HCIの導入でどのくらいの運用コストを削減できる 教育機関がITインフラ刷新コスト面を中心に解説

米国のある学区が、教育機関へのハイパーコンバージドインフラ(HCI)の導入を決めた。NetwareからHCIへの移行は、ITインフラの運用にどのような影響を及ぼしたのか、コスト面を中心に解説する。

2018年11月06日 05時00分 公開
[John MooreTechTarget]
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 米国のある学区がハイパーコンバージドインフラ(HCI)アプライアンスという新たな世界に初めて足を踏み入れたのは、旧式のテクノロジーがきっかけだった。

 米インディアナポリスの学区MSD of Wayne Township(MSD)は、Novellのローカルエリアネットワークソフトウェア「NetWare」を使用していた。NetWareはかつて広く普及していたが、本稿執筆時点ではサポートが終了している。同学区は、2013年にNetWareからMicrosoftの「Windows」への移行に着手した。同学区で最高技術責任者(CTO)を務めるピート・ジャスト氏は、この大規模移行を進める中で、ストレージの選択も考え直した方が賢明だろうと判断した。

 MSDのストレージは、IBMのNASとSAN製品を中心に構築されていた。「当時、全ユーザー向けの新しいホームディレクトリの場所を探していた」とジャスト氏は話す。

 MSDは、HCIベンダーのScale Computingをストレージサプライヤーとして検討することに決めた。ジャスト氏によると、MSDのIT担当は他のユーザー企業がScale ComputingのHCIプラットフォーム「HC3」を導入して成功していることを知っていたという。HC3は、サーバ、ストレージ、仮想化機能を組み合わせた統合型ハードウェアアプライアンスだ。もう1つの要因は距離の近さだった。Scale ComputingもMSDと同様に、インディアナポリスを拠点としている。

HCIアプライアンスで削減されるオーバーヘッド

 ジャスト氏によると、HCIプラットフォームのアプローチが魅力的だったのは、MSDで運用していたストレージシステムよりもオーバーヘッドがはるかに少なかったからだという。SANやそのサポートソフトウェアは、管理に必要な製品固有の知識を最新状態に保つのが難しかったと同氏は述べる。SANを巡るもう1つの問題は、堅固なセキュリティ基盤を維持することだった。全てのストレージ機器に最新の更新プログラムを適用する必要があった。

 「こうした難しい環境についてスタッフをトレーニングする時間をつくり、必要な情報を把握し続けるのは難しい」(ジャスト氏)

 MSDのIT担当者は、特定分野の専門家ではないゼネラリストが中心だ。そのため同学校組織は足りない人材を外部の専門家で補い、ストレージ機器のセットアップと運用を行わなければならなかった。

 「そうした作業を外注する必要があると、当然ながらコストが高くなる」(ジャスト氏)

 K-12(幼稚園から高校3年に相当)の教育市場では、多くの請負業者が割引を提供している。それでもMSDは専門知識に対して、1時間当たり200ドルを支払うこともあった。

ソフトとハードのコスト削減

 Scale ComputingのHC3プラットフォームを導入したことは、MSDにとってITサポートコストの削減に役立っている。外注の技術サービスにそれほど頼る必要がなくなったためだ。「ほぼ全てに組織内で対応できるようになっている」(ジャスト氏)

 ハードウェアの購入コストに関しては、Scale Computingハードウェアの初期購入コストの方が、IBMストレージに投じていた費用よりも低いことが判明した。購入コストとサービスコストが削減された結果、以前の環境に比べて30〜40%の節約になっているとジャスト氏は説明する。

 節約のポイントはもう1つある。以前はライセンス費用が定期的に発生していたのに対し、MSDがScale Computingのサポートサービス「ScaleCare」に支払うのは最小限の年間管理料だけになった。ジャスト氏によると、他のパートナー企業ではこうした費用が「天文学的な数字」になってきているという。

ストレージから仮想マシンへ

 HC3導入プロジェクトの一段階目はストレージを重視していた。MSDは数カ月前に、HC3の導入に続く、仮想化に主な重点を置いた導入工程の2段階目を実施した。ジャスト氏によれば、同学校組織では既に「厳選した数」の仮想マシン(VM)をHC3に移しており、さらに移行する計画だという。この2回の導入では8台のHC3アプライアンス(ノード)を使用しており、ストレージは13TBになる。

 VM以外では、MSDはもともとSaaSベースだった一部のK-12用アプリケーションを、組織内のScale Computing HCIアプライアンスへと戻した。特定のアプリをクラウドから移したのは主に帯域幅が理由だったとジャスト氏は話す。同氏によると、MSDではコンピューティングデバイスを使用する生徒が増えており、生徒がオンラインになる時間が長くなっているため、帯域幅の消費が大きくなっているという。教師も授業の準備にデジタルリソースを使うようになっており、こうした傾向も帯域幅の必要性を高めている。

 これらの懸念事項による影響を受けて、MSDではその組織外でホストするアプリケーション数を削減することになったとジャスト氏は説明する。

教室でのコンピューティング強化

 ストレージハードウェア、サービス、メンテナンスのコスト削減で資金に余裕が生まれたことで、MSDは教室のコンピューティングを強化できるようになった。本稿執筆時点ではMSD全体で約1万4000台のGoogle「Chromebook」を使用している。この学区で使われるChromebookは、Googleの「G Suite」やWayneの「Learning Hub」という教育管理システムを含むアプリケーションを実行する。

 ジャスト氏は、ハードウェアのサポートコストを圧縮したことで、MSDの「教室に導入できるリソース量が拡大した」と言う。

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