基幹業務のクラウドサービスに不満を持つ中堅・中小企業。その理由はクラウドサービスが運用管理コスト削減以外の価値を提供できていないからだ。ノークリサーチのアナリストが解説する。
ノークリサーチが9月に公表した中堅・中小企業の基幹業務におけるクラウドサービスの活用実態調査報告によると、基幹業務について約8割の回答者が「クラウドサービス」を活用しないと答えている。またクラウドサービス別の導入率でも最大で3.5%にとどまるなど、極めて低調な結果となった。ユーザー全体のクラウドコンピューティングへの関心は依然として高く、ベンダーによるサービス提供も相次いでいる(参考:クラウドERP製品カタログ)。中堅・中小企業はなぜクラウド基幹アプリに関心を持たないのか。調査を担当したノークリサーチのシニアアナリスト 岩上由高氏は「クラウドが持っているメリットをベンダーが十分に提供できていない」と指摘する。
ノークリサーチの調査は2012年6月に実施。年商500億円未満の中堅・中小企業、1000社が答えた。会計や人事/給与、販売/購買、生産、帳票、ビジネスインテリジェンスなど企業の基幹業務についてクラウドサービスの活用を聞いた。調査結果によると、回答者のうち79%は「基幹業務の分野ではクラウドを活用しない」と答えている。約8割に上る回答で、「基幹業務におけるクラウドサービス活用はまだそれほど進んでいない状況があらためて確認できる」(岩上氏)。会計や人事/給与など基幹業務の中でも各社の共通性が高い業務については、クラウドサービスへの移行が容易と考えられてきた。しかし、実際エンドユーザーはまだまだ慎重だ。
調査ではクラウドサービス別の導入率も聞いている。トップはNECなどが提供する「基幹業務SaaS by 奉行iシリーズ」と、富士通の「SAP BusinessObjects BI OnDemand」で、それぞれ3.5%。その他のサービスは2.0%以下で、利用が進んでいるとはいえない状況だ。「基幹業務のクラウドサービス全体として実態は横並びになっている」(岩上氏)
ではなぜ基幹業務のクラウドサービスは受け入れられていないのか。調査結果によると、基幹系クラウドサービスの利用者、または利用予定者の19.0%は、同サービスの課題として「運用管理の人的作業負担が減らない」を挙げている。また17.6%は「十分なコスト削減効果が得られない」、17.1%が「利用中のアプリケーションを変えたくない」と回答。さらに4位には「クラウド移行を主導する社内人材がいない」が入っていて、岩上氏は「既存アプリケーションを維持することで影響を最小限に抑えつつ、クラウド移行をすることによってコスト削減効果を得たいというのがユーザーのニーズだが、それを主導する社内人材がおらず、期待した効果も得ることができていない」と指摘する。
このような課題が生まれる背景には、「個別カスタマイズが発生する基幹業務はSaaSの適用が難しい。そこでIaaSによってOSより下のインフラコストを削減するという取り組みが生まれる。しかし、現在提供されている基幹業務のクラウドサービスの中には、実質的にパッケージのアウトソースであるものも少なくない」という理由がある。実際、現在提供されている基幹業務のクラウドサービスの多くは単に基幹業務アプリケーションの運用管理をアウトソーシングするだけのサービスだ。ライセンスは従来同様にユーザー側が所有。リソースは他のユーザーと共有されておらず、ユーザーの増加や負荷の状況に合わせた迅速なリソースの拡張も難しい。また、課金モデルも従来のパッケージ製品をベースにしているケースが多い。
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