あらやるコミュニケーションを電子メールで行った結果、生産性の低下が問題視されるようになって久しい。電子メールに代わるコラボレーション手段とは何か、注目すべきベンダーはどこか?
電子メールは20年という比較的短期間に幅広く普及した。しかし、この便利で単純だった普遍的コミュニケーションツールも負担へと変わりつつある。スマートフォンの主な購入理由の1つが、こうした電子メールの負担に対処することだという。
仕事関連の電子メールが勤務時間外にも数多く届くようになった。2012年5月に米iPassが実施したアンケートでは、回答した社員の半数強が1日の最初の電子メールを出社前に送信し、約4分の3が1日の最後の電子メールを退社後に送信していることが分かった。このうち、9%は子どもを寝かしつける時間帯に、28%は自身の就寝時に最後の電子メールを送ったと回答している。
電子メールが本来とは異なる目的で使用され、有効性が損なわれていることはほぼ間違いない。では電子メールに代わる手段はあるのだろうか? ITサービス企業の仏Atosはこのように考えたのだろう。少なくとも、同社CEOのティエリー・ブリトン氏はこのように考え「Zero Emailイニシアチブ」を導入したことは間違いない。「Zero Emailイニシアチブ」とは、社内のコミュニケーションに電子メールを使用することを禁止し、よりソーシャルなコミュニケーションツールに移行しようとする取り組みだ。この取り組みが全ての社員に適切かどうかは議論を要する。しかし、大半の企業や個人は変わる必要があると認識している。Atosによれば、2年以上にわたるこの取り組みの中で、社員が自由に使える作業時間が増えたという。
問題の一端は、数多くのニーズを満たすために電子メールを普遍的に(ただし、多くの場合は不適切な形で)応用できることにある。電子メールは、情報の保存場所、責任転嫁の手段、「プレゼンティーイズム」の実証(少なくとも仕事をしているフリをする手段)として使われている。あらゆるデスクトップコンピュータやモバイルデバイスに電子メールツールが備わっているため、電子メールは強力かつ柔軟でほぼ普遍的なツールになっている。だが、誤って別人に返信したり、相手が望まなくても全員にメッセージを一斉送信するなど、意外とミスが起きやすいツールでもある。
問題は、電子メールのコミュニケーション形式が包括的すぎる点にある。企業コラボレーションを極めて簡単にサポートできる一方で、その普遍的な性質により、手に負えない状況に陥りビジネスプロセスとの調整が効かなくなりやすい。そしてそれは、ほぼ全ての社員が自身の目的に気付くまで、つまり、「今すぐ電子メールをチェックしなければ」ではなく、「目標に向かって今すぐ仕事をしなければ」と考えるまで続く。
1人が複数の人とコミュニケーションを取ったり、メッセージをやりとりする方法はたくさんある。だが、共通の目的に向かって密接に結び付くと、コミュニケーションはコラボレーションに変わる。コミュニケーションを「相互認識のレベルを高めること」と定義すると、コラボレーションの定義には「1つの目標に向かって協力するために」という文章が追加される。
「協力」(コラボレーション)にはさまざまな側面があり、「C」で始まる5つの単語で表現することができる。応答性の高いコミュニケーション(Communication)、以前のワークフローと同じ連携(Co-ordination)、コンテンツ(Content)の共有、相談(Consultation)、チーム(仮想チームも可)を意味する共同作業者(Co-worker)の5つだ。
このような側面を1つでも自動化できれば、コラボレーションが向上したといえる。
応答性の高いコミュニケーションを実現するテクノロジーは非常に簡単に見つかる。ピアツーピア、同期方式など、多様な通信方式を利用する多くのテクノロジーが存在する。実際の課題は、それらのテクノロジーを統合することだ。
しかし、ユニファイドコミュニケーションのツールやプラットフォームはなかなか普及しなかった。少なくとも米Microsoftの「Lync」が登場するまでは。問題は、効果的なコミュニケーションの実現ではなく、インターネットプロトコルによるテレフォニーやコスト削減を重視するのがあまりにも早すぎたことだ。
ユニファイドコミュニケーションの真価は、通信のコンテキストと個人のプレゼンスを細かく把握することにある。この点はインスタントメッセージングプラットフォームに十分生かされたが、作業効率を上げるにはプレゼンスのような機能を例外なく導入する必要がある。そのため、より統合範囲の広いユニファイドコミュニケーションに移行することは難しいことが分かった。
デスクトップに力を入れていたMicrosoftは、「Office Communicator」をLyncにシフトする際、テレフォニーの観点からユニファイドコミュニケーションを推進する他社よりもかなり前からこの種の機能を視野に入れていた。恐らく、多くの個人ユーザーがインスタントメッセージングモデルを既に利用していたこともその一因だ。テレフォニーを統合するアプローチは電話よりもコンピュータが主流になりつつあり、これを認識するサプライヤーも出始めている。独Snomなどの企業が、自社のテレフォニー製品をLyncに統合しているのがその例だ。
次の段階は、複数のエンドポイント(固定エンドポイントだけでなく、モバイルエンドポイント)の利用に向けた継続的な進化だ。
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