21世紀の問題を20世紀の手法で解決しようとしている
「IoT」でスマートシティに再び脚光 立ちふさがる障害と課題とは(1/2 ページ)
「モノのインターネット(IoT)」を利用することで、都市は交通渋滞や資源不足などの問題に容易に対処できるようになる可能性がある。だが構造的な障害と消費者の側に課題が残っている。
米国の各都市は、交通渋滞や人口過剰、エネルギー問題に取り組む中、「モノのインターネット(IoT)」の活用によってその苦境から抜け出そうとしている。だが、データのサイロ化や消費者の懐疑的な態度など、昔ながらの問題に真っ向から立ち向かう必要があると業界の専門家らは指摘する。
都市整備の観点から見れば、IoTは大きな可能性を秘めている。環境資源の無駄を減らし、都市の運営を効率化できるためだ。インターネットに接続するデバイス(コネクテッドデバイス)を活用することで、公共区域においてごみを回収したり、街路灯を点灯したりするタイミングを確かめられる。またIoTによって、これまで決してアクセスすることのなかったデータを利用し、住民に対して行動の是正を促せるかもしれない。例えば、現在、米カリフォルニア州では深刻な干ばつに見舞われており、水の使用に関する意識改革に利用できる。コネクテッドデバイスを自動車や冷蔵庫、都市全体の給電基盤に実装すれば、製品の使用状況や人間の活動に関するデータをインターネット経由で集められる。そうして収集したデータを活用することによって、最も効率の良い資源の利用方法を導き出せるかもしれない
調査会社の米Gartnerの試算によると、スマートシティで使用されるコネクテッドデバイスの台数は2015年に11億台に及ぶという。2020年には97億台に達する見通しだ。だが、いまだにある「構造的な遅れ」が、IoTの将来性に影を落としている。例えば、多くの都市では部門間に大きな溝があり、各部門の独立したデータを統合するのは至難の業である。レガシーシステムの存在も、IoTでのデータの連係を妨げる恐れがある。データに関するプライバシーや、過度に自動化された世界に対する懐疑的な見方も、コネクテッドデバイスの発展を妨げる要因となっている。
「21世紀の問題を20世紀の手法で解決しようとしている」――。米カリフォルニア州パロアルト市のCIOを務めるジョナサン・レイチャンタール氏は、2015年5月中旬に開催されたカンファレンス「Internet of Things World」のパネルディスカッションでこう述べた。
「どの都市も独自のやり方で住民のニーズに対応している。都市部には複数の消防行政サービスが存在する。なぜ都市全体に対応できる単一のサービスを提供しないのだろうか。このように乗り越えるべき深刻な構造的問題が存在している。こうした問題がスマートシティのテクノロジーにも少しずつ影響を与えている」とセッション終了後にジョナサン氏は語った。
スマートシティはIoTでさらなるスマート化を図れるのか
IoTは幾つかの課題に直面している。だが、IoTテクノロジーを活用している都市には注目に値する実例もある。具体的には、IoTテクノロジーを利用して無駄を減らす一方で、効率を向上し、コストを大幅に削減するという成果を上げている。
例えば、カナダのトロント市ではデジタル化によって、公的な給付金の受給者に対して発行していた紙の小切手を廃止して、デジタルペイメントカードを作成している。米Smart Cities Councilの会長を務めるジェシー・バースト氏によると、需給者の多くはホームレスか一時的な労働者だという。だが、今では「そのような人たちでもデジタル経済の一員になることができる。小切手の10%をローンの返済に渡す必要もなければ、盗まれる恐れがある現金を持ち歩く必要もない。受給者も給付金の小切手ほど不名誉に感じることがなく、市も200億ドルの経費削減を実現した」。
デンマークのコペンハーゲン市は、IoTシステムを用いて市内の街灯に給電し、再生可能エネルギー源から生成した電力で2万個のLEDライトを発光させている。この街灯戦略は、駐車場や交通センサーなど他のIoTテクノロジーへの「入り口」だった。この戦略によって、コペンハーゲンはビジネスケースの作成にゆっくり着手することができた。米Silver Spring Networksでスマートシティ担当部長を務めるブランドン・ダビト氏によると、コペンハーゲンは65%のエネルギー節約を達成しているという。新しい部門とサービスを同じIoTネットワークに追加したことで、IoTネットワークは費用効果が高く、データサイロの問題解決にも役立っている。「柔軟性ははるかに向上した。こうした新しい部門では、全てのデバイスが相互に通信し、共有インフラとも通信するIoTネットワークの本当のメリットを享受することができる」とダビト氏は述べる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[AvePoint Japan株式会社] SCS評価制度の死角は“SaaSの中” クラウド標準機能では届かない領域とは? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 5分で分かる、「オープンソースCMS」比較ガイド -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 1つのアプリを各国で運用 多言語モバイルアプリを簡単に開発・導入できる方法 -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 複雑化するKubernetes運用、VMとコンテナの二重管理を解消する方法は? -
市場調査・トレンド
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 急増する高度なフィッシング詐欺 先回りしてブロックするには何が必要?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
2
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
5
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
6
金融・通信で情報漏えいが続出 IPAとJPCERT/CCが情シスに求める緊急点検
-
7
「年1回の外部診断」が限界に 大手小売が脆弱性管理を内製化・一元化した方法
-
8
京王電鉄・東京メトロの被害から学ぶ境界防衛 ITの侵害はどこまで波及するか
-
9
PHP2Shellの「事前の情報流出」でパニックに パッチ公開を巡る“混乱劇”
-
10
Googleの業務向けAIエージェント「Gemini Agent」が登場 しかし課題は山積み
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
-
7
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ
-
10
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー