影響を受ける製品と対策を紹介
ファイアウォールをわずかな通信でまひさせる「BlackNurse(ブラックナース)」攻撃とは?
15~18Mbpsという比較的小規模のトラフィックで、ファイアウォールの機能をまひさせる「BlackNurse」。その仕組みや企業が取るべき対策を解説する。
「BlackNurse」(ブラックナース)という攻撃手法をご存じだろうか。比較的少量のICMP(注1)トラフィックを用いてサービス妨害(DoS)攻撃を仕掛け、脆弱(ぜいじゃく)なファイアウォールを過負荷状態にする。
※注1: Internet Control Message Protocol。IP通信のエラー通知や通信状況の確認などに利用するプロトコル。
なぜBlackNurseは少ないトラフィックで、ファイアウォールに問題を引き起こすことができるのだろうか。
一部のファイアウォールで有効に
BlackNurseがファイアウォールを機能停止に追い込むことができるのは、ファイアウォールにICMPトラフィックを処理するための十分なCPUリソースがない場合だ。BlackNurseを発見したデンマークの通信会社TDC Groupは、BlackNurseの影響を受ける製品として、Cisco Systemsの統合セキュリティ製品「Cisco Adaptive Security Appliance」(Cisco ASA)の小規模環境向けファイアウォールなど、複数のファイアウォールを挙げる。
一部のファイアウォールでBlackNurseによる攻撃が成功したのは、標的となったファイアウォールに、少量ながら絶え間なく送信されてくるICMPパケットを処理できるだけのCPUリソースが残っていなかったからだ。欧州の情報セキュリティ対策組織であるCERT-EUは、2016年11月14日付のセキュリティアドバイザリでBlackNurseに言及した。
BlackNurseは、通常であればpingコマンド(ICMPを使用したネットワーク診断コマンド)のパケットが宛先ポートに到達できない場合に、送信元に返送されるICMPパケットを悪用する。TDC Groupのセキュリティオペレーションセンター(SOC)によれば、BlackNurseのトラフィックは、一般的なDoS攻撃と比べて非常に少規模だ。わずか15~18Mbps程度でも、毎秒4万~5万件のICMPパケットを送りつけることができ、一部のファイアウォール(具体的にはシングルCPUのファイアウォール)が過負荷状態に陥ったという。
Cisco ASAはデフォルトでは、ICMPで利用可能な全ての宛先到達不能メッセージ(タイプ3)を許可している。Ciscoは必要に応じてファイアウォールのデフォルト設定を変更することを推奨している。だがこれは、BlackNurseに特化した対策ではない。
BlackNurse対策としては、ルーターでICMPトラフィックを制限するか、パケットの分割禁止に関するICMPメッセージ(タイプ3、コード4)を除く全てのICMPパケットの受信を拒否することが挙げられる。パケットの分割禁止に関するICMPメッセージを拒否対象から除外するのは、最適なMTU(Maximum Transmission Unit、ネットワークで送信可能なパケットの最大サイズ)を調べるための「経路MTU探索」機能に必要だからだ。経路MTU探索機能は多くのOSに利用されている。
MTUのサイズは、パケットの分割処理が発生しないように設定する。仮に分割処理が発生すると、IPsec(IPパケットを安全にやりとりする仕組み)のトラフィックがまひして、仮想プライベートネットワーク(VPN)を使うことができなくなる可能性がある。
BlackNurseに対する脆弱性を緩和するには、シングルCPUからマルチCPUのファイアウォールへアップグレードするのも手だ。複数ベンダーのファイアウォールを併用する場合は、互換性を確認することも重要となる。DoS攻撃対策ツールの更新も忘れてはならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
7
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
8
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
9
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー