ロキ・ジョーゲンソンのネットワーク入門
二重通信ミスマッチ【後編】――コンフリクトを防ぐには
「<a href="http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/0702/16/news01.html">二重通信ミスマッチ【前編】</a>」では、二重通信コンフリクトそれ自体の特質について解説した。今回は、その歴史的背景、将来的な見通し、そしてベストプラクティスについて論じたい。
ネットワーク技術が進歩しているにもかかわらず、二重通信のコンフリクトは容易になくなりそうにもない。この問題はイーサネットの進化とともに微妙に進化してきた。多くの場合、生半可な対策では何の解決にもならず、かえって問題があいまいになるだけである。「二重通信ミスマッチ【前編】」では、二重通信コンフリクトそれ自体の特質について解説した。今回は、その歴史的背景、将来的な見通し、そしてベストプラクティスについて論じたい。
今日、ほとんどのケーブルシステムが全二重通信をサポートしており、半二重モードの必要性は大きく低下した――少なくとも、人々はそう考えたがっている。半二重モードが使われなくなれば、二重通信コンフリクトもなくなるはずなのだから。いずれにせよ、半二重通信の使用は、意識的に呼び出さなければならないか、全二重通信が不可能または不適切な特殊状況においてのみ利用されるオプションとなるべきだ。半二重通信は元来、送信側と受信側がメディア(1対のケーブルなど)を共有するための手段であったのだ。
しかしこれまで、レガシーインタフェース(半二重通信のみをサポート)、低価格NIC(多くのシンプルなイーサネット対応デバイスに搭載)、両方の二重通信モードをサポートするという傾向が支配的だった。イーサネットは半二重モードと決別することなく、まるで無精ひげのように、それをいつまでも残しているのだ。10ギガビットイーサネット規格であるIEEE 802.3.abにも半二重モードが残されている(ただし同規格は4対の導線を要件としている)。ただ幸いなことに、業界は基本的に半二重通信をサポートしない方向を選択した。10ギガビットイーサネット規格(UTPケーブル用の802.3an)のリリースでは、ついに半二重通信に関する規定がなくなった。
それよりも重要なのは、複数の速度(10/100/1000Mbpsなど)をサポートする最近のNICでは、低速モードが半二重通信をどうしてもサポートしなければならないことだ。ギガビットイーサネットが登場する前は、二重通信コンフリクトはパフォーマンス低下の最も一般的な原因だった。NASA(米航空宇宙局)が2001年に実施した調査によると、ネットワーク問題の75%が二重通信コンフリクトに関連したものだった。ギガビットイーサネットでは半二重モードの実際的価値がなくなるため、この問題が解消するかと思われた。しかし実際には、それとは逆の影響が現れたのである。
ベンダー各社は、複数の速度に対応した新タイプのギガビットイーサネットをユーザーフレンドリーにするために、構成インタフェースに手を加え、自動認識機能とオートネゴシエーション機能を組み合わせることにより、NICが必ずいずれかの速度で接続するようにしてきた。言い換えれば、ギガビットイーサネットNICを100Mbpsのスイッチに接続しても、ほとんどの場合、動作するということだ。しかしそうすることで、二重通信コンフリクト問題を招き入れてしまうのだ。というのも、オートネゴシエーションは一律に適用しないと問題を引き起こす場合が多いからだ。このため、今後も当分(ひょっとすると遠い将来にわたって)われわれは二重通信コンフリクトに悩まされることになりそうだ。
可能なソリューションとベストプラクティス
この問題にどう対処すればいいのだろうか。QoSが状況を改善するだろうと期待するのは甘い。二重通信コンフリクトが起きるほとんどの場合において(すなわちLANでは)、QoSは通常、レイヤー3に適用され、IPヘッダのTOSまたはDSCP設定に従ってパケットのキューイングと処理が行われる。これに対して、二重通信コンフリクトは基本的に、IPヘッダの検査が行われるよりも前の段階のレイヤー2において発生する。QoSが何らかの効果を発揮するよりも前に、フレームが衝突し、パケットが破壊、廃棄されてしまうのである。VLANなどの分離技術をもってしても、二重通信のミスマッチの影響からトラフィックを守ることはできない。例えば、VoIPの場合、二重通信コンフリクトのせいでデータフローが損失を引き起こすことによる影響を免れることはできない。忘れてはならないのは、QoSは一般に、障害の起きたネットワークを修復したりはしないということだ。QoSは通常の条件の下でパケットを処理する方法を変更するだけである。
効果的なソリューションを求めるベンダー各社は、半二重通信とオートネゴシエーションのインプリメンテーションの改善を進めている。従来のインプリメンテーションの中には使いものにならないものもあり、これらを修正することでオートネゴシエーションの失敗の頻度が減少した。一方、コンフリクト時の損失レベルを削減したり、正しい二重通信マッチングの可能性を高めたりするために、CSMA/CD(衝突検知)動作の独自のバリエーションを採用したベンダーもある。ある大手ルータメーカーでは、4分の3方式の二重通信機能を提供している。これは、双方向データ転送能力を本来のピーク能力の約75%に抑えることによって、ミスマッチ状態における損失を減少させるという方式だ。
