コミュニケーションのためのソーシャルツール選定と社内展開の勘所Computer Weekly製品ガイド

ソーシャルツールはコラボレーションの向上につながり得る。ただしスタッフをメッセージ漬けにしてはいけない。

2019年11月28日 08時00分 公開
[Rob BamforthComputer Weekly]

 コミュニケーションは欠かせない。だがあまりに大量の電子メールや電話といった割り込みが入ると、情報過多を引き起こして集中力がそがれる。もっと良いコミュニケーションの方法はあるだろうか。

過重コミュニケーション

 企業がこれを活用できれば生産性の向上につながるはずだが、新しいツールセットが結果的に情報過多を招くリスクは依然として存在する。最善のアプローチの選定は、ユーザーエクスペリエンスと人気度、柔軟性のバランスを取り、コントロールとセキュリティ、耐久性を組み合わせる作業になる。

 全てのソーシャルツールは基本的な要素として、コンテンツ(保存や共有の手段)、コミュニケーション(一般的には構造化されないタイムラインまたはフロー)、コントロール(秩序やグループを復元する仕組み)の3機能を備える。理論的には、そうした機能は全て「従来型」のコミュニケーション&コラボレーションツールにも備わっている。だがソーシャルツールはシンプルかつ魅力的であることを目指し、社会的交流、すなわち義務感ではなく使いたいと思わせることによって普及を促す点に違いがある。重点の違いは持続する。どのシステムが自組織にとって最適なのかを判断するためには、何を優先するかを見極めなければならない。

 どんな組織にとっても、情報を把握し続けることは継続的な課題になる。個人やグループが持つ情報に他者がアクセスするのは難しいこともある。全てを1カ所に集めてアクセスできるようにすれば非常に有用なはずだ。

 組織のデータを保存するためのツールや電子文書管理システムは以前から存在していたが、重点は交流や社内の情報共有、コラボレーションへとシフトしつつある。

 これができるツールはいくらでもある。

 クラウドストレージを使ったシンプルなファイルおよびフォルダ共有ツールの「Dropbox」「Box」「Google Drive」「iCloud」「Microsoft OneDrive」などは出発点になり得るが、多くはそれ以上の構造性やコントロールを必要とする。「Clinked」「Huddle」「Tresorit」といったツールはセキュアな外部共有やトレーサビリティーに重点を置いているのに対し、「Samepage」「Beekeeper」「Microsoft SharePoint」などは、さまざまな種類の端末を横断するアクセスの移動性に重点を置いている。Unilyの「Digital Experience Cloud」のエクスペリエンスエンジンはさらに一歩先に踏み込み、ユーザーのプロファイリングと分類を行って、それぞれのニーズに合わせてエクスペリエンスを調整できる。

 クラウドベースのソリューションはどこからでもアクセスできなければならない。だが、モバイルからのアクセスが第一に求められる組織は、機能が限られるモバイルユーザーならではのニーズに合わせて設計された技術を使うメリットが大きい。複数の種類のデータに対応できる機能も、特にさまざまな端末からアクセスする必要がある場合は一つの要素になる。「Confluence」「Podio」「Redbooth」「Jostle」といったツールは、画像や動画といったリッチメディアを保存して簡単にアクセスすることが可能だ。一方でストレージに制限があることは覚えておかなければならない。

 運用プロセスや条件は組織によって異なる。柔軟性は重要だが、コンテンツに対してコントロールが適用されるほど、それに関連したビジネスプロセスに合わせるのは容易になる。情報のフロー管理や監査のためにコントロールやワークフローを作成できる機能は、業界によっては必須だ。それ以外のほとんどの業界でも、作成が簡単であれば非常に役に立つ。

 最も基本的な部分では、グループやチームを作成してコンテンツ管理を通じたアクセス管理を行い、タスクやToDoリストを通じて一定のコントロールがかけられる手段がなければならない。そのいずれも、ほとんどのソーシャルツールでは一般的だ。中にはビジネスプロセスにもっとうまく合わせられるよう、さらなる運用コントロールを適用できるツールもある。「Workzone」「Intranet Connections」「Nuxeo」「Zoho Connect」はカスタマイズ性が高く、承認ワークフローとタスク共有機能を備える。他にも「Bitrix24」や「Clarizen」は、プロジェクト管理ツールのユーザーになじみのあるタスク指向のアプローチを提供する。

 会話を始めたユーザーに合わせたメッセージとしてのコミュニケーションの流れ、関心分野、あるいはグループは、ソーシャルツールの差別化を図る要素だ。企業用途に当てはめた場合、ほとんどの目標は個人と組織にとって重要なトピックやプロセスに基づいてスレッドにまとめたタイムラインやフローを提供すること。それによって電子メールのような「レガシー」なコミュニケーション手段の負担を部分的に置き換えることにある。

