Microsoftはマルチプラットフォーム対応を積極的に推し進めている。Apple製品やAndroidにどう対応するのか。強化されるArmサポートの動向とは。Microsoftの多方面作戦の状況を概観する。
前編「Windows 10のUI刷新が意味するMicrosoftの対アプリ開発者戦略」では、2021年に予定されているWindowsのメジャーリリースや開発用ライブラリについて解説した。後編ではMicrosoftのAppleとAndroid対応やArmサポート、コラボレーションツールなどについて解説する。
Microsoftはユーザーがさまざまな場所でさまざまな機器を利用することを認識している。OfficeはAndroidやiOSでも動作し、iOS 14のウィジェットやトラックパッドが組み込まれたiPadの新キーボードも利用できる。AndroidとiOSのどちらでも、Microsoftのエコシステムにつなぎ留めることが可能になっている。どちらのプラットフォームでも「Microsoft Edge」で「Bing」検索したり、「Outlook」でメールを利用したり、「OneNote」などのOfficeツールを使ったりできる。
Appleの環境は比較的ロックダウンされているためMicrosoftがエンド・ツー・エンドの完全なユーザーエクスペリエンスを提供することはできないが、Androidはそうではない。Androidでは「Microsoft Launcher」によってMicrosoftのサービスが前面に押し出され、Microsoft 365と統合される。「Surface Duo」プロジェクトの一環として、Androidのマルチスクリーンサポート向上のためにGoogleと連携もしている。Microsoftはさまざまな画面フォーマットに適応して機能するコントロールとともに、マルチスクリーンと折りたたみ式画面のサポートをXamarinに組み込んでいる。
WinUIやXamarinなどの技術は、Microsoftのもう一つの主要開発ツールキットである「Project Reunion」でも重要になる。
Project Reunionの狙いは、Windows SDKからUIコンポーネントを切り離してOSとは別にリリースできるようにすることにある。コンポーネントとコントロールは「NuGet」(訳注:.NET Framework対応のパッケージマネジャー)を通じて提供される。Project Reunionは、最終的にはWin32とWinRT両方のAPIをマージし、コードの構築・デプロイ共通の方法を提供する。そのコードを全てのWindowsで実行可能にし、コードを大幅に書き直すことなく古いアプリケーションを最新のWindowsにインストールできるようにする予定だ。
「Visual Studio Code」や「WSL」(Windows Subsystem for Linux)は、NVIDIAのGPUを実装した15型「Surface Book」のようなハードウェアとともに、Windowsを再び開発者にとって魅力的なものにする。魅力的なWindowsアプリケーションの構築を容易にすることは、新たな開発者が構築しているコードをWindowsに持ち込むのに役立つ。
今後のWindowsリリースでWSLにGPUサポートが追加される予定だ。これにより、一般的な機械学習ツールによるモデルの構築や開発が可能になる。これをONNXファイルにエクスポートすれば、Windows独自の「WinML」(Windows Machine Learning)推論プラットフォームやアプリケーションで使える。
Microsoftの「App Assure」プログラムの最近の発表によると、バッテリーの持続時間が長い軽量のポータブル機器の代替として「Arm」プロセッサへの取り組みを強めていると思われる。Microsoftは、「Windows on Arm」に既存アプリケーションを移行させることを希望する企業へのサポートを提供する予定だ。
「Surface Pro X」(訳注:Armベースプロセッサ「Microsoft SQ」を搭載したSurface)は、プロセッサのアップデート(Microsoft SQ1→Microsoft SQ2)によってパフォーマンスが向上した。Windowsは間もなく、64bit Intelコードのエミュレーションを追加する予定だ(訳注:原文公開時点では32bitコードエミュレーションのみ)。また.NETおよびVisual StudioのC++コンパイラのArm64サポートを改善し、コードを一切変更せずにIntelとArmの両方をターゲットにできるようにした。
Officeをサブスクリプションモデルに移行するのは理にかなった措置だった。恐らく予想外だったのは、Officeと「SharePoint」の組み合わせによって「Microsoft Graph」が生まれたことだろう。Microsoft GraphはAPIとサービスのセットで、コンテンツやデータを単純にファイル共有するよりもはるかに多くのことができるようになる。「Graph API」は強力な自動化および拡張フレームワークを追加する。「Project Cortex」(訳注:Microsoftのナレッジマネジメントサービス)とその最初の製品である「SharePoint Syntex」への機械学習導入により、コンテンツが検索ベースのナレッジマネジメントツールに変わる。
Officeは月例アップデートで新機能が追加され、組み込みエディタやLinkedInのデータを使った機械学習の履歴書ジェネレーターなどのツールが更新されているのを確認できる。Microsoftは開発予定の機能や開発中の機能のロードマップを公開しており、新しいコラボレーションオプションと「Microsoft Teams」を統合していることも分かる。
SharePointをOfficeのクラウドサービスの基盤として使い、クラウドストレージの「OneDrive」を併用することで、Microsoft 365プラットフォームの一環としてユーザー中心のアプリケーションを迅速に展開できる。「Windows Forms」(GUI API)、「Microsoft Lists」(情報追跡アプリ)、「Microsoft To Do」(To Do管理アプリ)などがMicrosoft Graphに構築されており、多くの場合、かつてのSharePointの機能がシンプルで使いやすいアプリケーションやAPIに変換される。
Microsoft 365のEnterpriseサブスクリプションは「Microsoft Intune」によるシステム管理やセキュリティツールが追加された。重要な要素の一つである「Microsoft Defender Advanced Threat Protection」は、機械学習を使って異常なアクティビティーを特定し、システムやネットワークの動作を分析するのに役立つ。Microsoftは最近リリースしたAndroid版でも機能の追加を続けている。
2000年代初頭、Microsoftはエンドユーザーから目を離したかもしれない。だが、現在は状況が大きく変わった。WindowsやOfficeのテレメトリーからのビッグデータがMicrosoftの意思決定の指針となり、同社はユーザーツールやアプリケーションにアプローチする方法へと向かっている。2021年はMicrosoft Graphに基づいて構築される新しいMicrosoft 365サービスと、Windows 10の2回のアップデートを引き続き展開する年になるだろう。
Windows開発プラットフォームがProject Reunionと.NET Frameworkの変更にまとめられるため、同社の新たな焦点が開発者ツールとプラットフォームに反映されている。
2021年はMicrosoftにとって興味深い年になりそうだ。
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