既知の通り、2021年のメジャーアップデートでWindows 10のユーザーインタフェースが刷新される。そこからアプリケーション開発者に対するMicrosoftの戦略を垣間見ることができる。
「Microsoft Azure」の収益は伸びているが、同社の中心は「Windows」と「Office」であるという。この2つは依然としてMicrosoftが提供する全ての基盤となる。3年単位でバージョンアップしていたWindowsは、クライアント用もサーバ用もローリングリリースに変わった。Officeは「Microsoft 365」サブスクリプションサービスになった。だがWindowsとOfficeであることに変わりはない。
Microsoftが2020年に開催した「Build」「Inspire」「Ignite」を振り返り、特に全世界で10億人を超えるユーザーを擁するWindowsとデスクトップOSの方向性を見てみる価値はあるだろう。
Microsoftは、2021年にWindowsのメジャーアップデートを2つ提供する予定だ。一つは新規ハードウェア向けの軽量版OSである「Windows 10X」だ。もう一つが「Windows 10」のアップデートで、UI(ユーザーインタフェース)のリフレッシュが行われる。このUIは「Xbox」で既に検証が始まっている。
Windows 10Xは当初デュアルスクリーンの「Surface Neo」用として発表されたが、Surface Neoのリリースは遅れている。Windows 10Xは、WindowsのユーザーエクスペリエンスをOSから切り離す長期プロジェクトの一端も担っている。そのプロジェクトのバージョンの一つは「HoloLens 2」にサポートを提供しており、他にも「Surface Hub」のアップデートの候補になっている。そして現在は、ライバルの「Chromebook」を見据えて低コストのPCをターゲットとする。Windows 10Xは、Microsoft StoreのWindowsアプリケーションやPWA(訳注)によって教育現場のユーザーやホームユーザーをターゲットにする可能性が高い。
訳注:Progressive Web Apps。ネイティブアプリケーションと同等の使い勝手を実現したWebアプリケーションのこと。
Windows 10Xは、これまでとは根本的に異なる(よりタブレットに近い)UIを備える低コストのハードウェアで実行されるため、アプリケーションパッケージング技術であるMSIX(MSIの後継となるアプリケーションパッケージ方式)の採用が促されるだろう。
MSIXは「Win32」と「WinRT」で機能するよう設計されており、企業のIT部門がパッケージをカスタマイズすることも可能になっている。各新規ビルドを既製のセットと組み合わせることができるためデプロイが高速になり、ユーザーはバグが修正されたバージョンをより早く利用できるようになる。
Windows 10は年2回のリリースサイクルが維持される可能性が高い。春のメジャーリリースと秋のマイナーリリースだ。2回目のリリースでUIをメジャーアップデートするとうわさされている。そのためリリースのリズムが変わり、春がマイナーリリースになり秋がメジャーリリースになる可能性がある。だが、現在提供されているサポートモデルは変わらない。
Windows 10XとWindows 10アップデートのデザインの多くは、Microsoftのデザイン言語「Fluent Design System」に基づいて構築される。Windows 10アプリケーション用アイコンのデザインが見直され、スタートメニューとタスクバーが更新される。これらは最新リリースに取り入れられているのを確認できる。
Fluent Design Systemには、「Acrylic」(訳注:Microsoftのグラフィックツール)の透明効果のサポート、改善された一貫性の高いコントロールなどがある。デザインの見直しは、Windowsの全てではないにせよ、その多くの部分に行われる可能性がある。旧式のコントロールパネルやダイアログが置き換えられ、Windows組み込みツールの多くが設定アプリに移動されるという予想もある。
Microsoftのプラットフォーム戦略の中心はアプリケーション開発であり、デスクトップ、モバイル、Webが主な構成要素だ。
デスクトップでは、前述したFluent Design SystemがWindowsアプリケーションのルック&フィールの鍵となる。同時に、「.NET Standard」で新規プラットフォームへの移植を簡素化する使い慣れたAPIを提供する。.NET Standardは「.NET」の共通仕様で、これに含まれる最新の「.NET 5」はオープンソースの「.NET Core」の後継バージョンだ。.NET 5はWindows、「macOS」「Linux」で利用できる。だが、UIのサポートが提供されるのはWindowsとWebのGUIに限られる。そのためクロスプラットフォームサポートを提供する場合は「Xamarin.Forms」(訳注:オープンソースのUIフレームワーク)などの関連技術を利用する必要がある。
最も重要な点の一つは、クロスSDKの「WinUI 3」において各種Windows SDKからUIコントロールを分離したことだろう。UIコントロールは開発時または更新時にリリースできる。UIコントロールはコードと共にパッケージ化されるため、あるアプリケーションでの変更が他のアプリケーションに影響することはない。WinUI 3は「.NET MAUI」(Multi-platform App UI)と連携して、複数のプラットフォームで機能する。.NET MAUIは「Xamarin」(訳注:iOS、Android、Windowsアプリケーション用クロス開発環境)などの.NETツールで採用されている。
Webアプリケーションは、「Blazor」(MicrosoftのWebAssemblyクライアント)用の「Uno Platform」を介してWinUIにアクセスする。Blazorはブラウザで.NETアプリケーションをコンパイルして実行する。Uno PlatformはmacOSおよびLinuxで実行される.NETコードでも動作する。従って、Windows開発者はほぼどこでも実行可能なグラフィカル.NETアプリケーションを作成できる。
後編ではMicrosoftのAppleとAndroid対応やArmサポート、コラボレーションツールなどについて解説する。
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