おうち時間ブームだけではない 「ブロードバンド」の成長が続く“当然の理由”「インターネットが重い」を解決する切り札

自宅で仕事をしたり、インターネットサービスを楽しんだりする“新常態”が、ブロードバンドの需要を押し上げている。専門家は、この成長は一時的なものではないと主張する。それはなぜなのか。

2021年09月16日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で始まった家庭用ブロードバンド(高速インターネット回線)の需要増加は、今後も続きそうだ。調査会社ABI Researchによると、特に「5G」(第5世代移動通信システム)を使い、通信事業者の中継網とエンドユーザー宅を無線で接続する「固定無線アクセス」(FWA:Fixed Wireless Access)の需要が急増。5GのFWAについては2021年から2026年までの年平均成長率(CAGR)は71%に達し、2026年の加入者数は5800万人以上になる見込みだ。

在宅勤務の定着だけじゃない、ブロードバンド需要拡大を促すトレンドは?

 ABI Researchはこのほど、「有料テレビと家庭用ブロードバンドの加入者数」と題したレポートを発行した。それによると、2020年の世界の家庭用ブロードバンド市場の加入者数は前年比4%増の約11億人だった。パンデミックを背景に、在宅勤務などのテレワークやオンライン教育、Eコマース、インターネットを介した医療サービスの利用が増えたことが、ブロードバンドの需要を押し上げたとみる。

 外出制限の中、動画のストリーミング(インターネット配信)やオンラインゲームといった家庭用エンターテインメントの利用拡大もブロードバンド需要の追い風になった。ユーザーはブロードバンドに新規加入したり、従来使っていたブロードバンドをアップグレードしたりして、快適にインターネットを利用できる環境を整えている。

 スマートテレビをはじめ、家庭でインターネットに接続するデバイスが充実し、インターネットの消費者向けサービスの利用も広がっている。在宅勤務が定着し、パンデミックが収束した後も消えることはないだろう。ABI Researchの業界アナリスト、キン・サンディ・リン氏は「ブロードバンドの需要は今後数年、増加し続ける」と言う。

 ブロードバンド事業者は需要増加を受け、ブロードバンドインフラの増強への投資に注力している。ケーブルテレビ(CATV)事業者も動き出し、高速データ通信ができる次世代ケーブルテレビ規格「DOCSIS 3.1」準拠のインフラ構築に取り組んでいる。米国のケーブルテレビ標準化団体Cable Television Laboratories(CableLabs)は、DOCSIS 3.1をさらに進化させた「DOCSIS 4.0」関連の試験を開始したところだ。

 「ケーブルテレビ事業者は当面の間、DOCSIS 3.1に力を入れ、DOCSIS 4.0の実用はまだ先になる」というのがリン氏の見方だ。DOCSIS 4.0は大容量データの超高速通信を可能にするため、「将来、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)サービスを支える技術として注目を集めるのは間違いない」と同氏はみる。

 通信事業者は、アナログの電話回線を使って高速なデータ通信を可能にするデジタル加入者線(DSL:Digital Subscriber Line)から、家庭向け光ファイバー通信回線(FTTH:Fiber To The Home)へのアップグレードを進めている。それに並行して、FTTHより利用料金を抑えられるFWAサービスを訴求し、コストに敏感なユーザーの獲得を狙う。

 ABI Researchによると、5Gを使ったFWAサービスの加入者数は2020年、家庭用ブロードバンドの総加入者数のうち1%未満にとどまっていた。2026年には約4%になる見込みだ。ブロードバンド事業者は競争の激化に備え、ネットワーク以外にも家庭用の通信機器やセキュリティサービスを投入し、ユーザー体験を向上させる“総合力”を武器に差異化を図るとリン氏はみている。

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