柔軟でカスタマイズ可能なOSSクラウドプラットフォームは、クラウド環境を構築したい利用者にとって魅力的な選択肢だ。その上、AWSとの相互運用性を売りにすれば、さらに支持される可能性がある。
OpenStack、CloudStack、Eucalyptusなどのオープンソースソフトウェア(OSS)のクラウドプラットフォームを使ってクラウドサービスを構築することは、柔軟でカスタマイズ可能なクラウド環境が求められる市場にいる利用者にとって魅力的な選択肢の1つだ。
OSSのクラウドプロジェクトは、プロプライエタリなAmazon Web Services(AWS)に代わるクラウドプラットフォームとしてそれぞれが売り込みを図っているが、CloudStackとEucalyptusは、AWSのAPIと互換性を高めている。
利用者の中には、OSSのクラウドプロジェクトという考え方に抵抗があり、AWSなどの閉じたクラウド環境を例外として採用する純粋主義者もいる。実際、多くのクラウド利用者がAWSを支持している。
ただし、OSSのクラウドプラットフォームは、AWSとの相互運用性を売りにすれば、新規顧客を引き付けられる可能性がある。米Forrester Researchのインフラストラクチャ&オペレーション担当アナリスト、ローレン・ネルソン氏は、「強い人気を誇るAmazon EC2と統合できるクラウドプラットフォームは、(OSSのクラウドプラットフォームの)採用を促進する大きな力になるだろう」と話す。
Eucalyptusは、Amazon EC2 APIの登場以来、このAPIと同じAPIを提供している。CloudStackもAmazon EC2と互換性のあるAPIを提供しており、最近では、米クラウドプロバイダーのBasho Technologiesが提供するOSSの分散データベース製品「Riak CS」を利用して、Amazon S3 APIと同じAPIを提供することを発表している。
OpenStack(米NASAおよび米Rackspaceが開発したプロジェクト)の場合、AWSのAPIをコピーしてもAWSのサービスや機能が完全に再現されるわけではないという理由からAWSと同じAPIを提供しないことを決め、CloudStackとEucalyptusとは一線を画している。
Rackspaceは、プロプライエタリのクラウドプラットフォームに代わる「オープンな」プラットフォームが次の段階に進むクラウド利用者には必要だとも述べている。だが、米コンサルティング会社CIMIのトム・ノレ氏は、OpenStackはAWSとの差別化に固執し過ぎている可能性を指摘する。「(プロバイダーまたはOSSクラウドプロジェクトが犯す)最大の過ちは、AWSを競争で勝つべき相手に仕立てることだ」とノレ氏は話す。AWSを取り込むことが、「OSSのクラウドプラットフォームにとっては大きなチャンスになり得る」とノレ氏は見ている。
米クラウドストレージプロバイダー、TwinStrataのCEO、ニコス・ヴェキアリデス氏は、「現在、特にストレージ関連では、さまざまなクラウドAPIが使用されているが、CloudStackのようなOSSのクラウドプラットフォームがAmazon S3 APIを採用するのは理にかなっている。Amazon S3 APIは広く採用されているからだ。利用者は、新しいクラウドAPIを必ずしも望んではおらず、APIの標準化が進むことを望んでいる。既に広く使われている既存のAPIは、標準として妥当な選択肢だ」と話す。
OSSプロジェクトを好むと好まざるとに関わらず、現在もAWSはクラウド市場で大きなシェアを占めている。AWSはプロプライエタリなプラットフォームやサービスを提供していることで知られているが、AWSとの相互運用性を排除すれば、OSSのクラウドプロジェクトは孤立する可能性がある。
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