仮想デスクトップを利用する際は、クライアント端末の選択が重要だ。「シンクライアント」と「ファットクライアント」を選ぶ際、何を検討すればいいのか。
仮想デスクトップ用のクライアント端末の選択を間違えると、エンドユーザーの使い勝手に重要な問題を引き起こす可能性がある。そのためクライアント端末は慎重に検討して選択しなければならない。まず検討すべきは、仮想デスクトップ用のクライアント端末として「シンクライアント」と「ファットクライアント」のどちらが適しているのかという点だ。
シンクライアントは必要最小限のリソースのみを搭載したクライアント端末であり、遠隔のサーバがアプリケーションの実行やデータの管理といった大半のタスクを担う。ファットクライアントは記憶媒体などのリソースやアプリケーションといった業務に必要なコンポーネントを搭載する、一般的なPCだ。
パフォーマンスを最大限考慮したWebアプリケーションであっても、エンドユーザーが利用する際は多少の遅延が生じる。ネットワークを介して利用する仮想デスクトップは、そうした遅延が大きくなる可能性がある。そのためIT部門がクライアント端末を用意する際は、できるだけエンドユーザーの使いやすさを考慮すべきだ。
通常、組織が用意するクライアント端末は、従業員が個人で用意するクライアント端末よりも業務用として使いやすい。IT部門がクライアント端末を一元的に管理し、事前構成して業務に最適化させるからだ。この点を踏まえると、IT部門にとってシンクライアントを選ぶべきメリットがある。再起動程度では解決しない問題がクライアント端末に発生した場合、IT部門は新しいクライアント端末を用意しなければならない。事前構成が必要なファットクライアントはすぐに用意することが難しいが、シンクライアントであれば比較的容易だ。
セキュリティは仮想デスクトップの展開において考慮すべき重要なポイントだ。従業員が個人用のPCを業務用として利用する場合、クライアント端末はウイルスやキーロガーといった脅威にさらされることになる。IT部門は各クライアント端末が重大なセキュリティ侵害を起こさないように個別に対処しなければならない。シンクライアントは原則としてデータをローカルに残さないため、その必要性は低い。
シンクライアントとファットクライアントを比較する場合、シンクライアントは単なる“端末”ではないことを知っておくべきだ。さまざまなベンダーがシンクライアント用の製品を提供している。例えばIGEL Technologyの仮想デスクトップ用OS「IGEL OS」は、OSを置き換えることでシンクライアントとしてPCを再利用できるようにする。IGELの「UD Pocket」は、USBドライブをPCに差し込むことで、PCをシンクライアント化できる。古いPCにIGEL UD Pocketを差し込むだけで済むため、ハードウェアの調達コストを削減できる。
エンドユーザーはローカルのデスクトップと仮想デスクトップの間で混乱することがある。オフィススイート「Microsoft Office」など一般的な業務アプリケーションが両方のデスクトップにインストールされている場合、特にその問題が顕著になる。誤って異なるデスクトップにファイルを保存し、もう一方のデスクトップからそのファイルにアクセスできないといった問題が発生しがちだ。シンクライアントであれば、業務アプリケーションのファイルを原則としてローカルには保存しないため、こうした混乱は生じにくい。
シンクライアントとファットクライアントのどちらが仮想デスクトップ用クライアント端末に適しているか、コストや管理性において単純に優劣を付けることはできない。一部のエンドユーザーは、単に使い慣れている、あるいは常にPCの機能を利用したいという理由でファットクライアントを要求する。他方、仮想デスクトップへのアクセスのみを必要とするエンドユーザーであれば、シンクライアントの方が適している可能性が高い。
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