2013年7月10日にXenDesktopの新しいバージョン「Citrix XenDesktop 7」が提供開始された。画面転送速度の向上や、VDIでは初めて成功したGPUの仮想化機能など、モバイルを意識した数々の強化が施されている。その一部を紹介しよう。
2013年7月10日、シトリックス・システムズ・ジャパンがデスクトップ仮想化ソフトウェアの新しいバージョン「Citrix XenDesktop 7」を提供開始した。XenDesktopは現在、最も導入されているデスクトップ仮想化ソフトウェアだ(参考:デスクトップ仮想化に関する読者調査結果リポート(2012年9月))。本稿では、2012年7月10日に実施されたイベント「シトリックス4都市キャラバン東京 加速するモバイルワークスタイル」の内容を基に、XenDesktop 7のアップデート情報をお伝えする。
XenDesktop 7は、モバイルワークスタイルやクラウド基盤で動くことを意識したテクノロジーとして数々の機能強化がなされている。そのキーワードは「モバイル」「シンプル」「スケーラブル」だ。
3G/4G回線での利用を想定して、画面転送を高速化した。従来もH.264ベースの圧縮技術を実装していたが、今回は独自のチューニングを施し、さらに高度な圧縮技術を実装したという。これによって、扱えるフレームレートが2倍に増え、使用帯域を2分の1に圧縮。サーバ当たりのユーザー収容率は80%増加したという。コストメリットを出しつつ利便性の高い環境をモバイルワーカーに提供することが狙いだ。
従来の指でのタッチ操作(スクロールやページ遷移)に加えて、今回、バーチャルマウスと呼ばれる疑似的なマウスによるポインティングデバイスを実現した。細かい操作を指よりも簡単にできるようになった。
XenDesktop 5.6とともに2012年から「Mobile SDK for Windows Apps」と呼ばれる無償の開発キットを提供。モバイルデバイスのユーザーエクスペリエンスを向上させたり、モバイルデバイスのネイティブ機能(カメラ、テキストメッセージ、GPSなど)をWindowsアプリケーションに取り込めるようサンプルコードやライブラリを配布したりしている。今回、このSDKのバージョンが2.0になり、音声や動画のサポートを追加。より幅広いアプリケーションをサポートする。
XenDesktop 7の大きな変化として、仕組みをシンプルにしたことやアーキテクチャの変更によって、クラウド基盤に統合しやすくなった点がある。
これまでXenDesktop、「Citrix XenApp」は実行環境をそれぞれ構築し、別々のインフラで管理されていた。XenDesktop 7では、XenDesktopとXenAppをFlexCast Management Architecture(FMA)に統合することで、1つのコネクションブローカーから全てのWindowsデスクトップ/アプリケーションのワークロードへ指示を送る、セッション管理の一元化を可能にした。XenDesktop、XenAppの導入や運用管理コストの削減が期待できるだろう。
FlexCast Management Architectureによってインフラを統合したことで、多数存在した管理コンソールを2つにした。1つは、設計、導入、展開で使う「Studio」だ。デスクトップのマシンカタログを作る際には、Studioのウィザード形式で6〜7ステップで完了するという。もう1つは、運用フェーズでリアルタイムに状況を監視し、過去のデータを参照しながら適切な対処をする「Director」だ。こちらはWebブラウザベースで作られている。不具合やエラーはダッシュボード上で色分けして表示することで、高い視認性を確保。運用管理の効率化が期待できる。
EdgeSightは、XenDesktopやXenAppシステムのパフォーマンスをリアルタイムで監視し、分析するサービスだ。従来はPlatinumエディションで提供され、XenDesktopやXenAppとは別のシステムとしてサーバを用意し、コンポーネントをインストールする必要があった。しかし今回からは、Directorコンソールにビルトインされ、全てのエディションで利用可能になる。ただし、過去のデータを参照しながらのリポーティングなど、より高度な使い方をする際には、Platinumエディションが必要だ。
Platinumエディションでは、EdgeSightのコンソールにHDX Insightという新しい機能を実装している。NetScalerアプライアンスを追加購入することで、ネットワークトラフィックを監視対象に加えることが可能になる。システム全体の状況を監視・モニタリングしながら、トラブルにも迅速に対処できるようになるという。
Platinumエディションには、OSの移行の際、アプリケーションの互換性検証を自動化するツール「Citrix AppDNA」も統合された。
HDXローカルアプリケーションは、ローカルアプリケーションを仮想セッションからシームレスに利用できる機能だ。Platinumエディションで利用できる。例えば、Windows 7の仮想デスクトップのスタートメニューに、ローカルにしか存在しないアプリケーションが表示され、それをクリックして利用できるというイメージだ。全てのアプリケーションが仮想環境に適しているわけではなく、ローカル環境で動かした方が合理的なアプリケーションもあるため対応したという。
米NVIDIAは2013年5月22日にCitrixとの共同開発によって、NVIDIAの仮想デスクトップ向けGPU技術「NVIDIA GRID vGPU」を発表。VDI(Virtual Desktop Infrastructure)上で初めてGPUを完全に仮想化することに成功した。これによって、3D CAD/CAMや医用画像など、OpenGLおよびDirectXベースのハイエンドグラフィックスをXenDesktop 7の仮想デスクトップ上で実行できるようになる。イベントでは、NVIDIA GRID vGPUとXenDesktop 7で、実際に医用画像や自動車の詳細設計を動かすデモが披露された。
XenDesktop 7は、Microsoftの最新プラットフォームに対応する。Windows Server 2012、Windows 8をサポートし、システム管理ではSystem Center 2012 Connectorがビルトインされたことで、物理/仮想インフラの一元管理が可能になる。
これまで単独で提供されていたXenAppの機能をAppエディションとしてXenDesktop 7に組み込む。Appエディションでは、Windowsアプリケーションの画面転送や、サーバOSのデスクトップ利用が可能。AppエディションでVDIの利用はできない。ただし、Enterprise、Platinumエディションでは、App、VDI両エディションを利用可能。従来のXenAppも引き続きサポートし、2013年7月10日には現行のXenApp 6.5でFeature Pack 2を提供開始した。
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