しかし一般的には、ネットワーク管理者にとっての課題は、機器、NIC、ドライバの異種混在環境、アプリケーション環境、ならびに自社ネットワーク特有の要因を考慮した上でコンフリクトに対処することである。唯一のソリューションというようなものは存在しない。全般的に言えば、やはりベストプラクティスが二重通信コンフリクトに対処する上で最も効果的だ。その目標は、二重通信コンフリクトの発生をできる限り防止するとともに、発生した場合にはできるだけ速やかにそれを発見し、解決することである。
二重通信ミスマッチを発見、特定するのは非常に困難である。二重通信コンフリクトは見つけるのが難しいことで知られており、発見に膨大な時間を要することもある。二重通信問題を自動的に診断できる技術も存在するが、大抵の厄介な問題がそうであるように、個々の事例を後から追いかけるよりも、予防策を講じて問題そのものを実質的に除去する方がはるかに簡単だ。
ベストプラクティスは主として、オートネゴシエーションをどのように使用するかが中心的な課題となっている。数年前、オートネゴシエーションはそもそも信頼できるのかという論争が盛んに行われた。それに代わる方策は、すべてのインタフェース上で二重通信モードを手作業で設定するというものだった(例えば、各インタフェースを100Mbpsの全二重モードに設定し、それ以外の構成については個々の特殊ケースごとに設定するなど)。ただ、非常に大規模なネットワークでは、手作業で固定設定するというアプローチはあまり効率的ではなかった――要するに、拡張性がないのである。しかし一般的に、このアプローチは一律に適用した場合には非常に信頼性が高く、多くの有能なネットワーク技術者に好まれた。
オートネゴシエーションの最大の問題は、配備の一貫性の欠如である。手作業による二重通信モードの固定設定とオートネゴシエーションを混在させると、間違いなくコンフリクトが生じる。このため、ベストプラクティスではインタフェースの構成管理の信頼性を高めることが重視された。手作業による固定設定とオートネゴシエーションを混在させるのではなく、いずれか一方を使用し、選択した方式を極めて厳格かつ一律に適用することが推奨された。つまり、一貫性が最も重要なポイントだとされたのである。
最近では、ベストプラクティスもやや複雑になってきた。ベンダー各社がハードウェアの信頼性を高めようと努力するのに伴い、時として新たな問題が生み出されるのだ。一例を挙げると、一部のNICチップセットはある有名ブランドのルータとの相性が悪く、両方のインタフェースがオートネゴシエーションに設定されていないとまったく機能しないのだ。このため、従来は手作業による固定設定を行ってきた企業も管理ポリシーの変更を余儀なくされた。また、多くのギガビットイーサネットNICは固定設定の1000Mbpsをサポートしないため、やはりオートネゴシエーションを使用せざるを得ない。
ベストプラクティスの最近のバージョンの1つに、LAN内部と境界部にオートネゴシエーションを適用し、中核部分で手作業による固定設定を採用するというアプローチがある。この方式はほとんどのエンタープライズネットワークでうまくいくようであり、管理、拡張性、信頼性の最適なバランスを実現する。この方式を運用するには、よく訓練されたサポートスタッフが適切な診断ツール/手順を利用できる体制が整っていることが望ましい。もちろんその場合でも、一貫性、厳格さ、ネットワークの健全性が最大のポイントであることに変わりはない――これらは優れたネットワークエンジニアリングの品質証明印なのである。
本稿筆者のロキ・ジョーゲンソン博士はアパレントネットワークスのチーフサイエンティストで、18年以上にわたりコンピュータ、物理学、数学、科学の視覚化、シミュレーションなどの分野で活躍してきた。クイーンズ大学とマギル大学で計算物理学を専攻。哲学、グラフィックス、教育技術、統計力学、論理学、数論など広範な分野で著作がある。また同氏は、サイモンフレーザー大学で数学の非常勤教授を務めるとともに、同大学でCenter for Experimental and Constructive Mathematics(CECM)を共同設立した。民間部門のパートナーおよび政府機関との緊密な連携の下、ハイパフォーマンスコンピューティングやデジタルパブリッシングなどに関する多数の学術プロジェクトで研究を指導した経験もある。アパレントネットワークスでは、ジョーゲンソン氏はハイパフォーマンス、ワイヤレス、VoIP、アプリケーションパフォーマンスなどに関連したネットワーク研究の責任者を務める。これらの研究の多くは、学術機関やBCネット、テキサスA&M、CANARIE、Internet2などの最先端研究組織との共同で進められている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社kickflow] 2社の事例に学ぶワークフロー改革:属人化解消や年数万件の申請書類削減のコツ -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
2
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
5
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
IT予算が10%増えたら何に使う? 著名企業のCIOが明かす「最優先の投資先」
-
8
AI活用か新たな脅威か OpenAI自律エージェントがRubyGemsを急襲
-
9
音声もFAXもメールで確認――ユニファイドメッセージの業務効果
-
10
機械学習について、正しく説明している文章はどれ?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー