金融機関のクラウドサービス移行が労力を要するのはなぜか。「Google Cloud Platform」の責任者の話を基に、金融機関のクラウドサービス移行が抱える課題を探る。
金融機関は業務の効率を向上させ、AI(人工知能)技術といった技術やデータを活用するために、レガシーシステムのクラウドサービス移行を進めている。ただしM&A(合併買収)によって複数のレガシーシステムを抱える企業は、クラウドサービス移行が難しくなる。前編「『合併を繰り返した銀行』がクラウドを避けたがる本当の理由」に続き、金融機関のクラウドサービス移行が抱える課題を説明する。
レガシーシステムはクラウドサービス導入の障壁の一つだが、金融機関が最初からこの課題を解決する目的でクラウドベンダーに相談するとは限らない。「最新アプリケーションを導入するためにクラウドベンダーに相談した結果、新たに金融機関が対処しなければならないシステム関連の作業が判明することがある」と、Googleでクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)のアジア太平洋地域担当バイスプレジデントを務めるカラン・バジュワ氏は話す。
GoogleでGCPのアジア太平洋地域における政府業務とパブリックポリシーの責任者を務めるチェスター・チュア氏は、金融機関が直面しているもう一つの課題として、クラウドサービスへ移行のコストに対する懸念を挙げる。「レガシーシステムへの依存度が高いほど、クラウドサービスへの移行コストも高くなる。そのためレガシーシステムへの依存度が高い市場とコストを重視する市場は、ある程度一致している」(チュア氏)
チュア氏によると、複数ベンダーのクラウドサービスを組み合わせて最適なインフラを実現するマルチクラウド戦略を確立させていない金融機関ほど、単一のクラウドベンダーに縛られることを懸念している。
金融機関はゆっくり、かつ確実にクラウドサービス移行に取り組んでいる。チュア氏は「恐らく私が見てきた中で、最もクラウド戦略が進んでいる銀行」でも、クラウドサービスにあるデータ量はその銀行の10〜15%にすぎないと説明。「すべき作業は、まだたくさんある」と強調する。
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