ストレージI/Oの仮想化手法の1つである「仮想I/Oゲートウェイ」は、複数のサーバ間で単一のインタフェースカードを共有でき、接続性やリソースの最適化、将来的なアップグレードの影響を受けないなどのメリットがある。
仮想サーバと仮想デスクトップが普及したことで、ストレージへのI/O要求がさらに高まった。その解決策として「仮想I/O」に注目が集まっている。前回の「インフラ全体で仮想I/O管理を共通化できる『スイッチによるI/O仮想化』」に続き、ストレージI/Oの仮想化を実現する方法を解説する。
英Virtensys(米Micron Technologyによる買収作業が進行中)や米Xsigo Systemsなどの企業が提供している仮想I/Oゲートウェイは、ストレージとネットワークインタフェースカード(NIC)を組み込み、共有リソースとしてネットワークに接続される「スイッチ的アプライアンス」と見なすことができる。データセンターで仮想I/Oゲートウェイを使用した場合、サーバ通信用の専用ファブリックを導入しているのと同じことになる。仮想I/Oゲートウェイは、PCIe(PCI Express)型コネクションをサーバからI/Oゲートウェイにまで延長した拡張型バスアーキテクチャの一種と見なすこともできる。ただし、バスが複数のホストで共有されるという点は異なる。
I/Oゲートウェイに接続されるサーバにはカードを装着する。これはPCIe拡張カードの場合もあるが、一部のベンダーではInfiniBandアダプターや10ギガビットイーサネット(GbE)アダプターを採用している。その目的は、比較的低コストで高いパフォーマンスを提供するアダプターをサーバに組み込むことによって、PCIバスを拡張することにある。
仮想I/Oゲートウェイとネットワークアダプター上の仮想I/Oとの最大の違いは、「仮想I/Oゲートウェイが1個のインタフェースカードを複数のサーバ間で共有できる」点にある。これは、接続性とリソースの最適化という面で大きなアドバンテージとなる。
I/Oゲートウェイに装着するカードとしては、専用カードを採用しているベンダーもあれば、市販のPCIeカードを採用しているベンダーもある。専用カードは一般に、複数ホストを共有する機能が優れている。市販のPCIeカードを使用するゲートウェイは柔軟性が高そうだが、PCIeカードの共有機能の制約を受ける。現在出回っているカードでは、この機能に制限がある。
仮想I/Oゲートウェイには、将来的なアップグレードの影響を受けないというメリットがある。
I/Oゲートウェイベンダーが提供するカードあるいはソフトウェアドライバは、全てのサーバに共通する最大公約数的な要件に対応するため、異なるネットワーク/ストレージプロトコルや異なる技術環境の間で移行するのが非常に容易だ。
例えば、現在のストレージシステムがファイバーチャネル(FC)でサーバに接続されており、新しいiSCSIシステムでは、これらのサーバのFCインタフェースカードをイーサネットNICに交換するか、イーサネットNICを追加する必要があるとする(前述の仮想I/Oアダプターを使用しているサーバの場合は例外)。仮想I/Oゲートウェイ型の構成であれば、サーバに装着したI/Oゲートウェイカードはそのままにして、共有するiSCSIカードをゲートウェイに組み込めばよい。これにより、サーバに装着した1個のカードで両方の機能を実行できる。サーバで変更する必要があるのはソフトウェアの設定だけであり、各サーバのインタフェースカードを変更する必要はない。これは、ネットワークのタイプやプロトコルを変更するための柔軟性を提供するのみならず、変更を行う際のサーバのダウンタイムの減少にもつながる。
どの仮想I/O方式が自社のデータセンターに適しているのかという判断の基準となるのは、当面のニーズならびに長期的な目標だ。例えば、主要な関心事がホストレイヤーでのストレージネットワークのI/Oパフォーマンスの改善であるとしたら、ベーシックな10GbE NICではなく、ネットワークインタフェースレベルでのI/O仮想化が可能なカードを購入するのが賢明だ。そうすれば、10Gbpsの帯域を効率的に利用でき、特定のミッションクリティカルなワークロードに一定のサービスレベルを保証することができる。
ネットワークやストレージのインフラを更新中あるいは拡張中の企業の場合は、I/Oの仮想化を認識するコンポーネントを追加するという方法を真剣に検討すべきだ。スイッチレイヤーでの仮想I/Oは段階的なアップグレードとして位置付け、将来的にI/Oネットワークインタフェースカードを実装する際に導入すればよい。
既存インフラの刷新、パフォーマンスの改善、柔軟性の向上に取り組んでいる企業であれば、仮想I/Oゲートウェイ(専用I/Oファブリック)も真剣な検討に値する。これらの製品は、絶えず変化するI/O市場で“将来に対する保証”を提供してくれる。
どの方式を選ぶにせよ、仮想I/Oはサーバインフラの要求に対応できる優れた柔軟性と動的な環境を実現する。また、これら3つの方式はいずれも、I/O投資で優れた効果をもたらすとともに、ミッションクリティカルなアプリケーションにパフォーマンスを保証する。これはサーバ仮想化プロジェクトの投資効果の拡大にもつながるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。
カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。
メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。
ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。
長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。
クラウド全盛期になぜ「テープ」が再注目? データ管理の最前線を探る (2025/4/24)
データの多様化と肥大化が加速 ファイルサーバ運用は限界? 見直しのポイント (2025/4/8)
Hyper-Vは「次の仮想化基盤」になり得るのか 有識者の本音を聞く (2025/3/14)
「生成AI」の自社運用に“ちょうどよいサーバ”の賢い選び方 (2025/3/12)
クラウドストレージは便利だけど検索性が課題? 東急建設の解決策は (2025/2/25)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...