BYODを導入するとWi-Fiに接続する端末が増大し、既存の無線LAN帯域を圧迫することになる。既にこの問題に直面している米国企業もある。
これまで企業は自社で使われるモバイル端末について、1ユーザー1台と想定して備えることができた。だが、BYOD(私物端末の業務利用)を導入すると、各従業員が複数の端末を使うようになり、無線ネットワークインフラに大きな負担が掛かる。
BYOD時代には、企業無線ネットワークのスケーラビリティは、50台の端末に対応できるレベルではもう不十分だと、WAN最適化を手掛ける米Circadenceのロブ・ショーネシーCTO(最高技術責任者)は語った。
「無線ネットワークの整備が端末の増加に追い付いていない。エンドポイントが数千というケースも見られる」とショーネシー氏。「われわれのアジアのある顧客の場合、50万ものエンドポイントがある。これだけのエンドポイントをカバーするのがいかに大変か、想像できるだろうか」
IT担当者は、無線ネットワーク帯域のパフォーマンス問題に直面しており、その一因は、1つのWi-Fi接続でサポートできる端末が15〜20台に限られ、端末がそれより多いと、接続の信号強度が大幅に低下してしまうことにあると、Wi-Fi技術企業の米Xirrusのシニアテクノロジスト、ペリー・コレル氏は指摘した。
「30人で1つの接続を共有すると、各端末の通信速度は1Mbpsになってしまう。これは劣悪な環境だ」(コレル氏)
接続を追加できるモジュール型の企業無線ネットワークを構築することが、企業がネットワークの陳腐化を防ぐための最も簡単な方策の1つだと、コレル氏は語った。現在はBYODプログラムをサポートしていない企業も、タブレットやスマートフォンが既に企業ネットワークで使われるようになっていることを認識しなければならない。IT部門は、こうした端末の増加を見越した計画を立てる必要がある。
実際、米Gartnerの最近の調査報告によると、最近導入された企業無線ネットワークの80%は、インフラ計画の不備のせいで2015年までに陳腐化する見通しだという。同報告は、企業が将来にわたってBYOD時代以前と同様のインターネットパフォーマンスを確保するには、モバイル端末の幅広い普及に対応し、無線アクセスポイントを300%増やさなければならないだろうと指摘している。
プロジェクター、スキャナ、プリンタといったWi-Fi対応機器も、企業がそれらを考慮した計画を策定しなければ、同様のネットワークの問題を引き起こす恐れがある。
ネットワーキングソリューションを提供する米Emulexも、無線ネットワーク帯域の問題にぶつかった企業の1つだ。そのために同社は、大幅に遅れていたWi-Fiインフラの更新に優先的に取り組まなければならなくなった。
カリフォルニア州コスタメサにあるEmulexの本社は3つのビルから成り、従業員はITを使いこなしている。国外拠点とSkypeで頻繁にやりとりしており、構内でビル間を移動しながら個人の端末でWi-Fiを利用している。これらのことは帯域の大量消費につながっている。
「BYODはわれわれのネットワークを圧迫している」と、Emulexのデビッド・ゴフCTOは語った。「このため、われわれは先手を打って対応していかなければならない」
Emulexは無線ネットワークの帯域、アクセスポイント、カバーエリアを増やした。また、社内無線ネットワークとゲストネットワークという2つのWi-Fiネットワークを提供するアプローチを採用した。
ゲストネットワークはパスワードで保護されており、同社の機密データをファイアウォールの背後に配置している。社内無線ネットワークは、主に従業員が個人所有端末を接続して使うことが想定されており、Emulexのセキュリティプロトコルに準拠したモバイル端末でのみアクセスできる。
さらに、EmulexはWi-Fiネットワークをアップグレードして802.11n規格に対応させ、将来に向けて安定した基盤を築いた。
IT部門がBYODに伴うネットワークの問題に対処するには、帯域を増やすだけではいけない。従業員のWi-Fi利用がネットワークの安定性とセキュリティに与える影響を考慮し、それらの観点からBYODを適切に進めるための方策を策定する必要もあると、ネットワークアクセス制御ソリューションを提供する米Bradford Networksのフランク・アンドラスCTOは語った。
「誰かのiPhoneがネットワーク上にある状態を本当に良しとするのかどうかを考えなくてはならない」と同氏。「多くの端末がネットワークに接続すれば、キャパシティーの問題が発生する恐れもある。企業は、どの端末が日常業務に本当に必要なのかを検討する必要がある」
その検討結果を生かすには、ネットワークアクセス制御を行うとよい。これは、業務に基づいて定義されたポリシーや、ロールベースのポリシーによって、端末から企業ネットワークへのアクセスを制限するセキュリティ手法だ。
「ユーザーがどのような資産にアクセスできるか、それらの資産にアクセスして何をしているかを完全に可視化することが理想だ」と、VPNソリューションプロバイダーの米NCP Engineeringのレーニア・エンダーズCTOは語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ハロウィーンの口コミ数はエイプリルフールやバレンタインを超える マーケ視点で押さえておくべきことは?
ホットリンクは、SNSの投稿データから、ハロウィーンに関する口コミを調査した。
なぜ料理の失敗写真がパッケージに? クノールが展開する「ジレニアル世代」向けキャンペーンの真意
調味料ブランドのKnorr(クノール)は季節限定のホリデーマーケティングキャンペーン「#E...
業界トップランナーが語る「イベントDX」 リアルもオンラインも、もっと変われる
コロナ禍を経て、イベントの在り方は大きく変わった。データを駆使してイベントの体験価...