他社アプリとの統合を進めるSlackの無視できない最新動向「Slackは単なるメッセージツールではない」

Slackはメッセージングツールの枠を超えた存在になろうとしている。サードパーティーアプリケーションとの統合もその動きの一つだ。Slackは他に何をしているのか、最新動向を紹介する。

2020年01月10日 08時00分 公開
[Aaron TanComputer Weekly]

 「Slack」は1200万人ものユーザーベースを抱え、従業員が社内外でコミュニケーションを取る方法を大きく変えている。Slackユーザーがこのメッセージングツールを操作する回数は毎週50億回にも及ぶ。アジア太平洋地域では、日本、オーストラリア、ニュージーランドだけでもアクティブユーザー数は128万人に達する。

 だが、Slack TechnologiesはSlackを単なるメッセージングツールとは捉えていない。APIを使って「SAP Concur」などのエンタープライズアプリケーションと統合することで、従業員が毎日利用するソフトウェアの重要な機能にアクセスできる1つのワークスペースを用意する。

会員登録(無料)が必要です

 例えばConcurを経費管理ツールとして使っている場合、Slackで経費を記録できる。ただし経費報告書を提出するには、ConcurのモバイルアプリケーションかWebサイトを利用する必要がある。

 サードパーティー製のアプリケーションの方が適切に行えるタスクがあると考えているため、こうしたことを意図的に行っている。本誌のインタビューに答えてそう語ったのは、Slack Technologiesでデベロッパーリレーション部門のディレクターを務めるベアー・ダグラス氏だ。「Slackが本当に力を発揮するのは、何が起きているかについて人々が話し合う必要があるときだ」と同氏は話す。

 ダグラス氏は、作業者がSalesforceダッシュボードを作成した例に挙げた。タスクがSalesforce自体で行われているとしても、同僚はSlackのスレッドでそのダッシュボードを参照できると述べた。

 「当社がパートナーに構築するよう勧める統合は、経費報告書の承認のようにサードパーティー製アプリケーションの強みを必要としない作業をユーザーが調整できるようにすることだ」(ダグラス氏)

アプリランチャー

 ダグラス氏によれば、Slackに統合されるアプリケーションをユーザーが見つけやすくなるように、インストール済みのアプリケーションを表示するアプリランチャーを開発中だという。

 またSlack Technologiesは、最近開催したデベロッパーカンファレンスで「Actions From Anywhere」(どこからでも操作)という考え方を掲げた。これは、ユーザーはキーワードを使ってタスクを開始できるという考えだ。「例えば『expense』(経費)と入力すれば、経費承認を可能にする操作が起動される」とダグラス氏は話す。

 Slackは従業員のコミュニケーションを助け、オフィスの生産性を高めるだけではない。企業がパートナーや顧客などの社外関係者とコミュニケーションを取るためにも使われている。

 「顧客サポートの分野に興味深いことを取り入れている企業もある。そこでは共有チャネルを作成して顧客サポートの質問に答え、パートナーとコミュニケーションを取っている」とダグラス氏は述べ、この共有チャネルは既に2万社が利用していると補足する。

 サードパーティー製アプリケーションとの統合を促し、ユーザーエクスペリエンスのレベルを上げることを重視するSlack Technologiesの取り組みは、ライバル企業Microsoftに対抗する鍵になっている。Microsoftは最近、「Microsoft Teams」と「Microsoft Outlook」の新たな統合とプライベートチャネルの導入を明らかにした。このプライベートチャネルはSlackが既にサポートしているものだ。

 Slack TechnologiesはMicrosoftのように自社の地位を高めるため、データレジデンシー機能を発表した。この機能でデータを保管する国や地域を選択することで、企業はコンプライアンス要件やデータ主権に関する要件を満たすことができる。

 米国外で利用できる最初のデータ保管地域はドイツのフランクフルトになる予定だ。2020年第1四半期には日本とオーストラリアにもデータ保管地域を展開することが計画されている。

 ダグラス氏によると、企業やソフトウェアのサードパーティーサプライヤーが抱える潜在的なセキュリティへの懸念についての対処として、Slackからサードパーティー製アプリケーションに送られる要求を検証するためにSSL暗号化、検証トークン、相互TLSなどの保護策を取っているという。

 Slack TechnologiesのセキュリティプログラムはISO 27001、Service Organization Control(SOC)3など、多くのセキュリティ規格を使って自社のサービスの認定を行っている。さらに、同プログラムは業界固有の規制やヨーロッパの一般データ保護規則(GDPR)のような国際データプライバシー規格を企業が満たせるよう支援する予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

AI&自動化で生産性やコストはどう変わる? 次世代セキュリティ基盤の価値とは

サイバー侵害を特定して封じ込めるために平均で280日の日数がかかるともいわれる中、セキュリティ対策には進化が求められている。そこで注目されるクラウド型シングルプラットフォームを取り上げ、期待できるビジネス価値を解説する。

製品資料 株式会社マヒト

“名刺切れ”防止にも有効、申請・承認がしやすい名刺発注システムとは?

営業活動においては特に重要なツールである「名刺」。切らさないことを前提に発注・管理しておく必要があるが、発注作業には手間がかかる。そこで注目したいのが、名刺申請から発注までのワークフローを構築できるサービスだ。

製品資料 株式会社マヒト

総務・人事の悩み、名刺の用意から“面倒くさい”をなくすには?

名刺の作成・発注業務は手間がかかる。従業員数が多ければ多いほどその負担は大きくなる。「発注作業が面倒」といった悩みを抱える総務・人事担当者は多いだろう。これらの課題を解消し、名刺の作成・発注業務の負担を軽減する方法を探る。

製品資料 株式会社マヒト

高額なソフトは不要、名刺のデザインにもこだわるなら選びたい発注管理サービス

名刺作成業務において、「個別に発注するとコストが増大する」「デザインに統一感がない」などの課題を抱えている企業は多いだろう。そこで、無料で利用でき、名刺デザインの統一性を保ちながら業務負担を軽減できるサービスを紹介する。

製品資料 株式会社スタディスト

作業を撮った動画だけでは活用されない、動画マニュアルのよくある失敗と解決策

多くの企業で業務マニュアルを動画化する動きが活発化しているが、ただの作業動画では活用されないケースも多い。動画マニュアルの活用に当たって重要になるポイントとともに、それらを容易に実現できるサービスを紹介したい。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...