「拡張分析」の用途5選【後編】
「拡張分析」で全社員がデータサイエンティストになる?
拡張分析はユーザー企業にどのような恩恵をもたらすのか。今回は代表的な5例の中からシチズンデータサイエンティスト、組織内の知識活用、洞察の自動化について紹介する。
現在のビジネスインテリジェンス(BI)ツールの最新トレンドといえば「拡張分析」(Augmented Analytics)だ。拡張分析は各社の製品や機能群に追加され、企業の活用も着々と進んでいる。前回は代表的な拡張分析の用途5例の中から「データ準備」と「クエリ能力の強化」の2例について紹介した。今回は残りの3例について取り上げる。
用途3.シチズンデータサイエンティストの実現
クエリ能力(queryability)の強化は、データ専門家がデータをより深く掘り下げることを可能にするだけではなく、分析製品のユーザー基盤も拡大する。企業全体でのシチズンデータサイエンティスト(分析の専門家ではない、事業部門でデータ分析をする従業員)の増加は、拡張分析が鍵を握る。
データ分析会社Hexe Dataで業務執行役員を務めるクリストフ・スロウィッキー氏は「企業がBIに取り組む際、統計や数学に関する実績と経験を備えた候補者の必要がなくなる」と言い切る。企業は、技術力には乏しくても、自社のビジネスを理解し、洞察を実行して、与えられたデータに基づいて提案できる候補者を雇用できるようになるだろうスロウィッキー氏は考える。「こうした非常に興味深い変化が、近い将来見られる可能性がある」(同氏)。
Adobeで「Adobe Analytics Cloud」の製品管理部門のディレクターを務めるベン・ゲインズ氏は「AIアプリケーションを適切に用いれば採用のハードルは下がる」と主張。「分析を快適な方法で確認できるようにすることで、技術者以外のビジネスユーザーが感覚的にデータ主導になることができる」と話す。こうした後押しを受けて、技術者以外のビジネスユーザーが洞察を導き出し、データ分析に関するやや漠然とした次の質問を投げ掛けることで、さらなる掘り下げが可能になる。
統計ダッシュボードは一般的に、難しい質問に答えを出すだけでは足りない。次の質問を予測し、企業がデータを適切に使えるようにして、CEOから最前線のマーケティングマネジャーまで誰もが次の質問を問い掛けやすくする必要がある。AIはそうした分野に貢献する可能性がある。「分析機能は突如として、ただのきれいな棒グラフや円グラフを大きく上回り、実際に質問して回答を得られる双方向の会話に変わった」とゲインズ氏は語る。
用途4.「組織内の知識」の活用
IBMのIBM Watson IoT部門で上級製品マネジャーを務めるヒーナ・プロヒト氏は「多くの企業で従業員の高齢化が大きな懸念になり始めている」と話す。プロヒト氏の説明によると、石油ガス業界では今後5~10年で経験豊富な従業員の多くが定年を迎えると見込まれているという。このようなベテラン従業員が職を離れることで、企業頭脳流出という重大なリスクにさらされる恐れがある。
企業はベテラン従業員が持つ組織内での知識や経験を維持する、画期的な方法を探すようになっている。「この追求に役立つのが拡張分析だ」とプロヒト氏は語る。
IBMの顧客である産業界のある企業は、同社のAIシステム「IBM Watson」を原動力とする保守作業支援製品「IBM Equipment Maintenance Assistant」の自然言語処理(NLP)機能を使用している。これはマニュアル、規格、安全手順、報告書、過去の作業ログなど、ドキュメントの宝の山に埋もれた非構造化データと構造化データを処理する。その後、Equipment Maintenance Assistantは取り込んだデータに基づいて、保守技術者や運用技術者からの質問に回答を返すことができる。
オーストラリアのある石油ガス企業は、この拡張分析機能を利用して、エンジニアリングや掘削に関する30年間分の知識を取り込んだ。それにより、技術者はこの知識を活用して、複雑なプロジェクトに関して事実に基づいた決断を下せるようになった。
拡張分析機能を利用することで「技術者や運用担当者がデータ探しに費やす時間が75%削減された」とプロヒト氏は語る。これは、従業員のコストに換算すると100億ドルの節約になる。「情報へのアクセスが速くなり、組織のエンジニアリングに関する記録をより直感的に分析できようになった」(同氏)
用途5.洞察の自動化
拡張分析の最後の用途は、洞察の自動化の改善に関係する。それは、反復可能な機械学習ツールを使用して、特定種類の分析を自動化するという考え方だ。こうした分析の仕組みを、データサイエンスチームが独自に構築すると数カ月は要する。
例えば、Adobeは「セグメントIQ」という機械学習ツールを構築した。ユーザー企業はセグメントIQを使うと、ボタンクリックで2つの顧客グループを比較できる。数百種類のディメンション(分析対象)でこれらのグループを比較することも可能だ。これは機械学習を除けば一般的な分析だが、チームで実行すると数カ月から数年を要する。こうしたツールを利用可能にしておくと、幹部の直感をその場で裏付けたり、異議を唱えたりすることも容易になる。
ゲインズ氏は、自身の所属先であるAdobeが提携している1つのB2B(企業間取引)サービス企業を挙げた。その企業のある有力な幹部は、ペイドサーチ(検索連動)型広告の予算を削ることを考えていた。その投資によるコンバージョン率が低かったためだ。
マーケティングチームはセグメントIQを使用して、ペイドサーチ型広告を経由してアクセスしたWebサイト訪問者のセグメントを作成し、他の全ての訪問者と比較した。ここで判明したのは、このような訪問者はそれ以外の訪問者と比べ、直接コンバージョンに至る可能性は低いものの、前回購入したサービスよりも高額なサービスを購入する可能性が3倍高いというものだった。
その後、マーケティングチームはより高価なサービスを薦めるキーワード、つまりアップセルに関するキーワードのみに予算を集中した。その結果、サービスのアップセルが56%増加したとゲインズ氏は説明する。
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「拡張分析」の用途5選
ビジネスインテリジェンス(BI)の進化形とも言える「拡張分析」は、何に役立つのか。データ準備、NLPベースのクエリ、自動洞察など、拡張分析の主な用途を紹介する。
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