HDDを活用すべき5つのユースケースフラッシュよりHDD

フラッシュストレージの低価格化・大容量化はHDDの終わりを意味しない。HDDの方が向いている用途もある。

2021年01月25日 08時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 フラッシュストレージはHDDよりもパフォーマンスが大幅に高く、近年は低価格化・大容量化している。さらに、NVMeをはじめとする新しい実装が利用を促進している。NVMeはPCIeバス経由でドライブをCPUに接続し、SATAやSASよりも低い消費電力で高い読み書き速度を実現する。

 NVMeをネットワークストレージ化するNVMe-oF(NVMe over Fabrics)もある。これにより、フラッシュは単一サーバや直接接続以外にも展開できるようになった。

 これら全てがHDDやテープなどのレガシーストレージの終わりを示しているように思える。だが、必ずしもそうではない。HDDにはまだ多くの使い道がある。

HDDは生き残るのか

 NVMeはハイパフォーマンスストレージの「絶対的基準」になっている。NVMeはSATAに起因するボトルネックを解消し、フラッシュのパフォーマンス上のメリットを最大限に高める。NVMe-oFでストレージネットワークに組み込めば、オールフラッシュのNASやSANアレイが実現する。

 SATAベースのSSDは低コストのため、高いパフォーマンスを必要としないシステムやHDD前提で設計されたレガシーシステムをアップグレードする際の選択肢になる。

 フラッシュは低価格化・大容量化しているが、それはHDDも同じだ。それ自体の読み取り/書き込みのパフォーマンスでSAS接続のHDDがNVMe接続のSSDに匹敵することはできないが、NASやSANでRAIDのレベルやフラッシュベースのキャッシュを適切に使えば、企業向けアプリケーションのパフォーマンスはNVMe接続のSSDに近づくか、ほぼ匹敵する。RAIDやイレージャーコーディングによってHDDの堅牢(けんろう)性を確保することもできる。

 Freeform Dynamicsでアナリストを務めるトニー・ロック氏は次のように話す。「HDDで運用できるアプリケーションはたくさんある。フラッシュやフラッシュキャッシュとHDDを組み合わせたハイブリッドストレージで十分なアプリケーションも多い。HDDは容量増と価格下落により、大半のワークロードには十分対応できる」

 HDDには主に面密度や読み取り/書き込みヘッドのパフォーマンスの点で幾つか制限があるが、16TBのドライブが広く利用可能になっている。Seagate TechnologyはHAMR(熱補助型磁気記録)という技術によって、数年以内に100TBのドライブが実現すると示唆している。

 SSDの容量も急速に増加しているが、HDDのレベルに近いものは非常に高価になるか、複数のフラッシュドライブを組み合わせるサブシステムを必要とするか、その両方になる。

 HDDが好まれる大きなポイントはやはりコストだ。最も高価なSSDはSamsung Electronicsの15.3TBのTLCドライブで、3000ポンド(約42万円)という目を見張る価格だ。それに対してSeagateの16TBのHDD(訳注)は400ポンド(約5万6000円)だ。

訳注:原文は「16TB Seagate SSD」となっているが「HDD」の誤りと判断した。文脈的整合性がなく、価格も信じ難い。16TBのHDDは4万〜6万円台(2021年1月時点)で販売されている。

 多くのストレージアレイで使われている低容量のHDDでもコストの利点は変わらない。その差は1GB当たり4倍から10倍にもなる。ただし、その差の程度は耐久性、パフォーマンス、インタフェースなど、フラッシュストレージの種類によって異なる。

HDDのユースケース

 これらの要因により、企業が依然HDDを購入するのは驚きではない。IT部門や事業部門の以下の分野には相変わらずHDDが適している。

バックアップ

 フラッシュストレージが費用対効果の高い選択肢になることはほとんどない。

 フラッシュストレージからHDDへのバックアップや、オンサイトからオフサイトのデータセンター、DR(災害復旧)サイト、クラウドへのバックアップを行う企業が増えている。バックアップソフトウェアはバックアップタスクをバックグラウンドで実行し、HDDのパフォーマンスの低さを補う。サーバやワークステーションのバックアップをオフィス内で実現する場合やオフサイトバックアップのステージングを行う場合は、HDDベースのNASが経済的な方法になる。

アーカイブ

 コンプライアンス上の理由と将来の分析の両面からデータをアーカイブする重要性が高まっている。オンサイトのアーカイブでもオフサイトのアーカイブでもHDDが大幅に安価であることは変わらない。

分析と研究開発

 分析の進化は、データの長期アーカイブとウォーム/コールドデータストレージの境界を曖昧にしている。

 分析や研究では多くのデータを長期間保持する傾向があり、少なくとも現時点ではHDDの大容量が好まれている。

 センサーやIoTの利用が増えるにつれ、生成されるデータも膨大になる。データを最大限に生かしたいと考える企業にとっては、ストレージのパフォーマンスよりも容量とコストの方が重要だ。

アプリケーション

 多くのアプリケーションでは、ストレージのボトルネックは大きな問題点にはなっていない。CRMやERPなどは最新世代のSANで十分適切に機能する。

 高速なストレージにアップグレードすればパフォーマンスは向上するだろう。だが、LANがボトルネックになる可能性がある。

 HDDはシーケンシャルアクセスを必要とするアプリケーションに適している。フラッシュストレージは高度な分析、AI、ハイパフォーマンスコンピューティング、インメモリデータベースに最適だ。

ハイパフォーマンスシステムをサポートする下位層のストレージ

 要求が厳しい環境でも、フラッシュに格納されるのは最も頻繁に使用されるデータのみだ。他のデータはHDD、クラウド、またはテープに階層化される。階層型ストレージは、アプリケーションに影響を及ぼすことなくメディア間でデータをスムーズに移動する。仮想化には独自のオーバーヘッドがありシステムを適切に設計しなければならないが、フラッシュ単独で賄える程度のデータ量で機能するハイパフォーマンスシステムはほとんど存在しない。

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