大事なデータは自分で守る
残念な理由で流行るかもしれないクラウドデータの“自前暗号化”
クラウドではセキュリティ対策として、自前の暗号持ち込み(Bring Your Own Encryption=BYOE)が大切だ。米Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・スタテン氏が解説する。
BYOE(Bring Your Own Encryption)は、クラウドサービスの顧客が自前の暗号化ソフトウェアを使って自社で暗号鍵を管理できるようにするクラウドコンピューティングのセキュリティモデルを指す。顧客はクラウドでホスティングするビジネスアプリケーションに加えて、自前の暗号化ソフトウェアの仮想化されたインスタンスを導入できる。ビジネスアプリケーションは、全データをその暗号化アプリケーションで処理するよう設定され、データは暗号文としてクラウドサービス事業者の物理データストアに書き出される仕組みだ。
本稿では現代の企業にとっての同モデルの重要性や、BYOEの導入に必要なスキル、このトレンドがピークを迎える時期について、米TechTargetのシニアライター、カレン・グラールが米調査会社Forrester Researchの専門家ジェームズ・スタテン氏に話を聞いた。
データの安全性において変わった前提条件
暗号化が今これほど大きな注目を集めている1つの理由は、われわれが当然と思ってきたことが当然ではなくなったためだ。すなわち、データはデータセンターに保存すれば安全で、たとえ政府であってもアクセスできないという考え方は通用しなくなった。現在は、政府は全てにアクセスできるというのが前提だ。検閲などのリスクを懸念する企業は、自らの運命を自分でコントロールする必要があり、そこでBYOEが重要になる。
企業がデータを暗号化するということは、暗号解除の鍵も持つということだ。もし政府がAT&Tに対し、顧客企業のデータの提供を求めたとしても、AT&Tは鍵を持っていないので、暗号化されたデータしか政府に提供できない。理論的には政府が別の手段で暗号を解除することも可能だが、そのままの状態ではAT&Tが顧客企業のセキュリティをかわすことはできない。
大企業にとってはデータをBYOEの候補とすることが最も利益にかなう。ただしBYOEの対象は、特別に神経を使っているデータであって、全てのデータでは決してない。そうでなければとてもやっていられない。
「包括的暗号化」か「トークン化」か
暗号化の処理方法は複数ある。全体を暗号化する包括的暗号化を導入する方法もあれば、データ構造を保つ暗号化も導入できる。また、「トークン化」と呼ばれる方法では、データの整合性を保ちながら、真の内容を覆い隠す。データの整合性は、データを消費し、さまざまなアプリケーションで扱うためにどうしても必要だ。
トークン化の好例として、フィールドレベルの暗号化が挙げられる。例えばデータセットの中に社会保障番号がある場合、社会保障番号を暗号化しても、そのデータを見た相手には依然として、社会保障番号のように見える。
仕組みは次の通りだ。社会保障番号の最初の3桁が“550”だとして、例えばそれを“301”に置き換える。暗号化技術を使えばこの301を実際の数字に戻すことができる。他のアプリケーションには一切影響を及ぼさないため、これは暗号化の仕組みとして非常に貴重だ。アプリケーションで特定のデータを特定の人物と結び付けるため、7桁の番号を見てそれが社会保障番号だと認識させる必要がある場合、社会保障番号そのものを明かす必要はなく、従って対象とする人物の身元も明かす必要はない。データを確実に保護すると同時に、使える状態にする優れた方法はたくさんある。
適材適所の暗号化で、大事なデータは自分で守る
スノーデン氏による米国家安全保障局(NSA)の情報暴露問題を受けて、暗号化は2014年のセキュリティ課題の筆頭に浮上するだろう。2014年には米国以外でも、政府が同じこと(情報収集)をしている実態が発覚すると予想する。そして「米国政府は悪い」が「わが国の政府も悪かった」に変化する。「米国のサービス事業者が信用できないことは分かっている。自分の国のサービス事業者なら信用できると思っていたが、こちらも信用できなくなった」という企業はますます増えるだろう。そこで自社のデータを守るためには安全な場所に逃げ込むのではなく、自分でそれを守った方がいい(と気付くだろう)。
このトレンドは2014年にピークを迎えるとわれわれは考える。極めて洗練された暗号技術であっても、暗号鍵の高度な管理ノウハウはまだ確立されていない。暗号鍵の管理があまり得意でない場合、自分が暗号化したデータが二度と読めなくなることもあり、非常に困ったことになる。全ての企業が鍵の管理能力を中核技能に据えているわけではない。こうした企業はすぐに、鍵をうまく管理する方法は何もかも暗号化することではなく、本当に必要な所でのみ行うことだと悟るだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社ラクス] どうすれば「変革を楽しむ組織」になれるのか? 事例に学ぶ、未来への一歩 -
製品レビュー
[デル・テクノロジーズ株式会社] 変化するサイバー脅威に備える、これからのストレージの選び方 -
事例
[サイボウズ株式会社] 受注約1.5倍と年間2万3000時間超の業務時間を削減、日機装に学ぶDX実践術 -
製品レビュー
[サイボウズ株式会社] 人材不足にどう挑む? ものづくり太郎が語る、製造現場でのAI活用成功の鍵 -
市場調査・トレンド
[グーグル・クラウド・ジャパン合同会社] 金融機関はAIエージェント導入でどう変わる? 7つの変化から19の事例まで解説
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
2
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
3
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
-
4
セキュリティ担当者“試練の1週間” 「PHP」脆弱性と認証局の失態が同時発生
-
5
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
6
SAPの負荷増に苦しむZeissが「リアルタイム分析」「安定運用」を両立させた道
-
7
「Kubernetesプラットフォーム」に関するアンケート
-
8
なぜ「Claude Code」拡張は消しても危ないのか? Cursorで不正版配信
-
9
なぜストレージ不足は長引くのか? 77%が「12〜18カ月続く」と予測
-
10
【基本情報技術者試験】データ消失リスクを防ぐ3つの「バックアップ手法」を比較
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
2
侵入から横展開まで27秒の脅威にどう立ち向かう? 防御のカギがEDRの理由
-
3
有識者が語る、中堅中小企業に求められる最新のサイバーセキュリティ対策とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
6
なぜAIは組織で定着しないのか? 全社展開を阻む「3つの壁」と突破のヒント
-
7
パスワードレスへの移行で失敗しないためには? 導入・運用上の注意点を解説
-
8
自社のセキュリティ対策は大丈夫? 自己診断リストで対策の優先順位が分かる
-
9
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー