口座開設や接客を自動化
「RPA」を業務自動化に生かす大手銀行、導入が進まない地方銀行
銀行業界は、セキュリティ対策や顧客の口座開設プロセスの効率化にRPAツールを使い始めている。大手銀行とFinTech企業を中心にRPAツールの導入が進みつつあるが、地方銀行にとっては依然として障壁がある。
人工知能(AI)技術の導入が、大手企業で始まっている。金融業界でも、一部の大手銀行がチャットbotを社内用と顧客用に導入して成果を得たり、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)技術を導入してコストを削減したりしている。
大手銀行以外の金融企業では、AI技術やRPAツールの採用はどのような状況にあるのか。どう活用すれば、最大限の利益を引き出すことができるのか。コンサルティング企業Kaufman Rossinのリスクアドバイザリーサービス部門マネジャー、ロベルト・バルデス氏によると、銀行業務におけるRPAツールのメリットには、効率性向上、有効性確保、コンプライアンス(法令順守)の3つがある。
効率性向上は一般的に、プロセス自動化によるコスト削減を意味する。有効性確保は一貫性と標準化を指す。コンプライアンスの観点では、国や州の定めるプライバシーやセキュリティ強化の規制順守の徹底を図る。
口座開設プロセスにRPAを活用する大手銀行
銀行業界におけるRPAツールの用途の一つは、セキュリティプロセスへの導入だ。個人情報を扱う企業に義務付けられたデータセキュリティ条件がますます厳格化する中で、金融機関ではセキュリティの向上に向けた取り組みが必須になっている。企業はRPAツールを導入する前に、セキュリティインフラの整備を進める必要があるとバルデス氏は強調する。「既に優れたガバナンスを実現している場合、RPAはセキュリティを増強する」(バルデス氏)
セキュリティを確保するためのプロセスが機能していれば、RPAはそれを増幅させ、自動化し、加速させる。もしもそのプロセスに不備があれば、RPAツールにも不備が起こる。
ほとんどの銀行は、新規の顧客にサービスを求められた場合、手作業で適正評価審査をする。従業員がその潜在顧客の情報をデータベースに入力してリスクを算定し、利率などのサービス内容を決定する。銀行業務にRPAツールのソフトウェアロボットを利用すれば、そうした現場でさらに迅速かつ掘り下げた分析が可能になる。
「現時点では、口座開設プロセスでRPA技術が活用されている」。Kaufman Rossinのリスクアドバイザリーサービス部門主席、ジェイソン・コーリンズ氏はそう話す。コーリンズ氏によると、例えば米財務省外国資産管理局の制裁対象者リストや重要な公的地位を有する人物リストなど、銀行が顧客の口座を開設するかどうかの判断材料になる複数のリストの参照に、RPAツールが活用されている。
FinTech企業では顧客サービスを自動化
RPAツールはオンラインバンキングやITを活用した銀行業務など、FinTech(金融とITの融合)分野でも人気のツールになった。消費者の間でオンラインバンキングの人気が高まる中、FinTech企業はRPAツールに注目している。「RPAツールはプロセスの合理化や、顧客および取引に関わる人員を減らす目的で活用されている」とバルデス氏は言う。
従来の銀行では、RPAプロジェクトの重点は主に一般的な銀行顧客への応対や、プロセスおよび顧客サービスの自動化にあった。これに対してFinTech企業はRPAツールを使って銀行口座を持たない層に狙いを定めている。
銀行口座を持たない層は、信用スコアの低さ、月間口座残高の低さ、頻繁な出金超過、ATM(現金自動預け払い機)の利用頻度の低さなどを理由に、金融投資には危険があると見なされ、大手銀行に避けられることもある。FinTechはこうした層に適している。オンライン銀行の中には、手数料を課したり月額利用料金を徴収したりしないものがある。
RPAツールは顧客サービスのプロセスを自動化し、顧客に銀行サービスの選択肢を紹介することによって、インターネットオンリーの銀行業務展開を可能にする。チャットbotやRPAツールによるソフトウェアロボットが会社とともに成長すれば、これらの技術の有効性は増す。FinTechの米新興企業ViVi Holdingsのカスタマーサービスチャットbot「ViVian」もそうだった。
もしViVianに知らないことがあると、その際は人間がフォローする必要がある。「ViVianはその会話を聞き、その相手に与えられた解決策を教訓として、次回は適切な答えを出す」と、ViVi Holdingsの最高マーケティング責任者(CMO)、スティーブン・ハーキー氏は説明する。
RPAの導入が進まない地方銀行
コーリンズ氏もバルデス氏も、地方銀行でのRPAツールの利用には潜在的可能性があると指摘する。しかしコストや複数の問題が妨げとなって、地方銀行ではRPAツールの活用が進んでいない。
地方銀行でセキュリティ対策を少しばかり強化する必要があったとする。もしそのアプローチで自動化されたプロセスの設計に着手すれば「恐らくネットワークに対するリスクが増大し、さらに悪いことに、新しいリスクを呼び込むかもしれない」とバルデス氏は指摘する。
コーリンズ氏は、RPAツール導入のために必要とされる追加的な投資と、規制やコンプライアンス問題に追い付かなければならない現状の間に緊張状態があると指摘する。しかしそのいずれも、地方銀行がRPAツールの利用を通じて改善を見込める分野でもある。
「チームに追加の人員を配置する代わりに、RPAツールのソフトウェアロボットで補充することも可能だ。従業員は手間のかかる作業ではなく、自分の仕事に集中して時間を割くことができる」とコーリンズ氏は話す。
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