現時点では医療へのブロックチェーン技術の利用は主流ではない。しかし近い将来に医療データの安全な保管技術として広く活用される可能性がある。医療ブロックチェーンを取り巻く状況はどうなっているのか。
複雑なブロックチェーン技術は、現在医療ITが直面している複雑な相互運用性とセキュリティの課題を解決する。
BIS Researchの最近の報告によると、医療IT分野のブロックチェーン市場は2018年に約1億8000万ドルになり、2025年末までには56億ドルを超えると予測される。この報告で同社は、2020年までにブロックチェーンと医療の組み合わせは一般的なものになり、医療機関の70%がブロックチェーンへ投資するようになると予測している。
フロリダ・ホスピタルのニコルソン先端外科手術センター(Nicholson Center for Surgical Advancement)のCTO、ロジャー・スミス氏がブロックチェーンと医療について研究するようになった動機は、この動向予測に基づいている。同氏は、最初はブロックチェーンの取り組みにおいて同センターが遅れているのではないかと考えていたが、周囲と相談した後も、医療関連のブロックチェーンプロジェクトを立ち上げることはなかった。同氏は「現時点では実際にブロックチェーンのプロジェクトは実行していない。時間を無駄にしないためにも、センター内でそういった先端技術に関わる人数は5人以下に留めている」とインタビューで語った。
しかしロジャー氏がブロックチェーンと医療の可能性を信じているのは確かだ。同氏はボストンで開催された第10回バーチャル医療サミット(Virtual Health Care Summit)のプレゼンテーションで、ブロックチェーンが医療データにこれまでにないほど強力なセキュリティをもたらすと語った。「誰でも人生のなかでさまざまな医療を受け、受診データの痕跡を残している。最終的に受診データをブロックチェーン化して、自身のデータを保管するための鍵を持つことになる」(ロジャー氏)。ブロックチェーンの各チェーンは医療検査のデータそのものを保持するか、CTスキャンデータのような大容量のデータへのアクセス権を保持する。ブロックチェーン内の各リンクは直前のリンクを基にしたデータから作成されるため、理論上はハッキングが不可能な固有の署名が作成される。ブロックチェーンは既存のEHR(電子健康記録)システムと個人的な医療記録の間のレイヤーとして機能し、この2つをひも付ける接着剤のように機能するため、相互運用性の問題はなくなるとロジャー氏は説明する。
ロジャー氏はこのような状況を楽観的に見ていながらも、ブロックチェーンの優位性を誇張することはしない。「人々はブロックチェーンがインターネットよりも大きなものになると言っているようだが、そうではない」とバーチャル医療サミットで聴衆に語った。ブロックチェーンが医療に本格的に利用されるにはまだ課題がある。「まずは小規模なアプリケーションを作成して、さまざまな実験をする必要がある。大企業の出番はその後だ」(ロジャー氏)
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