ロックダウン中の従業員を支えたMicrosoft Teams活用テレワーク中のコラボレーション【後編】

採用コンサルタント会社のHarvey Nashは、ロックダウンによって一部の従業員を一時帰休とした。同社はMicrosoft Teamsを活用して「あなたは1人ではない」と伝え続けた。その真意とは何か。

2020年07月24日 08時00分 公開
[Cath EverettComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 7月1日号掲載)では、「Zoom疲れ」とそれを回避した社会福祉慈善団体Jami UKの事例を紹介した。

 後編では、Jami UKの事例の続きと一時帰休者のための専用ツールを整え「あなたは1人ではない」と伝え続ける採用コンサルタントの真意を紹介する。

事例:Jami UK(社会福祉慈善団体)の続き

 オンラインプラットフォームへの移行に伴うもう一つの予想外のメリットは、同団体の運営の在り方が一変したことだった。かつては4カ所の拠点に物理的なチームが配置されていた。だが今では、顧客と対面しない活動やオンラインプログラムの提供など、サービスに応じて仮想チームが結成されるようになった。

 「地域ではなくユーザーが必要とするサービスに各チームがフォーカスするようになり、リソースの効率性が大幅に向上した」とカーモード氏は語る。「人材のスキルを活用する方法も変化した。単に何のために採用されたのかではなく、実際に何ができるかに目を向けるようになった」

 新型コロナウイルス危機がもたらしたプレッシャーは、単に不自由だっただけではない。「そのおかげで私たちは大胆になれた」と同氏は言う。話し合いを重ねた末の形式的な組織の変化ではなく「全てを宙に投げ出して、どこに着地するかを見極める機会」が与えられたと振り返る。

 同時に課題もあった。同団体の職員61人と1300人余りのサービス利用者のうち、相当数は技術の利用に不安があり、アクセスもできなかった。

 職員にはノートPCを支給して研修も実施したが、一部は数週間の間生産性が低下し、自信を持って効率的にシステムを使えるようになるまで孤立状態に置かれた。クライアントについては、リモートのサポートを実現するためのタブレットとSIMカード、「TeamViewer」ソフトウェアを約45人に提供する目的で資金集めキャンペーンを実施している。

 「アクセシビリティーはこれまでもずっと介護における真の問題であり、スタッフに柔軟な働き方を提供することと真に並行していた。だが今、私たちはパンデミックの中でこの種の技術がいかにパワフルで影響力が大きいかを目の当たりにし、恐らく以前からニーズが存在していたことも分かった。これを今後のソリューションの一部としなければならない」とカーモード氏は話している。

事例:Harvey Nash(採用コンサルタント)

 グローバル採用コンサルタント会社のHarvey Nashはロックダウンの間、一時帰休中のスタッフに引き続き組織の一員だと感じてもらうためにMicrosoft Teamsの利用を拡大した。

 同社は世界で約3000人いる従業員のうち、英国の約90人とベルギーの約90人を一時帰休とした。導入済みだったMicrosoft Teamsを調整して、一時帰休対象者のニーズに応えるための専用プラットフォームを創設した。

 Harvey NashのCEOベブ・ホワイト氏は言う。「われわれが進出している全ての国で、全ビジネスを横断するコラボレーションを実現するためにYammerを立ち上げたばかりだった。だがそうしている間に、一時帰休となったスタッフから同じイノベーションを奪っていることに気付いた。心の健康を保ったり体調を整えたりする方法について誰もがアイデアを共有しているのに、一時帰休者がそれに一切アクセスできないことが気掛かりだった」

 専用プラットフォームがあれば一時帰休者に自主的な研修の機会を与え、同じような状況にある人たちが互いに支え合うこともできるとホワイト氏は考えたという。

 「あなた方は見捨てられたわけではなく1人でもないと伝えることは、本当に大切だと感じている。私たちはあなたのことを考えていて、この困難なときを通じてあなたを支えるためにこれを提供しようとしている、と」

 これまでに対象者の約20%がこのプラットフォームを利用している。ホワイト氏は1週間ごとに同社の現状を報告し、健康や衛生に関するコンテンツなどを提供している。ユーザーは必要があれば「Wagestream」を利用して自分の未払い賃金を引き出すこともできる。

 同システムは誰にとっても関係のあるグローバルなコンテンツの提供を徹底すると同時に、各国の担当者が地元のイベントや祝日のカレンダーなど独自のコンテンツを掲載することもできる。

 このシステムの提供と同時に、Harvey Nashの人事部は一時帰休者と個々に連絡を取ってサポートし、必要があれば支援が受けられることを伝えている。その主な目的は、スタッフとの関わりを増やして離職を防ぐことにある。

 「われわれのアプローチは、仕事に復帰したときにものをいうだろう。これで自分がまだ会社との関わりや相互の関わりを持っていると感じてもらい、疎外感を感じずに済む助けになればと思っている」とホワイト氏は話す。

 システムそのものは、将来的にも産休や育休、長期間の病気休暇を取得する従業員が仕事に復帰しやすくする目的で利用できるかもしれないとホワイト氏は言う。

 「目的は、しばらく働いていなかった従業員の復帰を支援することにある。一時帰休であれ職場復帰であれ、問題は同じようなものだ。これは非常にエキサイティングかもしれない。このアプローチは将来的に、従業員にとって真の価値があることが実証される可能性がある」とホワイト氏は話している。

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