「Visual Studio Marketplace」があるのに「Open VSX Registry」が必要な訳
無料の人気エディタ「Visual Studio Code」の拡張機能が抱える“厄介な問題”
「Visual Studio Code」用拡張機能を提供するマーケットプレース「Visual Studio Marketplace」。オープンソースの「Open VSX Registry」はその代替を目指すという。Visual Studio Marketplaceだけでは駄目なのか。
非営利団体Eclipse Foundationは2021年3月末、開発ツールベンダーTypeFoxに代わって「Open VSX Registry」を管理すると発表した。Open VSX Registryは、Microsoftのソースコードエディタ「Visual Studio Code」(以下、VS Code)用の拡張機能を提供するマーケットプレースだ。Microsoftが統合開発環境(IDE)「Visual Studio」の製品・サービス群向けに運営する拡張機能マーケットプレース「Visual Studio Marketplace」の代替を目指して発足した。
Visual Studio Code拡張機能のオープンソースマーケットが必要な“あの理由”
調査会社RedMonkのアナリストを務めるスティーブン・オグレーディ氏は「マーケットプレースは、コミュニティーにとって開発ツールの機能を拡張するための重要な手段だ」と考える。Visual Studio MarketplaceやOpen VSX Registryは、開発者が専用API(アプリケーションプログラミングインタフェース)「Extension API」を使って開発したVS Codeの拡張機能を提供している。
VS Code用拡張機能のエンドユーザーや開発者は「オープンソースの拡張機能マーケットプレースが必要だ」とオグレーディ氏は主張する。なぜVisual Studio Marketplaceがあるのに、Open VSX Registryが必要なのか。
Eclipse Foundationのエグゼクティブエディターであるマイク・ミリンコビッチ氏は、公式ブログのエントリ(投稿)で「Visual Studio Marketplaceは、MicrosoftのVisual Studio製品・サービス群を使用する開発者にとっては素晴らしいリソースだ」と評価している。一方でミリンコビッチ氏は問題も指摘する。Visual Studio Marketplaceが提供する拡張機能は、Visual Studio製品・サービス群でしか利用できないことだ。つまりVisual Studio製品・サービス群以外の開発ツールは、Extension APIに準拠していたとしても、Visual Studio MarketplaceにあるVS Code用拡張機能を利用できない。
MicrosoftはVisual Studio Marketplaceの利用規約に、次のように記している。
マーケットプレース(訳注:Visual Studio Marketplace)が提供する製品は、Visual Studio製品・サービス群と共に使用することのみを想定しています。Visual Studio製品・サービス群にインストールして使用することのみを許可します
そこでOpen VSX Registryの出番となる。Open VSX Registryは、VS Code用拡張機能のためのファイル形式「VSIX」(Visual Studio Extension)に準拠した拡張機能を提供するマーケットプレースだ。
MicrosoftがVisual Studio Marketplaceのソースコードを公開していない点も問題だと言える。開発者は、Visual Studio Marketplaceのソースコードを使って社内向けの拡張機能用レジストリ(保管場所)を構築したり、Visual Studio Marketplaceの機能強化に寄与したりすることができない。
「VS Codeには他にも複雑な要素が絡んでいる」と、開発ツールベンダーGenuitecで技術担当バイスプレジデントを務めるトッド・ウィリアムズ氏は語る。VS Codeのソースコードはオープンソースとして公開されているが、VS Code自体はオープンソースソフトウェア(OSS)ではない。ウィリアムズ氏によれば、これはMicrosoftがテレメトリー(遠隔情報収集)機能などプロプライエタリ(占有的)な要素をVS Codeに追加してビルドし、公開しているからだ。
プロプライエタリ要素がないFOSS(フリーオープンソースソフトウェア)版VS Codeは「VSCodium」という。VSCodiumは、Microsoftがプロプライエタリ要素として追加するVS Codeの機能を使うことができないため、「VS Codeの完全なクローン」としては機能しない。
Eclipse Foundationの後押しで何が変わるのか
TypeFoxは、VS Codeの代替を目指すオープンソースのIDE「Eclipse Theia」関連事業を強化するため、Open VSX Registryをホストしてきた。Eclipse Foundationはコミュニティーの利益のためにOpen VSX Registryをホストし、運営を引き受けた形だ。
今回の移管プロジェクトは、Eclipse Foundation配下のワーキンググループEclipse Cloud Development Tools Working Groupが支援した。Eclipse Cloud Development Tools Working GroupのメンバーにはBroadcom、EclipseSource、Ericsson、IBM、Intel、Red Hat、SAP、TypeFoxなどが名を連ねている。「われわれはコミュニティーへの貢献者や今回のプロジェクトに関心のあるメンバーと協力してきた。Eclipse TheiaやクラウドIDE『Eclipse Che』の普及促進に大きく貢献すると考えているからだ」とミリンコビッチ氏は語る。
Open VSX Registryにある拡張機能は、Extension APIに準拠する全ての開発ツールにおいて無料で利用できる。具体的な開発ツールとしてはEclipse CheやEclipse Theiaに加え、Eclipse TheiaをベースにしたIDE「Gitpod」、クラウドIDE「SAP Business Application Studio」がある。Open VSX Registryのソースコードはオープンソースだ。開発者はOpen VSX Registryの発展に貢献したり、ソースコードを自由に再利用したりできる。
本稿執筆時点で、Visual Studio MarketplaceのVS Code用拡張機能の登録数は2万7000件以上であるのに対し、Open VSX Registryに登録されている拡張機能の数は1100件強にとどまっている。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[ネットアップ合同会社] 金融庁ガイドラインから読み解く、「次世代データレジリエンス」の在り方 -
製品資料
[ネットアップ合同会社] 製造DXでデータ活用ニーズが拡大 分散データ活用とAI活用をどう実践する? -
製品レビュー
[ネットアップ合同会社] AIで使いたいデータが内外に点在、研究におけるAI活用を阻む“真の課題”とは -
製品資料
[株式会社kickflow] 稟議・承認作業の「脱オンプレ・脱Excel・ペーパーレス化」を一気に進める方法 -
製品レビュー
[株式会社kickflow] ワークフローシステムのクラウド化 “みんなが不幸になる”事態を避けるには?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
2
「エージェントを作るな、スキルを作れ?」 Anthropicが提唱するAI運用の勘所
-
3
障害対応に「余裕なし」が9割超 運用担当316人調査で見えた「運用赤字」
-
4
シャトレーゼを悩ませる偽メール 混乱なしでBIMI導入とDMARC強化を実現した方法
-
5
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
6
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
-
7
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
8
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
9
「年1回の外部診断」が限界に 大手小売が脆弱性管理を内製化・一元化した方法
-
10
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー