IoTセキュリティや“脆弱パスワード”問題に対処
無線LANの新プロトコル「WPA3」 「WPA2」との違いは?
「WPA2」の後継となる、無線LANの新たなセキュリティプロトコルが「WPA3」だ。従来のWPA2とは何が違うのか。
無線LANの新しいセキュリティプロトコル「WPA3」は、パスワードセキュリティとモノのインターネット(IoT)デバイス保護の強化を目的としている。この新しいセキュリティプロトコルには何が含まれ、従来の「WPA2」とはどのように異なるのだろうか。
IoTは家庭や企業の在り方を変え、2020年までには数百億個を超えるIoTデバイスがインターネットに接続するようになるとの予想もある。IoTデバイスは重要なインフラのコンポーネントとなり、重要なビジネス情報や個人情報を扱うようになる。そうなればIoTデバイスが使用する通信チャネルのセキュリティ確保が必須となる。
現在、IoTデバイスへの無線LAN接続に、最も一般的に用いられているセキュリティプロトコルはWPA2だ。WPA2は、無線LANアクセスポイントと無線LANのクライアントデバイスとの間で、安全なネットワーク接続プロセスを実行する「ハンドシェイク」の方法を定義し、接続のセキュリティ確保に使用する暗号化プロトコルを取り決めている。
WPA2は、深刻な脆弱(ぜいじゃく)性のあったセキュリティ/暗号化プロトコル「WEP」に代わるものとして、無線LAN関連の業界団体Wi-Fi Allianceが考案した。WPA2は数多くの無線LANデバイスにセキュリティを提供しているが、2004年の策定から14年以上が経過したのも事実だ。
そこで次世代の無線LANデバイスと、個人や企業の無線LANのセキュリティを確保するため、Wi-Fi Allianceは無線LANの認証や暗号化を強化するWPA3を導入した。
「WPA3」とは何か
WPA3が採用する鍵長192bitの暗号アルゴリズムは、米国の国家安全保障システム委員会(CNSS:Committee on National Security Systems)と、国家安全保障局(NSA:National Security Agency)が策定した暗号アルゴリズム群「Commercial National Security Algorithm Suite」(CNSA)に準拠する。重要な無線LANを保護するために、これまで以上に強力な暗号化を実現する。
WPA3では、無線LANアクセスポイントと無線LANデバイス間で個別にデータを暗号化できる。この機能は、公衆無線LANアクセスポイントのセキュリティ全体を大幅に強化する。空港、ホテル、カフェなど公共の場にある公衆無線LANアクセスポイントは誰でも使える手軽さがある一方、暗号化なしでの通信を許可していることも少なくない。他人がアクセスしているWebサイトでさえ、盗聴できる可能性があるのだ。
この問題を解決するためにWPA3は、エンドユーザーが前もって設定しなくても、一意の暗号鍵を用いて、無線LANデバイスと無線LANアクセスポイント間の全トラフィックを自動的に暗号化する。この暗号化のセキュリティ水準は、暗号化に加えて認証の機能を持つ「認証付き暗号化」(Authenticated Encryption)には及ばないものの、暗号化をしないよりは優れている。毎日使用するインターネットのセキュリティは大幅に向上するはずだ。
WPA3は、無線LANデバイスが他の無線LANデバイスに接続する際に、これまで以上に堅牢(けんろう)なハンドシェイクを実現する。これはブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)や辞書攻撃といった、ID/パスワードの組み合わせを試行する攻撃から、強力なパスワードを使用していない無線LANデバイスを保護するのに役立つ。パッチが適用されていないWPA2デバイスには、WPA2のハンドシェイクを悪用する脆弱性「KRACK」が潜んでいる可能性がある。KRACKは通信を盗聴したり介入したりする中間者攻撃を可能にする。
2017年にKRACKを発見したメイシー・バンホフ氏は、WPA3の新しいハンドシェイクプロトコルは、恐らく「SAE」(Simultaneous Authentication of Equals)、通称「Dragonfly」になると考えている。これはゼロ知識証明(相手に情報を伝えずに、自分が情報を持っていることを証明すること)の考え方に基づく「パスワード認証鍵交換」(PAKE:Password Authenticated Key Exchange)方式のハンドシェイクプロトコルだ。SAEを活用すれば、脆弱なパスワードであっても、ブルートフォース攻撃や辞書攻撃を防ぐ効果が期待できる。
WPA3は、Amazon.comのスマートスピーカー「Amazon Echo」など、キーボードやディスプレイのない無線LANデバイスの設定も容易にするとみられる。だが、その仕組みやセキュリティを確保する方法の詳細は明らかになっていない。Wi-Fi Allianceは、WPA2の強化も続けるだろう。既存の無線LANデバイスの多くが、これから先もしばらく稼働できるようにするためだ。無線LANデバイスを新たに購入するユーザーは、Wi-Fi Allianceが承認したことを示す「Wi-Fi CERTIFIED WPA2」シールか「Wi-Fi CERTIFIED WPA3」シールを確認した方がよい。このシールがあれば、必要なセキュリティ機能は一通り実装されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
7
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
8
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
9
積水化学工業が「SAP S/4HANA Cloud」の“全グループ導入”に踏み切った訳
-
10
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー