コンピューティングの“黒子”として欠かせないのが「メインメモリ」と「キャッシュメモリ」だ。この2つは何がどう違うのか。
前編「いまさら聞けない『メインメモリ』の基礎 どのような仕組みか? 何に役立つ?」と中編「いまさら聞けない『キャッシュメモリ』の基礎知識 “脇役”でも重要な役割とは」は、コンピューティングを支える「メインメモリ」と「キャッシュメモリ」の基本的な事項を解説した。メインメモリとキャッシュメモリには幾つかの相違点がある。主要ポイント6点を整理しておこう。
メインメモリは、アプリケーションからデータへの高速アクセスを実現する。メインメモリの容量が不十分だと、データ処理がしにくくなる。メインメモリに使われる「RAM」(ランダムアクセスメモリ)として一般的な「DRAM」(ダイナミックRAM)は比較的高価なため、容量を追加する場合は費用対効果を十分に考える必要がある。
キャッシュメモリはCPU(中央処理装置)の要求に応じて、さまざまなデータを提供する。こうしたデータには、共通のアクセスパターンを持つデータや、繰り返し出力すると計算に時間がかかるデータが含まれる。
最近のPCの大半は、64bitのCPUと32GB程度のメインメモリで構築される。メインメモリはマザーボード(PCの主要部品を搭載したプリント基板)のメモリスロットによって増設できる。キャッシュメモリは512KB程度までは容量を確保できるものの、メインメモリほどの大容量は確保できない。
メインメモリとキャッシュメモリは、どちらもCPUの近くに配置され、高速なデータアクセスを実現する。キャッシュメモリの方がCPUにより近いため、メインメモリよりも高速化しやすい。
キャッシュメモリは、4〜6個のトランジスタを使って設計される「SRAM」(スタティックRAM)で構成される。RAMの一種であるSRAMは、主にメインメモリとして使われるDRAMと比べてデータアクセスが高速な一方、製造コストが高い。
メインメモリやキャッシュメモリの構成要素であるRAMは、どのような順番でもメモリセル(データを読み書きする最小単位)に直接アクセスできる「ランダムアクセス」を実現する。CPUと直接アクセスするためのメモリインタフェースを備えるのがキャッシュメモリの利点だ。
キャッシュメモリはCPUまたは隣接チップに組み込まれるため、アクセス時間はメインメモリよりも速く、CPU要求への応答には数ナノ秒しかかからないといわれている。メインメモリのデータアクセスは、HDDやテープといった機械式ストレージだけでなく、SSDなどの一般的なフラッシュストレージよりも高速だ。磁気メディアのデータ読み書き速度はミリ秒単位になる。
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