自社に最適なクライアントを選ぶ
Raspberry PiやChromebookもある シンクライアントをコストや用途で比較
リモートサーバでアプリケーションとファイルを管理するシンクライアント方式は、端末のコストを抑え、PCの管理を簡単にするメリットがある。本稿では各種シンクライアント端末を、コストや用途面から比較する。
今ではほぼ全ての従業員にコンピュータが必要だが、強力で高価なスタンドアロンPCが全員に必要なわけではない。多くの企業では、シンクライアントが良い選択肢になる。
シンクライアントハードウェアは、強力なリモートサーバに高速接続できるシンプルなデスクトップまたはモバイルデバイスだ。ユーザーはシンクライアントをPCであるかのように操作するが、アプリケーションとファイルは全て、実際にはサーバに保存されている。
企業にとって、従業員にシンクライアントを支給することには2つの大きなメリットがある。1つは、多くの場合ハードウェアの総コストが大幅に下がることだ。シンクライアントはごく基本的なスペックしか備えていない。シンクライアントの利用によるコストの低下分が、サーバのコストを上回ることが多い。
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もう1つの大きなメリットは、アプリケーションとファイルが全てサーバ上にあるため、情報がユーザーのエンドポイントに直接置かれる場合と比べて、IT部門のメンテナンス業務が簡単かつ低コストになることだ。
多様な選択肢
シンクライアントは、利用企業のニーズを反映して、さまざまな機能のものが提供されている。「ゼロクライアント」と呼ばれるシンクライアントを採用する企業もある。ゼロクライアントはハードドライブを搭載していない。ゼロクライアントでは、サーバを通してOSを起動するソフトウェアのみがローカルに保存されている。
シンクライアントは「ファットクライアント」である従来のPCとは対照的だ。従来のPCは、ソフトウェアやファイルを自身のストレージに保存するコンピュータだ。コスト上の理由や利便性の観点から、通常のPCをシンクライアントとして使用する企業もある。汎用のコンピュータからサーバ上のアプリケーションやストレージを使用できるようにするクライアント/サーバソフトウェアが販売されているからだ。
シンクライアントの設計
IT部門は、自社に勤務する全従業員にシンクライアント端末を支給する場合もある。その場合、端末はウルトラシンクライアントである可能性がある。ウルトラシンクライアントは安全性が高く、従業員がアプリケーションサーバに直接アクセスしているとき以外はコンピュータが必要ないと考えられる場合にぴったりだ。HP、Dell、NComputing、Lenovoなど、幅広いベンダーがデスクトップシンクライアントを提供している。
シングルボードコンピュータはCPU、メインメモリ、ストレージ、ポートなど、最低限の要素のみを搭載する、最も基本的なタイプのコンピュータだ。シンクライアントの簡素なバージョンとして利用できる。これは最小限のポートと機能を備える最も安価なシンクライアントを求める企業向けの選択肢だ。Raspberry Pi財団が提供する「Raspberry Pi」が最も有名なシングルボードコンピュータだが、Intelなどの企業もシングルボードコンピュータを提供している。
営業担当者などのフィールドワーカーは、モバイルコンピュータが必要な場合もある。デスクトップ型PCは万人向けではない。そのため多くの企業は一部のユーザーにノート型シンクライアント端末を支給しなければならない。Googleの「Chrome OS」がこのタイプのコンピュータを普及させた。Chrome OSを搭載するノートPC「Chromebook」では、Webブラウザしか動作しない。他の全てのソフトウェアはサーバ上で動作し、ユーザーはブラウザからアクセスする。AcerとSamsungなどがChromebookを提供している。Chromebook以外のノート型シンクライアントはHPやIGEL Technologyなど多くの企業が提供している。
各種の現場や倉庫で仕事をする従業員は、タブレット型シンクライアントでファイルにアクセスすることもある。こうしたポータブルコンピュータは、従業員にとって情報の入力よりも情報へのアクセスの方が重要な場合に、最も効果的に機能する。HPや10ZiGがこうしたタブレット型シンクライアントを製造している。
