多ストレージプロトコル間の接続が容易な「仮想I/Oゲートウェイ」「ストレージI/Oの仮想化」用語集(後)

ストレージI/Oの仮想化手法の1つである「仮想I/Oゲートウェイ」は、複数のサーバ間で単一のインタフェースカードを共有でき、接続性やリソースの最適化、将来的なアップグレードの影響を受けないなどのメリットがある。

2012年11月22日 08時00分 公開
[George Crump,TechTarget]

 仮想サーバ仮想デスクトップが普及したことで、ストレージへのI/O要求がさらに高まった。その解決策として「仮想I/O」に注目が集まっている。前回の「インフラ全体で仮想I/O管理を共通化できる『スイッチによるI/O仮想化』」に続き、ストレージI/Oの仮想化を実現する方法を解説する。

仮想I/Oゲートウェイ

 英Virtensys(米Micron Technologyによる買収作業が進行中)や米Xsigo Systemsなどの企業が提供している仮想I/Oゲートウェイは、ストレージとネットワークインタフェースカード(NIC)を組み込み、共有リソースとしてネットワークに接続される「スイッチ的アプライアンス」と見なすことができる。データセンターで仮想I/Oゲートウェイを使用した場合、サーバ通信用の専用ファブリックを導入しているのと同じことになる。仮想I/Oゲートウェイは、PCIe(PCI Express)型コネクションをサーバからI/Oゲートウェイにまで延長した拡張型バスアーキテクチャの一種と見なすこともできる。ただし、バスが複数のホストで共有されるという点は異なる。

 I/Oゲートウェイに接続されるサーバにはカードを装着する。これはPCIe拡張カードの場合もあるが、一部のベンダーではInfiniBandアダプターや10ギガビットイーサネット(GbE)アダプターを採用している。その目的は、比較的低コストで高いパフォーマンスを提供するアダプターをサーバに組み込むことによって、PCIバスを拡張することにある。

 仮想I/Oゲートウェイとネットワークアダプター上の仮想I/Oとの最大の違いは、「仮想I/Oゲートウェイが1個のインタフェースカードを複数のサーバ間で共有できる」点にある。これは、接続性とリソースの最適化という面で大きなアドバンテージとなる。

 I/Oゲートウェイに装着するカードとしては、専用カードを採用しているベンダーもあれば、市販のPCIeカードを採用しているベンダーもある。専用カードは一般に、複数ホストを共有する機能が優れている。市販のPCIeカードを使用するゲートウェイは柔軟性が高そうだが、PCIeカードの共有機能の制約を受ける。現在出回っているカードでは、この機能に制限がある。

 仮想I/Oゲートウェイには、将来的なアップグレードの影響を受けないというメリットがある。

 I/Oゲートウェイベンダーが提供するカードあるいはソフトウェアドライバは、全てのサーバに共通する最大公約数的な要件に対応するため、異なるネットワーク/ストレージプロトコルや異なる技術環境の間で移行するのが非常に容易だ。

 例えば、現在のストレージシステムがファイバーチャネル(FC)でサーバに接続されており、新しいiSCSIシステムでは、これらのサーバのFCインタフェースカードをイーサネットNICに交換するか、イーサネットNICを追加する必要があるとする(前述の仮想I/Oアダプターを使用しているサーバの場合は例外)。仮想I/Oゲートウェイ型の構成であれば、サーバに装着したI/Oゲートウェイカードはそのままにして、共有するiSCSIカードをゲートウェイに組み込めばよい。これにより、サーバに装着した1個のカードで両方の機能を実行できる。サーバで変更する必要があるのはソフトウェアの設定だけであり、各サーバのインタフェースカードを変更する必要はない。これは、ネットワークのタイプやプロトコルを変更するための柔軟性を提供するのみならず、変更を行う際のサーバのダウンタイムの減少にもつながる。

仮想I/Oの選択基準

 どの仮想I/O方式が自社のデータセンターに適しているのかという判断の基準となるのは、当面のニーズならびに長期的な目標だ。例えば、主要な関心事がホストレイヤーでのストレージネットワークのI/Oパフォーマンスの改善であるとしたら、ベーシックな10GbE NICではなく、ネットワークインタフェースレベルでのI/O仮想化が可能なカードを購入するのが賢明だ。そうすれば、10Gbpsの帯域を効率的に利用でき、特定のミッションクリティカルなワークロードに一定のサービスレベルを保証することができる。

 ネットワークやストレージのインフラを更新中あるいは拡張中の企業の場合は、I/Oの仮想化を認識するコンポーネントを追加するという方法を真剣に検討すべきだ。スイッチレイヤーでの仮想I/Oは段階的なアップグレードとして位置付け、将来的にI/Oネットワークインタフェースカードを実装する際に導入すればよい。

 既存インフラの刷新、パフォーマンスの改善、柔軟性の向上に取り組んでいる企業であれば、仮想I/Oゲートウェイ(専用I/Oファブリック)も真剣な検討に値する。これらの製品は、絶えず変化するI/O市場で“将来に対する保証”を提供してくれる。

 どの方式を選ぶにせよ、仮想I/Oはサーバインフラの要求に対応できる優れた柔軟性と動的な環境を実現する。また、これら3つの方式はいずれも、I/O投資で優れた効果をもたらすとともに、ミッションクリティカルなアプリケーションにパフォーマンスを保証する。これはサーバ仮想化プロジェクトの投資効果の拡大にもつながるはずだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia マーケティング新着記事

news083.jpg

FacebookやXなど主要SNSで進む「外部リンク制限」の実態 唯一の例外は?
ソーシャルメディアはかつてWebサイトへの重要な流入経路であった。しかし、最近は各プラ...

news079.jpg

生成AIとAR/VRで失った個性を取り戻す――2025年のSNS大予測(Instagram編)
万能だが特徴のはっきりしない「何でも屋」と化したInstagram。2025年の進化の方向性を予...

news128.jpg

「AIネイティブ世代」の誕生 10代のAI活用度合いは?
博報堂DYホールディングスのHuman-Centered AI Instituteは、AIに対する現状の生活者意識...