モレスキンのツール&アプリが提案する「PowerPoint文化からの脱却」手帳ブランドによるデジタル革命

手帳ブランドとして知られるMoleskineが今、紙とデジタルの融合による新たな文化を提案している。同社の製品は“PowerPoint疲れ”している企業文化に一石を投じる。

2020年02月10日 08時00分 公開
[Cliff SaranComputer Weekly]

 Amazon.com(以下Amazon)は書籍の買い方を一変させた。そのAmazonが株式を公開したのは1997年のことだ。その後、同社は生活のほぼ全ての部分に事業範囲を広げていく。

 同じ1997年、ミラノの出版社Modo & Modo(現Moleskine社)がMoleskineブランドを生み出している。

 Amazonがデジタルディスラプターになったのに対し、Moleskineは独自の変革を生み出し、紙とデジタルの世界をつないでいる。そう話したのは同社でデジタルイノベーションの責任者を務めるピーター・ジェンセン氏だ。「当社は創造性を高める企業だ」と同氏は補足する。

スマートノート

 2018年2月、Moleskineは紙とデジタルの橋渡しを目的として、書き取り、スケッチ、計画向け製品「Smart Writing System」を発表した。NeoLAB Convergenceと共同開発したSmart Writing Systemには「Paper Tablet」「Smart Notebook」「Smart Planner」などが含まれる。

 2019年5月、同社はDropbox社との提携の成果として「Dropbox Smart Notebook」と「Moleskine Page Camera」アプリをリリースした。同社によると、これらのアプリは紙に書かれたメモや図面を取り込んで「Dropbox」に転送できるという。

 「Microsoft PowerPoint」は、プレゼンテーション用としては優れたツールだ。だがその目的は最終成果物を作成することだとジェンセン氏は言う。「プレゼンテーションは企業ドキュメントで、あらゆる面で完璧でなければならないという非常に現実的な感覚がある。全てが完璧でなくてはならない」

PowerPoint疲れ

 ジェンセン氏は、アイデアの交換はもっとフランクなものであるべきだと考えている。「PowerPointのようなツールでは、内容よりも形式を整えることに多くの時間を費やしてしまう」と同氏は言う。

 Dropbox Paperのようなコラボレーションツールを利用することで、議論の参加者は文法や文体の間違いを受け入れやすくなる。議論の焦点はアイデアそのもので、それをいかに良く見せるかではないとジェンセン氏は言う。

 「当社は、担当者が直接会うことなく最初のアプリケーションをリリースした。だが、短い議論を行った」と同氏は言う。このプロジェクトに関わった担当者は、簡潔に自分のアイデアを示すことができた。たとえアイデアが却下されたり改善策を提案されたりしても、がっかりすることはなかった。それは、PowerPointスライドの作成に多くの時間を費やしていなかったためだ。

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 ドキュメント共有から会話型ツールへの移行は、従業員の働き方と共同作業の方法を変えるとジェンセン氏は言う。例えば「100ページに及ぶPowerPointスライドに変更を加えることになったら、その日の残りの勤務時間を全て費やすことになるだろう」と同氏は言う。

 会話型ツールではやりとりの性質がもっと軽量になる。従業員は複数ページのドキュメントを読んだりPowerPointスライドに目を通したりして、議論に対する他の従業員の意見を理解するのに多くのエネルギーを費やさなくてよい。

 ジェンセン氏にとって、会話型ツールは会話から形式を取り除く。「形式よりも機能が優先される。目的はアイデアを共有することで、最終成果物ではない。これは非常に良い循環だ」と同氏は言う。

紙のノートの未来

 高度にデジタル化された職場でも、紙のノートにアイデアを書き留めるのを好む人は多い。このようなメモは個人的なものだった。完璧に整えられたPowerPointスライドを要求する企業文化においては特に、メモを簡単に共有できる方法では記述しなかった。だが、今後は紙に書き留めたアイデアをオンラインで利用できるようにするという考え方が進化するだろう。

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 Moleskineは書き取りストロークを認識してテキストに変換するSmart Penと、紙に書かれたメモを画像として取り込むアプリを提供している。ジェンセン氏は、Dropbox Smart Notebookは近いうちにメモを「Microsoft Word」文書に変換するようになるだろうと言う。

 「Smart Penは高い確率で文字を正確に読み取る。そしてここ1年半で画素に変換された手書き文字の認識精度は高まっている。多くの企業が画像認識用人工知能に投資しているためだ」と同氏は言う。

 紙の黒い手帳で有名な同社にとって、デジタル時代におけるある程度の不可知論を達成したと感じているとジェンセン氏は言う。「Montblanc製の万年筆やSmart PenでMoleskineの手帳に書き込めば、そのアイデアを即座にクラウドのWord文書に取り込むことが間もなく可能になるだろう」とジェンセン氏は話す。

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