企業は工場内の特定の場所に据え置く形でタブレットを展開する場合もある。ユーザーはこうしたタブレットをデスクトップのように操作するが、キーボードとマウスの代わりにタッチスクリーンが使われる。この種のシンクライアントハードウェアのメーカーには、SiemensやAdvantechなどがある。
状況によっては、Appleの「iPad」や、Googleの「Android」を搭載するタブレットを採用する方が、理にかなっているケースもある。これらのクライアントは、無線でサーバにアクセスすることなく、特定の機能を実行できるが、リモートに保存されたファイルの内容を表示することで、シンクライアントとしても機能する。
衝撃や振動に強い頑丈なノート型またはタブレット型シンクライアントは、現場のワーカーにとって非常に有用であり、雨やほこりの影響を受けにくい機種もある。落下保護も重要だ。一般的なタブレットも、ケースを装着して保護を大幅に強化できる。DellやHPなどがさまざまなデザインの頑丈なコンピュータを製造している。
ポータビリティーが最も重要な基準となる場合には、企業はスマートフォンをシンクライアントとして利用することもできる。外部モニターとの接続に使えるUSB-Cポートがあるデバイスでは、これは簡単だ。ただしAndroidやAppleの「iOS」に対応した良いクライアント/サーバソフトウェアを見つけるのは大変だ。
Samsungの「DeX」技術を利用すれば、キーボードと外部ディスプレイを接続して、スマートフォンをPCのように使える。DeXは一部のハイエンドスマートフォンで利用できる。
シンクライアントのスペック
定義上、どのシンクライアントもハードウェア要件は低い。クライアントコンピュータは基本的な機能だけを実行し、負担の大きい仕事をサーバがこなすためだ。
一部のシンクライアントはWindows OSで動作する。そのためIntel製またはAdvanced Micro Devices(AMD)製のプロセッサが必要だ。IntelまたはAMDプロセッサ搭載のこうしたコンピュータでは、「Dell Wyse ThinOS」のようなOSも動作する。Chromebookの大部分もIntelチップを搭載している。
Intelベースのシンクライアントは通常、クロック周波数が低いクアッドコアプロセッサを搭載しているため、冷却ファンが不要になっている。これはモバイルデバイスにとって利点になる。
一部のシンクライアントコンピュータは、Arm(Advanced RISC Machines)プロセッサを搭載している。Chromebookの一部もその中に含まれる。Armプロセッサはほとんどのスマートフォンに採用されており、消費電力が低く、発熱が少ない。Armプロセッサで動作するLinuxディストリビューションも幾つかある。
シンクライアントは本質的に、あまり多くのメインメモリを必要としない。メインメモリを512MBしか搭載しないシンクライアントハードウェアもあるが、4GB、さらには8GBのメインメモリを搭載するものもある。シンクライアントとして利用される通常のPCは、OSを快適に動かすのに十分なメインメモリを必要とする。
最小限のローカルストレージもシンクライアントの特徴だ。全てのファイルがサーバに保存されるため、内蔵ストレージの容量はあまり必要ない。この特徴を極限まで追求したのが、ストレージがないゼロクライアントだ。シングルボードコンピュータは、ローカルファイルを保持するのにSDメモリーカードを使用することが多い。
ポートについては事情が異なる。シンクライアントを使う従業員は、通常のPCを使う従業員と同じく、キーボードやマウスなどのアクセサリーにアクセスする必要がある。複数のUSBポートやビデオポートが必要な場合は、これらを備えるデスクトップシンクライアントもある。
シンクライアントは、通常のPCよりもサーバアクセスへの依存が大きいため、ネットワーク機能が非常に重要になる。デスクトップシンクライアントはイーサネット接続が必要だが、倉庫などで使われるデバイスは、Wi-Fiに依存する可能性がある。出先での利用を想定しているコンピュータは、4G LTE機能を搭載していれば理想的だが、モバイルホットスポットを利用することもできる。
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