オンプレミス、クラウド、仮想環境をまとめる
マルチクラウド管理ツールはどう選ぶ? 主要製品の特徴を比較する
クラウド管理ツールを選定する際、IT担当者が評価すべきポイントについて解説する。本稿で取り上げる6つの機能が搭載されているかどうかが確認のポイントだ。
複数のクラウドプラットフォームを利用するケースが広がっているが、そうしたマルチクラウド環境を管理するのは簡単ではない。多様なアプリケーションが混在し、ユーザーの分散が進んでいる場合は特に厄介だ。こうした複雑化した環境で、各クラウドプラットフォームの機能を最大限利用するためには、また、コストを最小限に抑えるためにはマルチクラウド環境向けの管理ツールが欠かせない。コンプライアンス要件を確保するためにもこうしたツールが必要だ。
管理ツールとして検討すべきは、異なる環境を管理するためのCMP(クラウド管理プラットフォーム)だ。CMPは管理に必要なソフトウェアやツールを一式まとめたもので、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドの環境を統合的に監視、管理できる。
CMPの種類は多様だが、利用する利点はストレージなどのリソースをマルチクラウド環境全体にまたがって管理できることにある。オブジェクト指向技術の標準化団体であるObject Management Groupが、CMPの主要な6つの機能について概説している。その機能とは、「システム統合」「標準サービス」「サービス管理」「リソース管理」「ガバナンス/セキュリティ」「財務管理」の6つだ。
本稿では、Object Management Groupの定義に沿ってCMPが持つべき機能を紹介する。マルチクラウド向けの管理ツールとして、各CMPがそれらの機能をどのように搭載し、利便性の高いツールにしているのかについても解説する。取り上げる製品は「CloudCenter」「Morpheus」「Scalr」「Turbonomic」などだ。
システム統合を実現するCMPの機能
マルチクラウド環境を統合的に管理するには、CMPによって企業の内部システムと外部システムを統合する必要がある。そのためにはCMPは「Amazon Web Services」(AWS)などのパブリッククラウドサービスが公開しているAPIをサポートしている必要がある。「OpenStack」などのプライベートクラウドのプラットフォームについても同じことが求められる。ディレクトリサービスやソース管理のためのアプリケーションなど、サードパーティー製品と連携できることも必要だ。
Cisco Systemsの管理ツール「CloudCenter」は、データの保存や取得のために、AWSの「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)のWebインタフェースの仕様に準拠している。CloudCenterから外部リポジトリに接続するために必要なのは、ホスト名とエンドポイントのURLのみとシンプルだ。CloudCenterは20以上のデータセンターやクラウド環境と連携できるようになっている。「Docker」「Chef」「Puppet」といった一般的に利用されているツールとの連携も可能だ。さらにCisco Systemsは、標準的に連携できるこうした環境やツール以外にも、CloudCenteとの連携を可能にするためのAPIを提供している。
Morpheus Dataが提供する管理ツール「Morpheus」は、システム自体のプラットフォームを拡張して外部のシステムと連携するための機能を備えている。Morpheusの管理者はソースコード管理を統合し、「GitHub」「Gradle」「Jenkins」などのツールを使って自動化の仕組みを構築できる。CloudCenterと同様、MorpheusはChef、Puppetやそれ以外のシステムとも連携可能だ。
標準サービス
標準サービスの対象に含まれるのは、異なる環境の統合に必要な管理機能だ。CMPには、内部のコンポーネントにアクセスし、管理タスクを実行するための中心となるポータル機能が必要だ。またユーザーが利用できるクラウドサービスを一覧表示し、そのサービスに簡単にアクセスできるようにするサービスカタログ機能も備えているのが望ましい。サービスの利用状況を表示したり、最適化のための洞察を提示したりする分析機能やレポート機能もこの標準サービスに含まれる。
主要なマルチクラウド向けの管理ツールは、こうした標準サービスを各種用意している。例えば「RightScale」は、クラウド環境やオンプレミスシステム全体のワークロードを統合的に管理するための操作ツールを用意している。「Scalr」は、わずか数回のクリックでプロビジョニングを実施できるサービスカタログ機能を備える。Scalrのサービスカタログ機能では、クラウドサービス、自動化ルール、自動スケーリングが組み込まれたアプリケーションスタックや、サーバを扱える。
レポート機能と分析機能もマルチクラウド管理ツールには重要だ。管理ツールの「Turbonomic」はワークロード需要をリアルタイムで常時分析し、その結果をストレージやその他の利用可能なリソースと照合し、配置を最適化できるようにする。リソースの配置先は、プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、オンプレミスの仮想化環境などが可能で、特定の環境に依存しない。
サービス管理
CMPのサービス管理機能では、サービスレベル管理、サービス監視、キャパシティー監視ができる。サービス管理機能には、全ての管理対象となるクラウドサービスを監視し、結果を報告すると同時に、ストレージやその他のリソースのキャパシティー状況を追跡することが求められる。
