ネットから消したい自分の情報、第1位は?EU「忘れられる権利」の影響を見る

欧州司法裁判所が判決を下したネットの「忘れられる権利」は広がるのか。この判決がもたらすインターネットへの影響を見る。

2014年07月29日 08時00分 公開
[Lauren Horwitz,TechTarget]

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 欧州司法裁判所(ECJ)では「忘れられる権利」を支持する判決が下された。この判決の確定後、米国民は米国でも同様の権利が認められるよう訴えている。だが、この権利は「言論の自由」の権利を侵害する恐れがある。

 この判決を受けて、米Googleには「不適切」「無意味」「無関係」と考えられる個人情報をWebサイトから削除する依頼が殺到した。

 「忘れられる権利」はデジタル時代の重要課題となっている。偽の情報または古い情報を持つWebの架空の人格が個人と結び付けられる可能性がある。つまり、このような人物像に一生付きまとわれる可能性があるのだ。この判決は欧州連合(EU)にのみ適用される。だが、最新の調査によると、米国でも同様の法整備を求める強い動きがあるという。

ネットから消したい情報、第1位は

 インターネット市場調査会社の英YouGovは、2014年5月に1104人を対象に調査を実施した。この調査から、さまざまなWebコンテンツに対する懸念が明らかになった。42%の回答者はWebから自身の情報を削除することを望んでいる。最も多く懸念されていたのは財務情報だった(35%)。また、多くの回答者がかつてのパートナーや友人とのつながり(29%)、そのつながりを利用した悪意のあるコンテンツ(28%)、恥ずかしい画像へのリンク付け(28%)を懸念している。

 多くの回答者は、「忘れられる権利」が本質的にプライバシーの権利と関係があると考えている。EUと同様の法律が米国で制定された場合に、言論の自由の権利が侵害される恐れがあると考えているのは、わずか17%だった。だが、35%の回答者がインターネットでの検閲や不正行為を助長する可能性があることを危惧している。

 先日、英University of Oxford(オックスフォード大学)の教授が、この判決がもたらすとされるメリットに疑問を投げ掛けた。Webでの情報交換にはオープンにやりとりされる性質があるからだ。

 オックスフォード大学で情報哲学と倫理学の教授を務めるルチアーノ・フロリディ氏は次のように述べる。「この判決によって、インターネットに関する既存の慣例はもはや通用しなくなる可能性がある」。また、このような慣例の変化は、オープンなWebの性質と全く相いれないものだと主張する者もいる。

 このような法律に従ってインターネットに秩序がもたらされ、適切に統治された状態が実現したとしても、情報削除のメカニズムについては根本的な疑問がある。それは「情報を削除する責任はどこにあるのか」「この方法は“透明かつ民主的”なのか」という疑問だ。例えば、Googleが情報やリンクの信ぴょう性を判断する委員会を選定するのだろうか。また、法的な調査が行われてから情報が削除されるのだろうか。不確定要素は他にもある。このような不確定要素によって、GoogleはEU市民からの評判を維持管理するのに苦戦する可能性がある。また、米国市民からの評判についても同様だ。

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