個人が健康管理に使うヘルスケアデータや、病院が管理する医療情報をビッグデータとして収集し、医学研究に活用する動きがある。2018年に施行された「次世代医療基盤法」は、この動きを後押しする可能性がある。
2018年5月に施行した「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(通称「次世代医療基盤法」)によって、認定事業者が複数の医療機関から患者情報の提供を受け、データを匿名加工した上で研究機関や企業に提供することが可能になった。IoT(モノのインターネット)関連技術が発展し、医療分野でもウェアラブルデバイスなどのモバイルデバイスから得られたデータを活用しようという機運も高まっている。ようやく法制度と技術の両輪がそろい、医療ビッグデータを政策立案や新薬・医療機器開発などに活用できる基盤が整いつつある。今後これらのデータをどのように活用するのか、という前向きな議論も始まっている。
2018年10月19日、IoTの展示会「CEATEC JAPAN 2018」で開催された内閣官房健康・医療戦略室参事官の田中謙一氏の講演を基に、次世代医療基盤法とその誕生のいきさつ、医療データの利活用から期待される成果について解説する。
次世代医療基盤法のポイントは2つある。一つは患者本人が情報提供を拒否しない場合、電子カルテなどに記録した医療情報を「認定匿名加工医療情報作成事業者」(以下、認定事業者)に未加工の状態で渡せること。もう一つは、医療機関でなく認定事業者が匿名加工の責任を負うことだ。認定事業者に集約された情報は、名寄せした上で匿名化できる。認定事業者が匿名加工した情報ならば、さまざまな研究機関や製薬会社が研究開発の用途で利用できるデータになる。
医療機関が認定事業者に情報提供をする際、倫理委員会の承認は不要で、患者には最初の受信時に書面で通知することを基本とする。内閣官房健康・医療戦略室参事官の田中謙一氏は、医療機関に対し「制度の趣旨を理解して、情報の提供に協力してほしい」と言う。
次世代医療基盤法は、そもそもなぜ生まれたのか。医療情報に関するこれまでの法制度を振り返ることで、その理由が見えてくる。
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