Morpheusは、新たにプロビジョニングされるシステムを自動的に構成する。カスタマイズによってアラート機能を実装することもできる。Turbonomicはさまざまなシステムのリアルタイム監視機能を用意している。その対象には、Dell EMC、NetApp、Nutanixなどのベンダーが提供するストレージ製品も含まれる。またトランザクションのスループットなど、サービス品質のレベルを定義することも可能だ。
リソース管理
リソース管理には、クラウドリソースを管理、利用するために必要な機能が含まれる。例えば、リソース探索、リソースのタグ付け、資産およびライセンス管理、クラウドサービス間のリソース移行などの機能だ。有用なマルチクラウド管理ツールと言うためには、管理プロセスを自動化するオーケストレーション機能も備えていることが欠かせない。クラウドリソースのプロビジョニングとプロビジョニング解除を円滑化することも求められる。
主要な管理ツールは多彩なリソース管理機能を備えている。例えば、RightScaleはクラウドディスカバリーの機能を備え、これによって実行中のワークロードを検出できる。RightScaleは、あらゆる環境においてタグ付けする機能も備えており、Microsoftのリソース管理ツール「Azure Resource Manager」のストレージアカウントにタグ付けすることもできる。
Turbonomicには、ワークロードの自動配置、プロビジョニング、スケーリング機能がある。Scalrには、プロビジョニングのためのポータル機能をカスタマイズできる機能がある。Morpheusには、ベアメタルサーバや仮想マシン、パブリッククラウド、プライベートクラウドなどを対象にコンテナオーケストレーションを実行できる機能があるほか、ワークフローの承認の自動化、しきい値を基準にしたスケーリングの機能もある。
CloudCenterは、基盤となるインフラからアプリケーションを切り離すためのオーケストレーションツールを備えている。これによってクラウドリソースの複雑さを回避することができる。その他、ネットワークプロパティやストレージプロパティといった、アプリケーションのプロファイル管理ができる機能も備えている。
ガバナンスとセキュリティ
企業のポリシーに沿ってクラウドリソースとクラウドサービスを確実に管理することが、ガバナンスとセキュリティ機能の目的だ。CMPにはクラウドサービスのポリシー管理ができる機能や、コンプライアンスを管理するため機能があるべきだ。セキュリティ面では、暗号化機能のほか、ID/アクセス管理の機能が不可欠だ。
クラウド環境におけるデータ保護の重要性を考えれば当然のことだが、たいていのCMPはガバナンスとセキュリティを重視している。例えばCloudCenterは、データを保管する時も転送する時も暗号化技術を用いる。ID管理、ユーザー認証の方法としては、シングルサインオン(SSO)の標準プロトコル「Security Assertion Markup Language 2.0」を採用している。
他の管理ツールも同様にガバナンスとセキュリティには力を入れている。例えば、Scalrはポリシーエンジンとロールベースアクセス制御を使用してポリシー管理の機能を提供している。Turbonomicでは高可用性、アフィニティー、非アフィニティーといったポリシーをインポートできる。また特定のデータストア向けにワークロード配置ポリシーを作成できるなど、新しいポリシーが作成できるのもその特徴だ。
財務管理
クラウドリソースの使用状況とコストを追跡するのが財務管理の機能の目的だ。リソースとサービスの使用量を計測し、コストを割り当て、チャージバックレポートや請求書を作成し、コストを予測するのが財務管理の機能だ。
Morpheusではコストの比較ツールなどを利用することで、ユーザーはパブリッククラウドに関する洞察を得られる。またMorpheusの監視機能と分析機能を利用すれば、コストを適切に予測し、システムを最適化するのにも役立つだろう。Scalrはコストを追跡し、レポートを生成する機能に加え、予算超過になるのを回避するためのアラート作成機能を備えている。
クラウド管理の未来
本稿では、マルチクラウド環境の管理ツールとして実際にベンダーが提供している製品を紹介した。CMP市場はまだ始まって間もない。ここで説明した機能は、CMP市場が成熟し、マルチクラウドの利用が広がるのに従って進化するだろう。
CMPを評価するIT担当者は、本稿で紹介した6つの機能に基づいて検討するとよいだろう。検討する上では、自社固有の要件を考慮に入れる必要がある。またマルチクラウドの分野は変化が激しいため、その変化が今後のITシステムの運用に影響することを忘れてはならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント -
製品資料
揺らぐ境界防御 いま企業が特に警戒すべき「3つのセキュリティ課題」とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
2
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
6
「即戦力」は幻想? 中途の3割が消えるAI時代のエンジニア生存戦略
-
7
画面をティッシュで拭くのはNG Dellが推奨するPCの正しいお手入れ方法
-
8
メインフレームは死なず AI活用で20年来の高収益をたたき出す基幹システムの底力
-
9
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
10
「企業におけるAIの運用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー