして開発されたもので、現在はNeo Technologyが開発した「Cypher Query Language」と組み合わせて運用されるという。
前出のThumbtack Technologyのエングバー氏によると、コンピューティング技術の進歩により、以前よりもはるかに大量のユーザー行動を把握することが可能になり、このことがデータアーキテクチャの見直しをデータアーキテクトに促したという。Thumbtack Technologyは2013年6月、ユーザーによるグラフデータベースの開発を支援するためにNeo Technologyと提携した。
「ユーザー行動の把握とデータマイニングに役立つ貴重なツールとしてNeo4jのような技術が登場した。例えば、ソーシャルネットワークの分析などのアプリケーションに利用できる」とエングバー氏は語る。「Neo4jは巨大なコネクションのネットワークを扱うことができる。ある人が他の人とどんな風につながっているのかを示してくれる。これは『6次の隔たり』(訳注:人は自分の知り合いを6人以上たどると、世界中の人々とつながるという説)のような問題だ。Neo4jはこういった問題に対処するのに大きな威力を発揮する」
まだなじみの薄いグラフデータベース
グラフデータベースになじみがない人も多いと思われる。一般的なビジネストランザクションで使われてこなかったことが理由だ。ビジネス分野ではリレーショナルデータベースが主として利用されてきた。しかし一部のネットワーク管理ソフトウェア、サプライチェーンシステム、セキュリティアプリケーションや国家情報関連アプリケーションなどでは、グラフデータベースが利用されている。
「情報機関ではずっと以前からグラフデータベースが使われている。関連性を把握する上で非常に有効な手段を提供するからだ」と話すのは、米コンサルティング会社The Bloor Groupの共同創業者で同社の主席アナリストを務めるロビン・ブルア氏だ。
ブルア氏によると、市場で主流のリレーショナルデータベースにはグラフモデルが存在しなかったため、企業ユーザーはグラフ手法を見過ごしてきたという。「しかしもう無視するわけにはいかない。グラフは企業ユーザーが扱うデータの構造を正しく表現できるからだ」と同氏は付け加える。
多くのWebアプリケーションがそうであるように、FacebookのGraph Searchもいずれ姿を消すことになるかもしれない。しかしグラフモデルが適している用途でグラフデータアーキテクチャの利用を拡大させる引き金になる可能性もある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[Datadog Japan合同会社] Wantedlyのオブザーバビリティはどう進化したか 10年の軌跡と実装の変遷 -
事例
[Datadog Japan合同会社] エラー検知から原因調査までを最短5分で、日経新聞に学ぶアプリ監視の改善方法 -
製品資料
[Datadog Japan合同会社] クラウドのコストと利用状況を可視化&最適化、「Datadog」の実力とは? -
事例
[Datadog Japan合同会社] クラウド移行で見えた監視の死角、SBI証券が選んだ統合オブザーバビリティ実践 -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] リソースに限りのある中堅企業で「多層防御」の運用負荷をどう乗り越える?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
2
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
3
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
4
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
5
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
6
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
7
高額GPUを買っても成果ゼロ? 「プライベートAI」の落とし穴
-
8
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
9
ソフトウェア開発組織の疲弊を防ぐ、AI駆動開発の「レビュー負荷軽減」実践事例
-
10
「ERP(統合基幹業務システム)の導入・活用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー