オンプレミスのインフラとクラウドサービスを組み合わせて利用することが一般的になり、企業は運用管理が複雑になる問題に直面している。クラウドサービスへの移行の失敗も問題をややこしくしている。
企業の間でクラウドサービスの利用が広がっている。ただしオンプレミスのインフラを完全になくした企業はまれだ。
オンプレミスのインフラとクラウドサービスを併用する場合、クラウドサービスで運用するシステムに合わせてオンプレミスのインフラを最新化することが理想的だ。そうすればオンプレミスのインフラでも、クラウドサービス並みの効率性を実現できる可能性がある。だがこれは簡単ではない。
「1つの大規模なエコシステムに異種システムを統合することになる」と、Hewlett Packard Enterprise(HPE)傘下のCloud Technology Partnersでディスティングイッシュトテクノロジストを務めるエド・フェザーストン氏は話す。異種システムの統合は、アーキテクチャとしてはシステム統合の標準パターンの一つにすぎない。ただし以前の異種システムは全てオンプレミスのインフラにあった。クラウド時代は複数のパブリッククラウド、データセンターのインフラ、エッジ(データが発生する場所)のインフラなど全てを統合しなければならない。
多様なシステムを運用する企業の場合、異種システムの全てをクラウドサービスで運用するのは現実的ではない。「オンプレミスのインフラを少しも残さずに、全てのシステムをクラウド化するのは非常に珍しいケースだ」とフェザーストン氏は語る。クラウド化が難しいシステムもあることに加えて、クラウド化したとしても必ずしもクラウドサービスの恩恵を受けられない場合もある。
過去にクラウドサービスへの大規模な移行プロジェクトを実施した企業は、システムの一部をオンプレミスのインフラに戻す「オンプレミス回帰」(「脱クラウド」とも)をし始めている。クラウドサービスの恩恵を得ることができなかったシステムもあるからだ。主な理由としてシステムのアーキテクチャ、データの保管場所といったシステム設計の問題が挙げられる。クラウドサービスの恩恵がないだけでなく、システムの運用コストが増大した可能性もある。
MicrosoftやAmazon Web Services(AWS)といった大手クラウドベンダーは、この現実を受け入れ始めている。Microsoftは「Azure Stack」、AWSは「AWS Outposts」を提供し、オンプレミスのインフラでもパブリッククラウドの機能を利用できるようにすることで、顧客離れに対処しようとしている。
クラウドベンダーがこうした製品を提供する背景に「オンプレミスのインフラとクラウドサービスを組み合わせた『ハイブリッドクラウド』の運用管理が非常に複雑になる問題がある」とフェザーストン氏は述べる。Azure StackやAWS Outpostsはオンプレミスのインフラでもクラウドサービスでも同様の機能を利用できるため、運用管理の複雑さを軽減するのに役立つ。
「ライセンスを購入しているオンプレミスの製品が自社のデータセンターに残っている企業が少なくない」と、調査会社Forrester Researchでリサーチディレクターを務めるローレン・ネルソン氏は話す。ネルソン氏は、クラウドサービスでメリットを得られるのはインフラのリソースの用途が頻繁に変化する場合だと指摘する。変更の少ないシステムを長期的に運用するのであれば、オンプレミスのインフラの方がコストは安価になる可能性があるという。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
データ環境の急変は、企業のストレージ課題を複雑化させている。性能や拡張性、データ保護、分散環境の一元管理、コスト最適化など、自社の課題に合わせた製品・サービスをどう見つければよいのか。それに役立つ製品ガイドを紹介したい。
構造化データ/非構造化データの両方を適切に処理する必要がある今、エンタープライズデータストレージには、より高度な要件が求められている。こうした中で注目される、単一障害点のないAI主導の分散型ストレージプラットフォームとは?
CPUやGPUの性能向上に伴い、データセンターでは今、発熱量の増加にどう対応するかが課題となっている。特に高密度なサーバ環境では、従来のファンやヒートシンクに頼るだけでは熱管理が難しい。こうした中、企業が採用すべき手段とは?
HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。
カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。