AWSが用意する機能やオプションなどをうまく使えば、「Amazon S3」の利用料金を抑制できる可能性がある。主な手段を3つ説明する。
前編「Amazon S3を安く使う『ストレージクラス』の賢い使い分け方」は、Amazon Web Services(AWS)のクラウドストレージ「Amazon S3」の利用料金を適切に抑制する上で重要な、Amazon S3のストレージクラス(メニュー)の選び方を説明した。さらにAmazon S3の利用料金を抑えるにはどうすればよいのか。
手始めにAWSのリージョン(地域データセンター群)を検討するとよい。リージョンによってAWSサービスの利用料金は異なる。使い方によっては、どのリージョンを選ぶかによって利用料金に大きな違いが生まれる場合がある。
ストレージで保管するデータ量が増えれば利用料金も増す。次の3つのベストプラクティスは、Amazon S3の利用料金抑制に役立つ。
AWSはAmazon S3に、データの階層化(ティアリング)を自動で管理する「S3 Intelligent-Tiering」という機能を用意している。この機能はアクセス頻度が高いデータ向けのストレージ階層と、アクセス頻度が低いデータ向けのストレージ階層間のデータ移動を自動化する。この機能を利用するには、管理者がストレージの作成時に設定する必要がある。
S3 Intelligent-Tieringは、128KB以上のオブジェクト(Amazon S3で扱うデータ)でのみ機能する。アーカイブ向けストレージクラス「Amazon S3 Glacier」の一部ストレージはS3 Intelligent-Tieringの適用対象に含まれない。
利用料金の抑制効果をS3 Intelligent-Tieringの利用例で試算する。以下の計算は、ストレージの利用料金のみ含めるものとし、データの入出力やAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)リクエストなどの追加コストは計算に入れない。
標準的なストレージクラス「S3 Standard」(S3標準)20TB(20,480GB)分を米国東部(バージニア北部)リージョンで利用する場合、1カ月の利用料金は以下の通りだ。
この20TBのうち、1カ月当たり5TB(5,120GB)がアクティブデータで、15TBが使っていない古いデータだとする。後者の15TB(15,360GB)分にS3 Intelligent-Tieringを使い、アーカイブ向けのストレージクラス「S3 One Zone-Infrequent Access」(S3 1 ゾーン - 低頻度アクセス)に自動転送するように構成すると、利用料金は次のように下がる。
ストレージを上記のように階層化すると、Amazon S3の利用料金は1カ月当たり271.36ドルとなる。20TBを全てS3 Standardに格納する場合と比べて、毎月199.68ドル、年間約2400ドルを抑制できる。
S3 Intelligent-Tieringを使用しないとしても、不要なデータをAmazon S3のストレージから削除する適切なプロセスを導入することは重要だ。例えば法的保持期間満了後に不要になったドキュメントや画像を消去すると、利用料金を抑制できる。
同じリージョン内のデータ転送時には転送コストが発生しない。データが保存されているリージョン外にデータを転送すると、転送コストが発生する。何のデータがどのような理由でリージョンを出入りしているかを必ず追跡する。
ユーザー自身がAmazon S3の使用状況を把握できるようにするために、AWSは各種機能を提供している。Amazon S3の機能「Amazon S3 Storage Lens」を利用すると、保存するデータ量やデータの転送量などの複数の指標から、そのアカウントのAmazon S3の利用状況を評価できる。
Amazon S3のストレージの種類やオプション機能をしっかりと理解すれば、Amazon S3の利用料金の抑制にかかる管理者の負担は少なくなる。
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