パブリッククラウドに今も残る問題
クラウドが他人のせいで使いにくくなる「うるさい隣人」問題とは?
パブリッククラウドにおける「うるさい隣人」問題は、インフラのパフォーマンスにどのように影響するのか。問題を解決するにはどうすればいいのか。
住宅地で週末の午前6時30分に芝刈りを始めるような「うるさい隣人」に悩まされた経験は誰にでもあるだろう。残念ながら、このような問題は住宅地の隣人だけの問題ではない。クラウドのユーザー企業も同様の問題に頭を抱えることがある。
初期のパブリッククラウドでは、リソース共有という概念はまだ新しく、クラウドベンダーはリソース共有に起因するパフォーマンスの低下を防止するための対策を講じていなかった。今日、うるさい隣人問題はほとんど過去の遺物だが、この問題は今でも時々発生する可能性がある。
主要なパブリッククラウドは、ユーザー企業(テナント)がインフラの運用に必要なハードウェアやソフトウェアといったリソースを共有する「マルチテナント」環境を採用している。「うるさい隣人」は、マルチテナント環境の共有リソースを独占するユーザー企業を意味する。
うるさい隣人問題はなぜ起こるのか
問題は、クラウドベンダーがユーザー企業の需要と使い方を想定して準備したリソースを、一部のユーザー企業が過度に利用することで起こる。あるシステムが通常動作の想定範囲を超えてリソースを消費し始めると、共有リソースは想定通りに機能しなくなる。その結果、同じリソースを共有している他のシステムがパフォーマンスの影響を受ける場合がある。
調査会社Enterprise Strategy Groupのアナリストであるマーク・ボウカー氏は「システムがインフラのリソースを共有する別のシステムの影響を受け、パフォーマンスが落ちる問題は、メインフレームの時代から発生していた」と前置きした上で、「企業がこぞってパブリッククラウドに移行し始めてから、この問題が再浮上してきた」と述べる。
うるさい隣人問題は、大手パブリッククラウドに関しては「解決された」と、調査会社IDCのアナリスト、ディーパック・モーハン氏は語る。大手クラウドベンダーは、運用管理やパフォーマンスで生じた問題の迅速な解決ができるようになった。ユーザー企業側も、仮想プライベートクラウドや専用線接続などさまざまなオプションを活用して、この問題が起こるリスクを最小限に抑える対策が取れる。よりハイスペックのインスタンス(VM:仮想マシン)や自動スケーリングツールなどの強力な手段も、扱うシステムやデータ量に応じてすぐに利用できる。
「一部の小規模クラウドベンダーはうるさい隣人問題を抱えている可能性がある」とモーハン氏は指摘する。ただし大手クラウドベンダーに関しては、この問題を抱えるユーザー企業があるという話は「過去2年間聞いたことはない」と同氏は言う。
うるさい隣人とコンテナ
調査会社ガートナーのバイスプレジデントであるシド・ナグ氏は、ネットワークの観点からうるさい隣人問題について調査してきた。ナグ氏は、このトピックに関する問い合わせは少なくなったが、問題が完全に解決されたわけではないと指摘する。
例えばマルチテナント環境に関する従来の懸念は、データ通信容量またはCPUパワーを独占するシステムに関連していた。コンテナ技術の普及により、うるさい隣人問題の原因が変わる可能性がある。
コンテナはVMモデルとは異なり、OSを仮想化し、論理的に分割する。「OSのスライスが複数テナントに利用されることで、セキュリティに関する問題が発生する可能性がある」とナグ氏は述べる。
コンテナでは可視性が慢性的に欠如しているため、IT運用チームも技術チームも、マルチテナント環境のうるさい隣人問題を認識すらできない場合がある。
影響の軽減対策
ユーザー企業は何よりもまず、パブリッククラウドで実行するアプリケーションのパフォーマンスを積極的に監視する必要がある。「クラウドベンダーは可用性を保証し、サービスレベル契約(SLA)を提供する。パフォーマンスの低下を発見し、これを指摘するのはユーザー企業の裁量だ」と、調査会社Forrester Researchのアナリスト、デイブ・バートレッティ氏は述べる。
うるさい隣人問題の要因はCPUリソースだけではない。ユーザー企業は、どのような共有リソースを利用しているか確認する必要がある。例えばAmazon Web Services(AWS)のオブジェクトストレージサービス「Amazon S3」では、「誰かが大きなS3ジョブを実行していると、うるさい隣人問題が発生する可能性がある」とバートレッティ氏は言う。
企業のイントラネットで使用されるアプリケーションの場合、ユーザー企業はパフォーマンスのわずかな変化について、さほど心配することはない。Eコマースサイトなど顧客向けのシステムの場合は、わずかな変化も重要な問題に発展する場合がある。このようなシステムにクラウドを採用する場合は、他のテナントが利用するインフラから物理的に分離された、シングルテナントのインフラの使用を考慮に入れた方がよい。
中小のクラウドベンダーでも、シングルテナントのインフラを提供している場合がある。IBMとOracleは、ベアメタルサーバ(物理サーバ)で差別化を図っている。AWSもベアメタルサーバのサービスを追加。Microsoftは最近、クラウドサービス群「Microsoft Azure」の一部サービスでベアメタルサーバを導入した。
「最近のクラウドベンダーは、全てを共有するマルチテナント方式のパブリッククラウドと、ベアメタルサーバをホスティングするプライベートクラウドの両方を提供する傾向にある」とバートレッティ氏は言う。
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