ネットワーク事業者も驚いた、テレワークの技術的な課題企業を悩ませる課題とは

新常態は何を変えたのか。テレワークが引き起こした技術的な課題とは何か。ネットワーク事業者の予想を超えた変化とは何か。

2021年01月27日 08時00分 公開
[Joe O'HalloranComputer Weekly]

 ネットワークシステムとサービス、ソフトウェアを手掛けるCienaが英国の成人1000人を対象に、ロックダウン中とそれ以前のインターネット利用状況を調査(2020年5月)した。すると69%が少なくとも部分的にテレワークをしていることが分かった。この割合はコロナ禍対策が導入される前の9%から大幅に増えた。

 これは一時的な変化ではない。この調査では3分の2以上(68%)が、ロックダウン緩和後もテレワークの頻度を増やす見通しだと答えている。5分の3以上はコロナ禍前よりも頻度が増えると回答した。

 Tata Communicationsのグローバルネットワークサービス担当バイスプレジデントのソン・トー氏によると、従業員はオフィスを離れても仕事を継続でき、電話会議や電子メールを通じて同僚と協力し、会社のシステムにログインできることが分かった。

 ただしトー氏によると、安全なアクセスが必要な企業もあった。「金融業のような一部の業界は、従業員の私物端末にファイルをダウンロードできることを望まなかった。それは私物端末が信用できないからだ。プライバシーなどさまざまな理由から、従業員がスクリーンショットを取ることも望ましくなかった」

 グローバル通信機関のFleishmanHillardは、米国と英国でテレワーカー1000人を対象に調査を実施した。ロックダウンに伴って職場を離れ、デジタルツールを業務に使った従業員の考え方や経験を分析した結果、リモートコミュニケーション技術を使った従業員は全般的にポジティブな経験をしていて、テレワークには課題もあるが実質的にはメリットがあったことが分かった。

 テレワークにはワークライフバランス上のメリットがあったという回答は85%に上り、デジタルコミュニケーションが台頭していることをうかがわせた。

 FleishmanHillardは結論として、従業員は得たものを手放したくないと思っており、企業は柔軟な働き方を維持する必要があると指摘した。

 「一部の企業が物理オフィスに戻るための計画を立て始める中で、従業員の大多数は『通常の』働き方に戻ることを望んでいないことが分かった」。FleishmanHillardの上級パートナー兼技術担当グローバルマネージングディレクター、ソフィー・スコット氏はそう語る。「職場でしかできないと思っていた仕事ができるようになり、従業員は自分たちがテレワークを楽しんでいることに気付いた」

テレワークのための技術的課題

 Hitachi ID SystemsとPulseの調査によれば、CIO(最高情報責任者)はテレワーカーに受け入れられる環境を維持するために困難を強いられていた。

 北米の大企業と中堅・中小企業に勤務する役員クラス100人を対象に実施した調査(2020年5月)では、新常態への対応でITチームが突き当たった最大の障壁を調べた。その結果、回答したCIOの95%がテレワークシフトを加速させて以来、IT部門は非効率性に足を取られてきたと振り返った。

 最大の課題は従業員のパスワードロックアウトで、回答者の71%がこのために生産性に悪影響が出たと答えた。55%で2番目に多かったのは、オンプレミスのアプリケーションにアクセスできないという問題だった。43%は多段階認証の問題を経験し、安全でなくサイズも不十分なVPNの問題は29%が挙げていた。

 モバイルワーカーの激増や、VPN経由でセキュアなアクセスを試みる従業員の激増が、企業にとって問題になるだろうことは予想されていた。従来のVPNは大規模導入する設計にはなっていなかった。

 NordVPNの調査によると、ロックダウン後のほぼ1週間でVPNの利用が165%増え、全体的な売り上げは約600%増加した。

 Tataのトー氏もVPNとスケールに関連した問題を強調し、最大手のネットワーク技術サプライヤーでさえも、テレワークがこれほど激増するとは予想していなかったと指摘する。「従業員の95%がテレワークできる規模にVPNを設定していた企業は少なかったと思う。恐らくは20〜30%程度だろう」

 だがトー氏は、ホームネットワークのニーズ急増で明らかになったもう一つの問題にも言及した。「シングルサインオンを設定していれば、必ずしもアプリケーションへのアクセスにVPNを使う必要はない。会社のネットワークを経由するのは少々不自然だ」

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