IT部門は、社内標準を振りかざして厳密な「正しさ」を追求すべきではないが、かといって要求にやみくもに対応して混乱を招き、サービスレベルを低下させてしまってもいけない。
わたしは非IT分野のキャリアを経てIT責任者になった。社内では周知の事実だが、実はCEOがわたしにIT部門を任せたのは、わたしがITについて不平ばかり言うのでうんざりしていたからだ。実際、彼はわたしにこう言った。「そんなに批判するなら、自分でIT部門を運営したまえ」。それからわたしはIT業務に明け暮れることになった。その中にはソフトウェアとアーキテクチャの標準化が含まれる。
ITを担当する前、ソフトウェアとアーキテクチャの標準は、わたしにとって最大の不満の1つだった。ITスタッフがこうした標準を盾に取ってわたしの構想を阻止しているように見えたからだ。わたしには構想を進めるための技術やアプリケーションのアイデアがあったのに、ITスタッフが「標準」や「アーキテクチャ」にかかわる理由を挙げてアイデアを却下するということが何度も繰り返された。
ITの仕事に就いてからは、わたしはソフトウェアとアーキテクチャの標準を受け入れるようになった。これらは、システムやソフトウェアが陥りやすい複雑化を防ぐのに役立った。例えばマーケティング担当者が、ある強力なITツールの導入を要望してきたとき、わたしは社内標準を踏まえ、新しいデータベース、プログラミング言語、OSを採用することなく、その優れたソリューションを導入することができた。また、社内標準に準拠することで、Visual FoxProやAcademic Universeなど、一部の社員にだけ必要なツールを導入、サポートすることは考えずに済んだ。
だがある日、社内標準を徹底するという理由で、ITの適応性や使い勝手の向上を目指す試みに待ったを掛けようとしていたとき、わたしは、以前反発していたやり方を自分も踏襲してしまっていたことに気付いた。わたしも社内標準を口実に使っていたのだ。だが、どうすれば混乱を避けながら、社内ユーザーのニーズに広く対応できるのか。
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