40GbE規格に対応したハードウェアが登場しているものの、企業導入は進んでいない。この規格が広く普及するには、何が必要なのか。ネットワーク高速化に取り組んだDisneyの元技術担当役員はこう分析する。
IEEE(米国電気電子技術者協会)が40ギガビットイーサネット(GbE)の規格を承認したのはかなり前のことであり、対応製品も出荷されている。しかし今のところ、40GbEは普及に弾みがついていない。
データセンターでサーバやストレージの仮想化が進むとともに、高速なネットワーク接続の必要性が高まっている。しかし、10GbEから40GbEへの移行は緩やかなペースにとどまっている。IT部門は現状維持に傾き、ネットワーク接続のアップグレードには腰が重い(関連記事:帯域幅のアップグレードに温度差があるファイバーチャネルとイーサネット)。
原因は幾つかある。「高速イーサネットスイッチが設置される既存ネットワークインフラにおけるボトルネックの存在」「主にサーバで使われている10GbEの導入に時間がかかっている」「銅線ギガビットネットワーク接続が主流を占めている」などだ。
40GbE規格は1年以上前から存在しており、40Gbpsの伝送速度を実現するルータ、スイッチ、ネットワークカードが既に多数出回っている。米Cisco、米DellのForce10部門、米Mellanox、米Hewlett-Packard(HP)、米Extreme Networks、英Gnodal、米Brocadeなどのベンダーが対応製品を提供している。
40GbEのポート単価は一般的に2500ドル程度で、1GbEのポート単価の約500倍となっている。例えば、高さ2Uで72ポートの40GbEスイッチである「Gnodal GS0072」は、18万ドルで販売されている。
調査会社の米Gartnerは、「ネットワークインタフェース全体のうち、10Gbpsで動作しているものの割合は5分の1にとどまり、40Gbpsで動作しているものは1%にすぎない」と推計している。ただ、数年後には40Gbpsの割合が2倍に増える可能性があるという。
しかし、40GbEには「ポートへの配線」という最大の問題がある。イーサネットの従来のバージョンでは、一般的なカテゴリー6(CAT6)の銅ケーブルとRJ45コネクタが利用できた。これらは長年にわたり使われており、簡単に展開できる。しかし、40GbEではそうはいかない。
「私は、40GbEネットワークを運用している企業を知らない」と、米Current Analysisのアナリスト、マイク・フラット氏は語る。「ほとんどの場合、人々がこの技術の導入に二の足を踏んでいる理由は、新しいケーブルが必要であり、ケーブルをアップグレードする簡単な方法がないからだ」
40GbEでは、QSFP(Quad Small Form Factor Pluggable)ケーブルが使われる。このケーブルは、各チャネルで12本の光ファイバーを使用する高密度ファイバー接続を実現する。だが、各チャネルで2本の光ファイバーを使用する一般的なファイバー接続とは異なり、電気技術者が設置場所でQSFPコネクタを取り付けることができない。データセンター管理者がケーブルの長さを前もって割り出し、カスタムケーブルを発注する必要がある。ケーブルは、コネクタを取り付けた状態で製造される。
幾つかの40GbEネットワークを納入したことがある米Teracaiのソリューションアーキテクチャマネジャーを務めるケビン・クック氏は、「12本の光ファイバーを手動で束ねるのでは、電気的および機械的な許容誤差を満たせない」と語る。
また、「40GbEプロジェクトでは、管理方法が根本的に変わる。光ファイバーケーブルをロールで大量に買い、必要に応じて切断し、終端するというわけにはいかない。つまり、既製の割高なケーブルを買うことになる。しかも、必要なケーブルの長さを前もって慎重に測っておかなければならない」という。普及を目前に控えていながら、40GbEの浸透にはまだしばらく時間がかかりそうだ。
ケーブルの問題とは別に、最新の優れた高速ネットワークを導入することで、ネットワーキングの担当チームとプロセスが混乱に見舞われる恐れもある。
「長期的に見れば、イーサネットネットワークの高速化が必要になるのは間違いない」と、独立系デジタルメディアの役員を務めるマイク・プサテリ氏は語った。同氏は米Walt Disneyの元技術担当役員だ。「しかし、それを成功させるのは容易なことではない。ネットワークを速くするために、ハードウェアの増強や高速化をどんどん進めることができればよいが、なかなかそうはいかない」
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