クラウドデータ保護「DPaaS」とは? 使い倒す方法は?データ保護規制にも対処

バックアップやセキュリティ対策といったデータ保護のクラウドサービス「DPaaS」は、データ保護の運用効率化とデータ損失を防ぐ対策強化に有効だ。DPaaSを最大限に活用するヒントを紹介する。

2021年05月19日 05時00分 公開
[Paul KirvanTechTarget]

 データ保護の仕組みをクラウドサービス形式で提供するのが「DPaaS」(サービスとしてのデータ保護:Data Protection as a Service)だ。DPaaSを利用すると、企業はデータの一連の運用をクラウドインフラで実施し、簡単な操作だけでデータ保護の各種の機能を利用できるため、効率よくデータ保護の能力を高められる可能性がある。DPaaSを利用するメリットや、既存の業務にうまく取り入れる方法を紹介しよう。

DPaaSを使用するメリット

会員登録(無料)が必要です

 業務では大量のデータが発生し、そのデータからはさまざまな知見が得られる。データの損失を防ぎ、必要に応じてデータを活用できる状態にする必要性は、企業規模の大小に関係なく高まっている。

 アプリケーションごとに異なるデータ保護の方法を採用するよりも、データ保護に関連する作業を1つに集約する方が合理的だ。DPaaSは、データ保護に関連するさまざまな機能を提供する。例えば下記のような機能がある。

  • データへのアクセス制御
  • データの重複排除
  • データの保管とバックアップ
  • データのアーカイブ
  • データのセキュリティ確保
  • データのプライバシー保護
  • 災害復旧(DR)

 企業はEU(欧州連合)の「一般データ保護規則」(GDPR)や英国の「データ保護法」をはじめ、各種のデータ保護規制に対処しなければならない。DPaaSがデータ保護の各種規制を順守するための機能やサービスを備えている場合、監査やコンプライアンス(法令順守)の点でそのDPaaSを利用することは適切だと言える。データ保護の運用を一元化すれば、企業は自社のデータ保護に関する取り組みを説明しやすくなる。

 DPaaSの利用を検討する際は、オンプレミスのストレージとDPaaSを併用することも選択肢になる。ミッションクリティカルなシステムの場合は、データ保護にオンプレミスのストレージを使用することが珍しくない。オンプレミスのストレージによるデータ保護と、DPaaSのハイブリッド構成からスタートすれば、DPaaSを中心としたデータ保護への投資を全面的に拡大すべきかどうか、適切に判断できるようになる。

DPaaSを最大限に活用する10のヒント

 企業がDPaaSへの投資利益率(ROI)を最大限に高めるには、次の事項を検討するとよい。

  1. データ保護に関する自社の要件を整理し、データ保護に投資する重要性を確認する
  2. データのバックアップ、アーカイブ、レプリケーション(複製)など、自社が必要とするデータ保護の機能をまとめる
  3. 現在と将来の要件を踏まえて、既存のデータ保護の方法にDPaaSを加えることでどのようなメリットが得られるのかを確認する
  4. データのガバナンスやコンプライアンスにおける自社の要件を確認する。具体的には、DPaaSの利用によって順守すべき法規制や業界標準に応じられるかどうかを確認する
  5. データのバックアップとリストア(復旧)に関する現行の方法を確認し、DPaaSの導入によって最悪の事態からの復旧能力を強化できるかどうかを確認する
  6. DPaaSの段階的な導入の必要性を検討する。例えばまずは重要度の低いデータの保護に使用して、全面的に採用を拡大することを検討する
  7. 導入後はDPaaSによるデータ保護の機能を定期的にテストし、データ保護が適切に機能していることを確認する
  8. 利用するDPaaSの機能やリソースを増やす際は、自社のデータ保護のポリシーや業務プロセスを適切に更新する
  9. DPaaSを組み込んだ事業継続計画(BCP)とDR計画を作成する
  10. オンプレミスインフラ、マルチクラウド(複数のクラウドサービスの併用)、ハイブリッドクラウド(オンプレミスインフラとクラウドサービスの併用)などの自社のインフラ構成に応じて、DPaaSの適用範囲を積極的に広げる

 ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)などによる攻撃によって生じる重要なデータの損失は、自社の評判を落とすだけでなく、ビジネスの継続を左右する深刻な問題になる。DPaaSはデータ保護とビジネスの継続を、迅速に構築するための有効な選択肢になるだろう。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 Datadog Japan合同会社

事例に学ぶ、複数のクラウドやアプリ環境を統合的にモニタリングする方法

SOMPO Light Vortexは、アプリケーションごとに使用するクラウド環境が異なり、これらを横断的かつ統合的にモニタリングすることが困難で、大きな課題と感じていた。これを解決すべく、同社が採用したアプローチとは?

事例 Datadog Japan合同会社

クラウドのスケーラビリティに追従、システム全体の高度なモニタリングの実現策

オンプレミス時代からのシステム監視運用工数の大きさが課題となっていたサイバーエージェント。そこで同社が、クラウドコンピューティング移行を進める中で導入した、クラウドやコンテナ環境に対応する、高度な監視ソリューションとは?

製品資料 SCSK株式会社

GUIで見える化を加速、複雑なジョブ管理運用も楽にする注目のアプローチとは?

ITシステム運用の自動化が進む一方、ジョブ管理の複雑化も加速しており、状況把握や障害予測に課題を抱える企業が増えている。そこで注目したいのが、ジョブの見える化と自動化を加速する、あるジョブ管理製品の最新バージョンだ。

製品資料 株式会社野村総合研究所

IT統制のジレンマ、「運用・開発の分離」「品質・効率の改善」をどう両立する?

システム運用と開発の“分離”は、IT統制の観点からも重要だが、その実践にはさまざまな課題が付いて回る。IT運用の品質や業務効率を改善しつつ、IT統制もバランス良く維持するためには、どのようなアプローチが有効だろうか。

製品資料 株式会社野村総合研究所

IT環境がハイブリッド化した現代なのに、なぜ“今こそ運用内製化”なのか

クラウドやオンプレミスに分散し、複雑化しているITシステム。これにより情報システム部門がシステム全体を管理することが難しくなり、アウトソーシングが一般的になった。ただ、こうした状況こそ内製化に取り組んだ方が良いという。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...