次世代標準仕様「FHIR」が、レガシーシステムだらけの医療ITの救世主となる理由APIでは解決できない、レガシーシステム連携

医療業界にはレガシーシステムが多く存在し、API活用を阻む障害となっている。この事情から、医療情報の相互運用性を目指した次世代の標準仕様FHIRへの関心が高まっている。

2017年11月27日 05時00分 公開
[Evan AlbrightTechTarget]
FHIR FHIRについて紹介するHL7のWebサイト《クリックで拡大》

 米国規制当局は、電子医療記録(EHR)システムと他のソースの患者データとの相互運用性を高めるよう医療機関に働きかけている。そのため、レガシーシステムを利用する病院は、新しいプログラミング手法を模索している。

 国家医療IT調整室(ONC)を率いる医学博士ドナルド・ラッカー氏は、現代の医療ITの相互運用性を高める手段は医療APIだと指摘する。ONCは相互運用性を高めるために、EHRからのデータの流れや、患者監視システムにデータが戻るワークフローなどに取り組んでいる。

 一般に、API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアアプリケーションが相互に通信できるようにするコードのことだ。医療機関には、特にオープンAPIが適していると考えられる。オープンAPIならインターネットに公開され、多くの開発者が共有している。

 ラッカー氏は、2017年7月の記者会見で次のように話した。「コンピュータサイエンスの魅力的なテクノロジーはたくさんある。当機関がオープンAPIと相互運用性を使って実施しようとしていることは、コンピュータサイエンスの新しいテクノロジーの幾つかを、医療業界におけるデータ収集との橋渡しとして機能させることだ」

進化を阻むレガシーシステム

 相互運用性において医療APIが果たす役割については、2つの一般的なアプローチがあると考えられる。1つは、医療業界固有のアーキテクチャに基づいて構築したAPIを利用するアプローチだ。こうしたAPIの代表がFast Healthcare Interoperability Resources(FHIR:ファイア)だ。もう1つはRepresentational State Transfer(REST)などの一般的なエンタープライズアーキテクチャに基づいて構築したAPIを利用するアプローチだ。RESTful APIは、Web開発内での使用に適しているため、「Twitter」や「LinkedIn」などの大手Webサービス企業が利用している。

 Children's Mercy Hospitalで副院長、CIO、最高データ責任者を兼任するデイビッド・チョウ氏は次のように述べている。「他の業界を情報交換の点で見てみると、APIを利用するのが一般的になっている。APIが医療機関であまり使われないのは、医療機関の大規模システムのほとんどがレガシーテクノロジーに基づいて構築してあるためだ。そのため、主要プログラミング言語を使ってAPIを作成することさえできない。これは、厄介なことだ」

ITmedia マーケティング新着記事

news079.jpg

狙うは「銀髪経済」 中国でアクティブシニア事業を展開する企業とマイクロアドが合弁会社を設立
マイクロアドは中国の上海東犁と合弁会社を設立。中国ビジネスの拡大を狙う日本企業のプ...

news068.jpg

社会人1年目と2年目の意識調査2024 「出世したいと思わない」社会人1年生は44%、2年生は53%
ソニー生命保険が毎年実施している「社会人1年目と2年目の意識調査」の2024年版の結果です。

news202.jpg

KARTEに欲しい機能をAIの支援の下で開発 プレイドが「KARTE Craft」の一般提供を開始
サーバレスでKARTEに欲しい機能を、AIの支援の下で開発できる。