インフラとして複数のクラウドを利用する企業の動きが広がり、新たな課題が浮上している。調査で判明したマルチクラウド管理の課題と、その解決策を説明する。
複数のクラウドをインフラとして利用する企業は少なくない。調査会社IDC Japanが日本IBMの委託で実施したアンケート調査「2019年 マルチクラウド調査」の結果によれば、パブリッククラウドやプライベートクラウドを利用する企業のうち、9割以上の企業が複数のクラウドを利用している。IDC Japanでクラウド市場の調査を担当する松本 聡氏は、こうしたクラウドの利用実態について「企業の戦略的な方針に基づくものではなく、クラウドが乱立した結果」だと指摘する。
本稿はパブリッククラウドかプライベートクラウドかを問わず、複数のクラウドを利用している形態を「マルチクラウド」と定義し、企業のITインフラや最新技術の導入に関するイベント「IBM Open Technology Summit 2020」で登壇した松本氏の話と調査結果を基に、マルチクラウドの実態と課題、その解決策を説明する。
2019年 マルチクラウド調査によると、インフラとして何らかのパブリッククラウドまたはプライベートクラウドを利用していると答えた企業は80%を超え、そのうち2つ以上のクラウドを利用している企業は91%に上った。
複数のクラウドを利用する企業のうち、クラウドごとに個別にインフラの運用管理を実施している企業は47.2%だった。一方で複数のクラウドを統合管理している企業(4.7%)と、クラウドとオンプレミス(プライベートクラウド)を統合管理している企業(10.9%)は合わせて15.6%だった。クラウドごとに個別で管理するサイロ型の運用管理体制を取る企業が多く、一貫したクラウドの管理体制が整っている企業は多くない(図1)。
松本氏はサイロ型の運用管理になる原因について「部署やプロジェクト単位でクラウドの利用を検討し、導入する企業が少なくないことだ」と説明する。このことから、全社的な方針に基づいてクラウドを利用しているのではなく、統制が取れていない結果としてマルチクラウドになるケースが少なくないと考えられる。
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