 「Slack」は一部の組織で電子メールの代替として人気を集めているが、多くの企業では依然として電子メールが残り、コミュニケーション過多に拍車を掛けている。「IBM Connections」は既存の電子メールとカレンダーシステムを強化型コンテンツ管理システムに統合し、従来型の業務慣行への取り込みやすさを図っている。

 他にもJostleのように、古くなった無関係のコンテンツやメッセージを片付けることによって簡素化を図っているメッセージストリーム指向のプラットフォームもある。「Jive」「MangoApps」「XWiki」などは、よく利用する組織の関連情報にアクセスしやすい魅力的なポータルを提供することにより、それを実現する。

 多くの組織にとって、ソーシャルツールの導入はプレゼンス確認(オンラインかどうか)、即時通知、反応(相手に届いたことの確認)を中心としたメッセージングから始まる。導入が拡大すれば、個人のハブが集まって、短いメッセージを手早く共有するようになる。その実例は、「Yammer」などのショートメッセージシステムの進展に示されている。YammerはMicrosoftに買収されたが、重複するSharePointや「Microsoft Teams」などのコラボレーションツールとYammerとの間で混乱が起きる可能性もある。

 コミュニケーションツールが過剰に存在する状態は誰の助けにもならない。そこで集合性を高める狙いで他のアプリケーションを統合し、共通のプラットフォームの一部として利用できるようにしたツールも浮上している。コンシューマー向けのソーシャルメディアとして独占的な存在のFacebookは有力だ。同社の製品「Workplace by Facebook」はなじみがあり、既存の仕事用ツールに接続でき、どんなソーシャルメディアでもそうであるように、組織で活用されるほど価値が高まる。

 組織によっては、過度に親しまれ過ぎていることが、特にスタッフが仕事と私生活を区別することが難しい場合は問題にもなり得る。だが、それでも統合型プラットフォームは助けになるかもしれない。プラットフォームとして提供されているソーシャルツールは他にもある。例えばSprinklrの統合型プラットフォームは、組織を横断する社内外の活動のさまざまな側面を集約できる。「Flock」は既存の業務用アプリケーションや他のソーシャルツールと連携できる仕組みを提供する。

ユーザーの抵抗に注意

 全てのソーシャルツールは草の根的なユーザーのニーズを通じて有機的かつウイルス的に成長する。これは向上を指向する一部の組織にとってはやや遅く感じるかもしれない。だが典型的なエンタープライズITの導入はトップダウン方式で強制感を感じさせかねず、心から支持されずユーザーに抵抗されることもある。

 ソーシャルツールの導入を最大限に活用したいと思う組織は、単純に強制するのではなく、採用を促すためのユーザー中心の手段を確立して基本的なトレーニングを行った上で、従業員による切り替えを期待しなければならない。そのための方法は多数ある。ほとんどの企業には、新技術採用に際してのリーダーあるいは推進役と同僚から見なされている人物がいる。もしそうした人物を育成して、ユーザーコミュニティーに「種をまく」主導的な役割を果たしてもらえば、他のユーザーの注目や関心を集めることができる。

 サプライヤーが採用を加速させるためのサービスやツールを提供していれば、それについて調べる必要がある。一部のスタッフは、ソーシャルメディアのゲーミフィケーションの部分に魅力を感じるかもしれない。報酬や賞品、競争によって全員を突き動かすことはできないかもしれないが、大抵の場合ゲーミフィケーションは義務化や強制よりもうまくいく。

 単純に「使い方」を教えるだけでなく、「コラボレーションを最大限に活用する理由とやり方」を伴うアプローチが望ましい。一部のサプライヤーは、自分たちの製品の普及や利用を促すためのスタートアップサービスやコンシェルジュサービスを提供している。ただうまくいくことを祈るより、あるいは上級管理職から指示を出すよりも、そちらの方がずっと効率的かもしれない。

事業価値を高める

 事業価値を高めるために、ツールはソーシャルメディアの自由で多様な特性と、エンタープライズコントロール、構造性を組み合わせる必要がある。普遍的に利用され、単に容認されるのではなく好まれなければならない。ソーシャルメディアとして提供されるコミュニケーションのタイムラインは的を射ていてパーソナライズされ、簡潔でなければならない。そして「広告」の意図があってはならない。多様で柔軟性の高いリモートおよびモバイルワークプレースを支えるため、マルチモーダルやモバイルメッセージングも提供する必要がある。企業にとって、これは安全で確実でなければならず、さもなければ電子メールのような「古めかしい」手段の適切な代替にはならない。

 企業ソーシャルツールを導入する目的は、コラボレーションの向上と、従来型コミュニケーションへの依存を減らすことを目標としなければならない。だがそれは、個人と組織の両方がその向上の恩恵を受けられる場合にのみ達成できる。

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