クラウド、仮想化、モバイルの分野でGoogleやAmazonに大きく後れを取ったMicrosoft。だが、かつてWebブラウザ市場で派手な逆転劇を演じた同社は、いつもの戦術で反撃に出た。
米Microsoftのマーケティング部門がかつて、新しいソフトウェアの機能を表現するのに「goodness」(優秀性・美徳)といった巧みな言葉を駆使し、人々はそれを抵抗なく受け入れていたことを読者は覚えているだろうか。Microsoft主催のイベントでなくても、同社が新製品のデモを披露したときに会場に響き渡る「ウォー!」という感嘆の叫びは、少しカルトめいてさえいた。
Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが、同社の最新技術の売り込みに関して販売チームにげきを飛ばしている有名な動画も忘れられない。Microsoftの新OSの発表も、見逃すことのできない大きなイベントだった。こういった情熱は今、どこへ行ってしまったのだろうか。
米Google、米Apple、米Amazon──これらはSociety for Information Managementの最近のイベントで常連となったベンダーだ。至るところでクラウド、仮想化、モバイルが話題になっている。これらの分野でMicrosoftの技術が取り上げられることはあまり多くない。
あるCIO(最高情報責任者)によると、Microsoftのスマートフォンは電子メール機能では競合製品を圧倒しているが、それでも自分はAndroid端末を使っているという。いろいろなイベントに行っても、iPhoneやAndroid端末、iPadあるいはNetbookなどを持ち歩いている参加者がやたらと目に付く。
彼らに話を聞くと、ノートPCなどの従来型モバイルデバイスを、ハードウェアとOSの種類を問わないエンドユーザー志向の端末でリプレースすることも検討しているようだ。クラウドと仮想化は、ベンダー各社がハードウェアに依存しないプラットフォームを開発することを可能にしている。ユーザーに好きな端末を購入してもらい、OSも自由に選んでもらえばいいというわけだ。恐らくそのOSはWindowsではなさそうだ。
MicrosoftがOSライセンス、社内保有型ソフトウェア、PCを柱とした従来の戦略を転換できるかどうか疑問視する人もいる。逆に、クラウド分野を中心としたMicrosoftの取り組みや、境界のないコミュニティーを作成する同社の能力を高く評価する声もある。
Microsoftは最近、Google Appsに直接狙いを定めた「Microsoft Office 365」を発表するなど、クラウド分野で反撃を開始した。一方、競合各社は、Google Docsの新機能などに見られるように、自社製品をさらにMicrosoft技術に似通ったものにしようとしている。
Microsoftのこういった取り組みの一環として、Windowsのビジョナリー、マーク・ルシノビッチ氏が2010年、Azureチームに異動した。
しかしMicrosoftのビジョナリーの1人がクラウドチームに参加する一方で、もう1人のビジョナリーであるレイ・オジー氏が同チームを去った。オジー氏はLotus Notesの開発者であり、米Groove Networksの創業者でもある。Groove Networksは、いつでもどこでも利用できる“仮想”コラボレーションソフトウェアを時代に先駆けて開発した企業だ。
Microsoftはこれまでも競争に出遅れながらも、派手な逆転劇を演じたことがある──米Netscapeはどこに行ったのだろうか。仮想化とクラウドの分野でもMicrosoftは新技術の投入が遅れたことで、他社に大きなリードを許した。しかし今回も同社はいつもの戦術で追い付いた。ハイパーバイザーを無償で提供するとともに、企業に既に導入され、熱心なMicrosoft系IT部門によって管理されているソフトウェアに仮想化技術をバンドルしたのだ。
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