ローカル5GにFWA――「5G」の企業向け4大用途とは?企業こそ注目すべき「5G」【後編】

企業が「5G」に注目すべき背景には、5Gが実現するさまざまな用途がある。主要な4つの用途を説明する。

2020年09月10日 05時00分 公開
[Michaela GossTechTarget]

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 「5G」(第5世代移動通信システム)のサービスを提供する通信事業者は、頭打ちになる個人向け市場以上に、企業向け市場に目を向ける可能性がある。5G市場が早期に低迷してしまうことを防ぎ、5Gの需要を喚起するには、「4G」(第4世代移動通信システム)までにはなかった新しい用途の開拓とビジネスモデルの構築が必要だからだ。

 市場調査会社Allied Business Intelligence(「ABI Research」の名称で事業展開)によると、企業向け市場における5Gの重要な用途には、次の4つがある。

用途1.固定無線アクセス(FWA)

 通信事業者の中継網とエンドユーザー宅を無線で接続する「固定無線アクセス」(FWA:Fixed Wireless Access)の手段として、5Gを利用することが可能だ。ABI Researchのリャンジェ・スー氏によると、FWAは山間部や農村地帯にも通信範囲を拡大するのに役立つ。通信環境の良くなかった地域や、地方にある企業の営業所、へき地に居住する在宅勤務者も、5Gによる高速通信を利用できるようになる。

用途2.ローカル5G

 スー氏によると、5Gのプライベートネットワーク、いわゆる「ローカル5G」は、ローカライズされた自己完結型のネットワーク環境を実現する。例えば鉱業や医療の分野では、分離したエリアで安全な高信頼のデータ伝送が可能になる。特に医療分野の場合、ローカル5Gが「命を救うことにつながる」と、ABI Researchのリサーチディレクター、ディミトリス・マブラキス氏は語る。

用途3.Open RAN

 「Open RAN」(Open Radio Access Network)は、汎用(はんよう)的なハードウェアと、オープンなインタフェースやソフトウェアを使用して、特定のベンダーに依存しないオープンな無線ネットワークを構築するための仕組みだ。マブラキス氏は「通信事業者は自社の5GサービスにOpen RANを組み込むことを検討すべきだ」と述べる。

用途4.周波数帯共有

 これまでの移動通信システムの大半は、免許を必要とする周波数帯を使用する。通信事業者の5Gサービスも、免許が必要な周波数帯で運用されることになる。これに対して共用の周波数帯を利用する米国の「市民ブロードバンド無線サービス」(CBRS:Citizens Broadband Radio Service)がある。CBRSによる周波数帯共有によって、干渉を回避しながら、より多くの個人や企業が5Gを利用するための方法を提供する。


 5Gで期待されるこうした用途は、主に企業向け市場で効果を発揮する。そのため「通信事業者は企業向け市場により注力するようになるだろう」とABI Researchはみる。企業向け市場がなければ、5Gの経済的可能性は最大限に実現しない。

 2036年までには、企業のモバイル通信支出が個人の支出を上回るとABI Researchは予想する。「企業向け用途は、個人向け用途より重要になるだろう」とマブラキス氏は語る。

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